***A DROWNING CHILD***




「・・・今夜は・・・俺が抱きたい・・・いいか?香藤?」


6月9日バースディオフのグアム。
果てしなく広がる快晴の青い空、青い青い大海原。
岩城さんに後ろ抱っこされのパラセーリング。
低くて甘い、そりゃあもぉ、男も女も構わず、片っ端から殺しちゃうだろう、お色気たっぷりな男っ前な声で、大胆不敵な岩城さんが、 俺を抱き締めながら、そっと・・・囁いた。

「・・・う・・・うん・・・」

・・・て、答えて、ホテルに戻ったものの・・・。
元々、シングルで取ってた部屋だから、岩城さんともう一泊するなら、もう少し広い部屋に移ろうって部屋替えて貰って。
大した荷物じゃないけど、いそいそわたわた替わった部屋に運び込み、只今、岩城さんはお風呂中。

ばくばくばく・・・。

俺は移る前の部屋でシャワー浴びてきたから、手持ち無沙汰を感じつつ、ベッドにちょこんと座って、岩城さん待ち・・・。

どきどきどき・・・。

「・・・んと・・・。えと・・・。夕飯、何がいいかな?岩城さん、何食べたいのかな〜?」

なんて、独り言呟きつつ、部屋の中、キョロキョロと見回したりして。

「・・・・・・・っ!」

・・・あーもー、なんか調子狂う!心臓に悪ーい!
予告なんかされてなきゃ、勢いついてる最中だったら、こんなにドキドキしなくてすんだのに〜〜〜!!!
何か思う所でもあったんだろうか?
俺の誕生日に、よもやまさか、俺に嘘までついて、岩城さんが仕事場のグアムまで飛んできてくれたのだって、びっくりだった。
こういうのって、絶対苦手で不器用なはずの、あのテレ屋な岩城さんが・・・っ。
ああ、俺って、愛されてるーーって、感じさせてくれるのに、充分なサプライズだったのに。
その上俺のこと、抱きたいって、わざわざ宣言までしてくれちゃう・・・。

どきどきどき・・・。

うー!ダメ、なんか、緊張してくるよー!心臓ばくばくするよーー!
そりゃ、ね。もちろん、俺、岩城さんに抱いて貰うの、すんごい嬉しいんだよ?
初めてってわけじゃあるまいし、何度となく抱いて貰ってるんだけど。
でも、絶対的回数の違いってやっぱりあるじゃん!?俺が岩城さんを・・・のが、断然多いんだからさ!!!
それが日常っていうか・・・スタンダードなスタイルポジションてゆーか。
俺が岩城さんを抱くのが当然とか、自然とかって意味じゃないよ?
どっちかってーと、俺の暴走を毎度岩城さんが受け止めてくれてるコトがナチュラルになりつつあるってだけで。
偶に・・・、ホント偶に、こう岩城さんのボルテージがバーンて上がった時とか、何か特別な時とか・・・ってくらいだから、さ。

そりゃ、もう、その気になってくれたのはスゴイ嬉しい。
岩城さんが俺を・・・って、俺への愛情表現の最たるもんだもん。
・・・だけど。
だけど、でもでも、恥ずかしいんだよ〜〜〜!!!
うーもーどーしよーってくらい、恥ずかしいんだってば!!
そん時の岩城さんて、俺の体、それこそ、微に入り細に入り念入りに気遣ってくれちゃうから・・・。
そんなにしてくれなくていいのに、もうもう、恥ずかしいから、どんどんバンバンがしーーって、やっちゃってくれていいのに!
傷つけないように、壊さないように、怯えさせないように・・・って、丁寧に丁寧に時間かけて、優しくて・・・。

あうあうあう〜〜;;
俺、頭抱えて、ベッドに突っ伏す。

うー、解ってるんだって!
俺だって、いつだって、岩城さん抱く時は、うーんとうーんと優しくしようって思って抱いてるよ!?
可愛くて可愛くて可愛くて、どーしょーもない、俺の何より大事な人なんだから!
・・・だけど、だけど・・・始まるとどーしても、岩城さんが色っぽいもんだから、ついつい夢中になっちゃって、俺、岩城さんにがんがんがーん、って・・・うう・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・反省。

ハア・・・・。どーしよー・・・。

「・・・は!?」

どーしよーじゃないっつーの。
別に嫌な訳じゃなくて、むしろ幸せ過ぎて怖い位なんだ、考えることないだろーって。
そして、徐に起き上がり、ベッドに正座。

そーだよ、そうそう!幸せだよね、俺!?
大事にして貰って、愛して貰って、言うことないよ!
岩城さんになら、ホントはナニされたって構いやしないんだ、俺。
いつでも、どこでも、どっからでも、おいでーー岩城さんvv・・・って感じ!?

って、切り替え切り替えて。
と、それなら一応、何か用意しといた方がいいのかと。
俺、やっぱりあんまり抱かれんの慣れてないから、どーせまた緊張して強張って、岩城さん煩わせちゃうに決まってる。
面倒掛けないように、オイルでもジェルでもローションでも・・・って、あーうー!
最悪ーーー!なんなんだよー、俺っっっ。
自分で自分の為に、

『これ使ってね?』
『優しくしてね?』

って言わんばかりに、ベッドサイドに、こんなもん用意して、ずらっと並べて待ってんのって、どーよ!?
しかも、背中丸めて、正にいらっしゃいませ〜、て感じでベッドの端に正座して!?
何恥らってんだよーー!?バッカじゃねーーーー俺っっっ!?
・・・これじゃ羞恥プレイじゃんーーー、うぎゃーーーっ。
前のめりに倒れて、またベッドに突っ伏す。
うーうーうー!

・・・って、ん?ん?・・・ちょっと待てよ。

わざわざ予告するくらいだから、岩城さん、何か考えちゃってんだよね?
衝動的なもんじゃないってことは、ナニ!?
俺、なんかスペシャルなコトして貰っちゃうの!?
す、す、スペシャルなコトって、ナニよ!?

上げた顔から、なんとなく血が引く感覚。

岩城さん、なんだかんだって言っても、大概俺に大甘だから、よもやまさか過激なプレイはないと思うけど。
縛ったり、は、ある・・・かもしれないけど、叩いたり・・・・はないよね?ね?ね?
岩城さん、緊縛の帝王だった人だし、俺が力技でも使わない限り、その辺の手際は敵わないしな〜。
宣言するってことは、俺にもしかして無抵抗でいろってコト!?
大人しく、マグロでいろとでも!?
た、誕生日のプレゼントの延長なんだから、も、も、もしかして、岩城さん、すんごいすんごいセクシーなカッコして、俺の女王様でもしてくれるっての?

また縛られたりして、乗り上げられちゃったりなんかして、指先差し出されて・・・、

『・・・・・・・・・舐めろ、香藤・・・?』

なんて・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいかもvv・・・って、ナニ考えてんだよ、俺ーー!?

「・・・・・・ぁ・・・・・」

・・・・・・・・・・いや、指じゃなくて、足だったり・・・して?
岩城さんがして欲しいなら・・・、それも別にイヤってわけじゃ・・・vv

って、また俺は〜〜〜!!!!あうあうあう・・・っ!!!

「・・・は!!?」

そういえば、・・・今回岩城さんのバック、いつもより妙に嵩張ってたような・・・気がする。
なんかなんか、そ、そゆ…もの・・・、持参してたり、する?
いや・・・、あはは、まさかまさか。税関で留められちゃうって。
でも、岩城さん、俺を本気でΜっ気ありって思ってるみたいだから、本領発揮で可愛がってやろうとか、俺が悦ぶなら昔取った杵柄ってヤツで、任せろ!なんて、思われてたりして?
うー!違う違うーっ!俺、全然、全然、ちーーーっともΜじゃないよーっっ!?
そんなプレゼント、いらなーーいっ、いらなーーーいっ!!
椅子に縛られた時は、岩城さんがあんまり色っぽくて、積極的で、攻撃的で、キョーレツ愛撫激しかったから、焦らされて焦らされて、感じちゃっただけで〜!

「・・・・・・・うぐ・・・」

・・・・・・・・・・すんごく、・・・よかったけど・・・。

って、また、俺って奴は〜〜〜!

「・・・・・・・・・さっきから、ナニやってんだ?お前・・・」

1人妄想脅威に期待、怯えつつ、ベッドの上に、座ったり、立ったり、しゃがんだり、突っ伏したり、転がったりと、忙しくドタンバタンや っていると、いつの間に出てきたんだろう、風呂上りの岩城さんが、呆然きょとんと俺を見ていた。

「い、岩城さんっっっ、う、なんでもないよ!なんでもなーーい!」

うわわわわぁぁ、どっから見られてたんだろう、俺、カッコ悪過ぎ〜〜〜!

「・・・・なんでお前こんなもん並べ・・・て・・・」
「わーぎゃーー!いいんだよ、こんなのはーー!!」

いくら鈍い岩城さんにだって、さすがに解っちゃうよーぎゃー、ヤバイって!
ベッドサイドのローションに手を伸ばそうとする岩城さんから、隠して隠して〜って、もう見つかっちゃってるけど、悪足掻きする俺、情けなっ。
並べた潤滑油の類を後ろ手に隠して、無理やり作り笑い。

「・・・・・・エヘッ・・・」
「ぷっ・・・」

そしたら、また岩城さん、ぷぷって噴き出し笑って、

「・・・そんなに期待させたか?…ホントに可愛いな、お前は・・・」

って、暴れる俺の胸を岩城さんの利き手がとん・・・と、ベッドに突き倒した。

「・・・岩・・・」

ベッドに大の字で倒れて、見上げた岩城さんの視線に威竦められる。
俺の肩の両サイドに手をついて、俺を見下ろす・・・岩城さん。

「・・・そんな可愛いことして・・・誘うなって。あんまり煽ると俺も暴走するぞ・・・?香藤?」

いつもいつも可愛くて堪んないそれなのに、こゆ時だけ超カッコイイ旦那さんの顔すんだから・・・狡い。
そんなんされたら、俺・・・、もう・・・。

「・・・うん・・・して・・・いい、よ?・・・・・暴走・・・」

岩城さんの、その表情が、俺はどこまでも自惚れていいんだと、教えてくれる。
岩城さんの瞳の中に、・・・俺だけが映ってるのが嬉しい・・・。

「・・・香藤・・・」

・・・カッコイイ・・・。
ああ、ホント、カッコイイんだよ、俺の岩城さんてばvv

今でもドキドキは止まんないんだけど、・・・もう、どうなってもいいや、って思う。
この人に・・・めちゃくちゃに愛されたい。
俺の体全部で、この愛に応えたい・・・って、体が段々熱くなって、覚悟が決まった。
決まったんだけど・・・。

「・・・ねエ・・・岩城さん?」
「ん・・・?」

潮の匂いが洗い流された岩城さんから、ボディソープといつもの岩城さんの香りがする。
その大好きな匂いがゆっくり近付き落ちてきて、俺の耳元から首筋に唇が触れる。
そのアロマ付きの幸せを感じつつ、

「ナニしてもいいけど・・・、あんまり痛くしないでね?」

リゾート仕様で、アロハに短パンの俺の足を撫で、その裾から、俺のに触れてくれようとしてた岩城さんの手が止まる。

「・・・は!?」

あ、そこでやめないでよ〜と思いつつ、

「岩城さん、それこそプロだから、そんな心配してないけど、ほら、一応俺の体も商売道具だから、痕残ると困るし・・・」
「・・・え?」

一応、お伺いとゆーか、お願いはしておこうかと、

「俺、岩城さんにならナニされたっていいんだけど、やっぱり、じっくり愛されてるーーって感じるエッチのが嬉しいし・・・」
「・・・・ぁあ・・!?」

思わずうきうき催促がてら、岩城さんの首に腕絡めながら、

「本気の岩城さんに調教されちゃったら、俺もちょっとノーマルでいられる自信ない・・・もん」

本音がポロり。

「・・・・か、香藤・・・???」

やっぱり、嘘はダメ!嘘はヤダ!
岩城さんとは、いつだって本音でいかなくっちゃね、と、

「だって、俺、Mじゃないし・・・」
「・・・・・・・・お・・・おい?」
「・・・そりゃ、どーーーしても岩城さんがしたいんなら、た・・・偶に・・・なら、付き合っても・・・いいけど・・・?」
「〜〜〜〜〜〜!!!?」

って、・・・・・・・・・あれれ?なんかぷるぷるしてる?岩城さん?

「・・・岩城さん?」
「・・・・・・・・・・お前は、いったい、何の話をしている〜〜〜!!!?」

なんで、そんな変な顔してるの?眉間に思い切り、皺寄せて?
首に絡んだ俺の腕を、ぶるっと振り解いて、岩城さんが立ち上がる。あ、あ〜ん。
うっとり夢見心地のシュチが、・・・あれ?なんか、空気変わってない?もしかして?

「え?だって、岩城さん、俺のことMだって誤解してるみたいだから、なんか、そゆことしたくて抱いてくれようとしてんのかと・・・?」

恐る恐る考えてたことを尋ねてみると、あっとゆー間に、岩城さんの眉が・・・ぴくぴく。

「・・・ち、違う・・・の?」
「どっからそんな発想が出てくる!?俺がいつお前抱くのに、プレイ行為要求した!?お前がしたくて訳の解らん妄想してるだけだろうが!!このバカ!!」

思い切り、ムッとされ、雷どっかーん!わわわ。

「え?え?あれ?あれ?そういえば・・・、俺、なんでそう思ったんだろう・・・・???」

記憶を辿ってみると、確かに岩城さんが何か言ったわけじゃない、がーーーん!!!

「自分の欲求、人のせいにすんな!して欲しかったなら、そう言え!バカ!」
「ち、違う、違う、フツーがいい!フツーが〜!フツーに優しくされたいです〜!!」
「知るかっ、バカ!」

* * *

6月9日、ハッピーバースディ トゥ 俺。
それから、こーしてあーしてこんな風に・・・と、岩城さんをどう宥めて攻略して、イチャコララブラブまで辿り着いたのかは、・・・ナイショv

しっかし、やっぱり俺って、成長してしねぇ・・・トホホ。
でも、さ、しょうがないと思わない!?
マリンスポーツ、どんなに得意で、南国ビッグウェーブ乗りこなし〜な俺だって、
岩城さん・・・って海の波だけには、いっつもドキドキハラハラの連続。
何年経っても、どっぷりメロメロ、溺れちゃうだもん〜〜v・・・ね?


おわり  
2005/08/09  にゃにゃ


お題は「海」
どんどん妄想が暴走していく香藤くんが可愛いです
岩城さんも同じ気持ちでしょうねv
香藤くん・・・違うって言っているけど岩城さん限定でMかも(笑)

にゃにゃさん、素敵な作品をありがとうございます

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