痛っ 



寝室には二人の荒い息遣いが響いている。
「―――― っあっ・・・香藤っ・・・まだっ・・・!!」
「ごめんっ、岩城さんっ・・・・俺っ、もう・・・限界っ」
「っつぅっ・・・・!!ああっ!!痛っ・・・香藤・・・!!」
痛がる岩城にためらいつつも、香藤は自らの欲望を打ちつけ続けた。

*****

「ごめんなさい、ごめんなさい!!本っ当っにごめんなさいっ!!!」
ベッドに横たわった俺の背中のほうから、香藤が多分土下座だろうことをしている気配が伝わってきた。いつもならそこまでされれば気も治まり、許してやろうという気持ちにもなったのだが、今回は少々事情が違った。



幸いなことに、と言うべきだろう。生き馬の目を抜く芸能界の中で自分たち二人は実力派の売れっ子俳優として多忙な日々を送っていた。当然のことながらオフも少なく、あったとしても互いにオフが重なることは稀で、顔を合わせることもできない日々が長く続くこともしばしばあった。

顔を合わせることも稀なら、当然sexなどする余裕はないわけで、その期間自然二人とも禁欲という形をとることになる。

一人ですればいいじゃないか、という話なのだが、そこはそれ、生理的な問題だけでは片付けられない、まあ・・・その・・・なんというか・・・・香藤風にいうところの愛を・・・ゴホン・・・確かめる行為というものであるわけで・・・・。

まあ、そのことは置いておいて!今回はその禁欲期間が特に長かった。恐らく俺が香藤に気持ちを打ち明けてからでいうと、最長記録じゃないかと思う。

俺だって香藤とのsexは嫌いじゃない。むしろ好きというかなんというか・・・・。

が、だ。
たいていの場合受け入れる側は俺の方だ。本来ソコは受け入れるようにできていない器官であるため、ブランクがあると受け入れるのがきつくなる。

今回もいつもの通り俺が受け入れる側にまわった。

いつもなら事情を理解している香藤はじっくりとほぐしてからしてくれるのだが、今回アイツはろくな愛撫もないままいきなり突っ込みやがった!!

 ――――コホン、失礼。怒りのあまり口調が乱暴になってしまった。

で、事の後、ぐったりしてしまった俺に香藤は慌てふためき、最初の状況になるという訳だ。

はっきり言って痛かった。
もの凄く痛かった!
幸い切れてはいなかったようだが!!
身じろぎするとまだズキッという痛みが走る。

事を回想していた意識をふと背後の香藤に向けるといつの間にか静まり返っている。
さっきまでごめんなさいもうしません許してくださいこの通りとかなんとか言っていたような気もするが、今はシンとしている。いや、よくよく耳をすますとなにやらめそめそとすすり泣く声が聞こえる。

気になってこっそり背後を窺うと、香藤はひざを抱えた、いわゆる体育すわりの体制で顔を埋めて泣いていた。

 ――――――ああ・・・・・・・

呆れてじぃっと見ていると、視線を感じたのか香藤が顔を上げた。これまた情けない顔である。

目が合うと気まずいのか香藤は視線をさっと下げ、何やらごにょごにょと呟き始めた。

「ごめんね、岩城さん。怒って当然だよね。俺ってば岩城さんとするの久しぶりだったからさ、何かカァ〜って頭に血が上っちゃってさ。最低だよね、俺。自分だけが気持ちよくなっちゃってさ。岩城さん凄い痛がってたのに・・・・・・・。うっうっうっ、うぅ〜〜〜」

そして再び膝に顔を埋めてめそめそと泣き始めた。

 ―――――――はあぁ〜〜〜〜

思わず深くため息を吐いてしまった。そしてポンと香藤の頭に手を置く。
しょうがないじゃないか。こんな状態を見せられたらさすがに俺だって哀れを催さずにはいられない。
それに、久しぶりでってのは俺も同じで、香藤の気持ちも解らないでもない。
それにまぁ、なんだ、俺も最後は痛いだけじゃなかったし・・・・付け上がるだろうから香藤には絶対言わないが。

頭に置かれた手の感触に、香藤がそろりと顔を上げる。
「い、岩城さん・・・・」
「本当にもうしないか?」
「し、しませんっ!!」
香藤の顔がわずかに輝く。
「痛かったんだからな」
そう言うとまたしおしおとしぼむ。
「はい、ごめんなさい・・・」

その叱られた犬みたいな様子が可笑しくて、思わずククッと笑うと下半身にズキッとひびいた。
思わず顔をしかめた俺に香藤は心配そうな目を向ける。
それに大丈夫だと視線で答え、誘うように顎に手をかける。
誘われるがまま香藤は顔を近づけてきて、唇が触れる瞬間小さく「ごめんね、岩城さん」と呟き、それから先ほどの痛みを癒すようなゆっくりとした優しいキスをした。

たったこれだけのことでさっきの痛みがどこかへ飛んでいってしまうなんて、これも惚れた弱みというやつなのだろうか。

まぁ、弱みも握ったことだし、当分は香藤を扱き使ってやることにしよう。

End.
海田およぐ



★あまりにも良すぎるが上につい無理をしてしまう香藤くん
・・・日常茶飯事のような気がします(笑)
でもそれでもつい受け入れちゃう岩城さん・・・・がんばれ!(笑)
痛いほどにきつく抱いちゃったんだね・・・・香藤くん(汗)
でもきっとまた・・・やっちゃうんだろうな〜v
およぐさんお題のクリアーお疲れ様でした