祭り
二人揃ってインスタントカメラのCMに出ることになった岩城と香藤。 今回のCM撮影のセットのテーマは「夏祭り」。お寺の境内にやぐらが組まれ、いくつもちょうちんが下がり、境内へ向かう石畳には、金魚すくい、綿菓子、ヨーヨーといった屋台が並ぶ。境内の奥にはお神輿も据えられていた。 お面の屋台から、岩城が懐かしげに狐の面を手にとる。 「CMってたった15秒間なのにさ、本格的だよね、岩城さん」 「俺たちの衣装もかなり本格的らしいぞ、さっきスタイリストさんがうれしそうに大島紬、広げてたからな。あれはかなりの品物みたいだぞ」 「えっ、本格的!? このちょうちんの下で!? 俺、イヤな予感がする…」 イヤな予感は的中した。 監督の説明では、CMイメージは夏祭りを楽しむ二人。夏祭りの夜でも自然な写真が撮れる新フィルムのアピールが、CMのコンセプトだったのだが…。 香藤の問題は岩城の衣装だった。準備された本格的な夏物の和装が、岩城の美しさを際だたせてしまうのではと、いつものごとくハラハラしていた。 「岩城さん、その色、どうかな〜? ちょっと濃すぎるんじゃないかな? 似合わないんじゃなくて、合わせの胸元の肌の白さが目立ちすぎるっていうか。こっちもね、この紬の白が鮮烈過ぎるよね〜。あ、岩城さん、着物の裾、あんまり乱れないようにしないとだめだよ。岩城さんのきれいなふくらはぎ、あんまり人に見せたくないんだ。過激すぎるんだよね〜」 ブツブツと衣装に口を出し続ける香藤に、とうとうげんこつが落ちる。 「香藤! お前は俺のスタイリストか!? もういい加減にしろ! お前も衣装の準備があるんだから、早く行け!」 「痛いよ〜、岩城さん」 顔を赤らめた岩城と、涙目の香藤。二人の会話に耳を澄ませていたスタッフが、笑いをこらえようと身をよじった。 「岩城さん、香藤さん、お願いします!」 萌葱色の紬に紺の帯を締めた岩城の登場に、スタッフからため息がもれた。ため息は、すぐにオオッというどよめきに変わった。 岩城が振り返ると、水色のはっぴ姿に、日本手ぬぐいをキリリとハチマキにした香藤が、白フンドシに白足袋姿で立っていた。腰の帯には「祭」のウチワ。 あんぐり口を開けた岩城に香藤が声をかける。 「岩城さん、やっぱりその色にしたんだね。確かによく似合うんだけど、俺から見ると、ちょっと色気がにじみすぎだよね〜。あれ、どうしたの? あ、どう? 似合うでしょ〜♪」 半ケツ香藤が一回転して見せる。岩城の視線が香藤の下半身をさまよう。むき出しの太もも、フンドシからプリリンとはみ出た筋肉質の臀部。 岩城は右手で顔を押さえた。 「……お前は俺のことを気にし過ぎで、自分のことを気にしなさ過ぎだ……」 わっしょいわっしょい、わっしょいわっしょい。 はっぴ姿の男たちが神輿をかつぐ。神輿の上で仁王立ちになった香藤の姿が勇ましい。撮影とは信じられないほど盛り上がっているのは、神輿に合わせる香藤のかけ声や動きに、男たちが煽られているからだ。 「岩城君、この立ち位置で神輿の上の香藤君を見つめて。そうそう。今のまぶしげな表情いいね〜。自然だね〜」 香藤をまぶしく思う自分の気持ちが、顔に丸出しだったのではないかと、岩城はギクリとした。 撮影帰りの車の中。 「香藤、お前が俺のフェロモンを気にする気持ちがよくわかったよ。撮影になかなか集中できなくて困った」 「俺のフェロモンにやられちゃったってこと〜」 にやつく香藤。 「…やられちゃったっていうよりも、お前を見るスタッフやエキストラの視線が気になって…」 香藤がさらににんまりする。 「俺の半ケツ姿を他の奴に見せたくなかったってことだよね〜、ムフフフ…。岩城さんが俺の気持ちをわかってくれたことより、ジェラシーを感じてくれたことのほうがうれしいな〜。俺の半ケツ気に入ってくれたなんて、以心伝心だよ、俺たち。だってさ〜、俺、もらってきたんだもん、フンドシ! スタイリストさんにさ〜、“もしかして岩城さんに締めてもらうんですか〜?”な〜んて聞かれちゃって……痛っ!」 「お前は〜! 俺たちのプライベートを想像させるようなことをするなと、いつも言ってるだろう?」 また殴られちゃった、俺が締めてあげるんだよ〜なんてのろけたこと、口走らなくてよかったよ〜などと思いつつ、岩城をちらりと盗み見る香藤。 と、ほんのり岩城の頬が赤い。どうみてもドギマギしている表情にしか見えない。もしかして、俺の白フン姿を思い出してんのかな〜、早く帰って岩城さんを抱きしめたいよ〜と、香藤はアクセルを踏み込んでスピードを上げた。 2005.8.18 ゆみ |
お題は「祭り」
半ケツの香藤くん・・・私も見たいんですが(おい)v
そりゃもう目が釘付けでしょう!(鼻息)
ハラハラする香藤くんの気持ちが分かったような岩城さんがいいですよねv
ゆみさん、素敵な作品をありがとうございます