指 
【香藤くんversion】

柔らかな日差しが降り注ぐ昼下がり・・・。

ソファで本を読んでいる岩城さんの横に座わり、その細い肩にそっと寄りかかり頭を乗せてみる。

そして岩城さんの美しい笑みに促され、俺の指定席となったその膝枕に身を預けた。



「岩城さんの膝枕って気持ちいい〜」

「そうか? あんまり気持ちいいからって熟睡するなよ。うたた寝なんかしたら風邪引くからな」

「うん、わかってる。でもちょっとだけならいいでしょ」

「まったくしょうがないな〜」

岩城さんは読みかけの本に目を通し始めた。俺はその美しさに瞬きするのも忘れ見惚れてしまう。

思わず跪きたくなるような艶やかなその姿・・・。

いつもは余人など寄せ付けないような凛とした雰囲気を纏っているけど、二人っきりの時は柔らかく

優しいオーラに包まれている。

俺だけしか知らない岩城さんがここにいる。そう思っただけで胸が高鳴っていく。

いつになっても俺をドキドキさせるのは岩城さんだけ・・・。

滑らかな白い肌・・・それを彩る紅い唇・・・。その紅さが肌理の細かさをより一層引き立てる。

そして何よりも印象的なのはその瞳だった。切れ長のまなじりに輝く黒い瞳。

深い闇色の瞳に魂ごと吸い込まれてしまいそうで・・・。

それはどこまでも澄み渡り強い輝きを放っている。

その瞳に惑わされ、心奪われる者がいるのは知っていた。

でも岩城さんは誰にも渡さない。この人は俺だけのものだから・・・。





「ん?・・・どうした?」

あまりにも真剣な俺の視線に気付いたのか、ちょっと困ったような顔をしていた。

「あっ、何でもないよ。岩城さんがあんまり綺麗だから見惚れてただけ」

「バカ・・・」

俺のストレートな言葉が恥ずかしかったのか、ほんのり桜色に染まった顔を本で隠してしまう。

「岩城さんて、ほんとに可愛いよね〜。そんな所は年上とは思えない」

(そう・・・岩城さんがこんな表情を見せてくれるのは俺だけなんだ)

そう思えば、嫉妬なんて俺の心に封印してしまえばいい。ちょっと自信ないけど・・・。





俺への返答に困ったのか、岩城さんの指が俺の髪を撫でている。

時よりその指が俺の髪をクルクルと巻き付ける。岩城さんにそうされると安心する。

あんまり気持ち良くて急に睡魔が襲ってきた。

もっと可愛い岩城さんを・・・俺だけの岩城さんを眺めていたいのに・・・。





どのくらい眠っていたのだろう。時間にすればそう長くはないと思う。

目を覚ますと岩城さんの穏やかな寝顔が目に入った。どうやらあのまま眠ってしまったらしい。

癖のない艶やかな黒髪が頬にかかり、思いのほか幼い表情を見せていた。

いつの間にか眠ってしまった岩城さんを起こさぬようそっと身体を離す。

俺はにんまり笑みを浮かべながら、眠っている岩城さんを眺めていた。

(ほんのちょっとだけ・・・)

あんまり気持ち良さそうな岩城さんの寝顔に、ちょっとした悪戯心が芽生えてくる。

岩城さんの薬指に嵌められた結婚指輪に優しく啄ばむようなキスをする。

オフでいる時は必ずその指を美しく彩っている指輪・・・。

もう一度キスすると、ビクッと反応を示す。

眠りが浅かったのだろうか、ゆっくりと瞳が開かれた。





「ん・・・香・・藤・・・」

「岩城さん!」

「んっ・・・んー!?」

濡れた瞳に誘われるまま、俺は岩城さんに口付け気付いた時にはソファへと押し倒していた。

すぐさま舌を割り入れ捉えると、逃れようとしていた岩城さんの手首を掴み押さえつけた。

「ハアハア・・・香藤! いきなり何するんだ」

「ごめん・・・」

口ではそう言いながらも、既に次の行動に移っていた。

「やっぱり欲しいよ! 岩城さん」

「まったくお前は・・・」

突然の事に呆れた岩城さんだったけど、観念したのかその細い指先が俺の頬を撫でる。

「少しはムードってもんを考えろ」

「岩城さん見てたら余裕なんてなくなっちゃうよ」

「バカ・・・」

そのまなじりが朱に染まり誘われるように俺は岩城さんの唇を奪っていた・・・。





貪りあった身体に心地よい温もり・・・。愛しい岩城さんの身体をギュッと抱き寄せる。

「愛してるよ岩城さん・・・」

そのまま気を失い眠ってしまった岩城さんの指先にそっと口付ける。

その時、指輪が太陽の光に反射して輝いた。

繊細な美しい指先を彩る指輪は永遠の愛を誓ったあの日依頼、今も変わらず輝き続けている。





俺は指輪に願いを込める。

何一つ成し遂げられないまま迷わないように、愛の炎をいつまでも灯し続けようと・・・。

俺達に襲い掛かるありとあらゆる障害を炎となって消し去れるように・・・。

そしてどんな試練にも立ち向かう勇気を与えて欲しい・・・心からそう願っていた。





ねえ、岩城さん・・・。

俺達の愛はどこまでも揺るぎないものだと信じてるよ。

俺はいつでも岩城さんのそばにいるから・・・。

だから俺を信じて欲しい!





俺はそう願いながら愛しい唇にそっと口付けた・・・。





END



2004.5.7  luna



★指というテーマでふたりのバージョンを書いていただきましたv
素敵です〜v
いちゃつきながらも真摯なふたりの気持ちが表れていて・・・
どんなことがあっても揺るぐはずのないふたりの愛・・・
あらためて感じました
お題クリアーお疲れ様でした、lunaさんv