おやすみ〈おやすみのkissはあなたから〉 

ねぇ岩城さん、岩城さんは気付いてる?
俺ね、kiss大好きなんだ!
それも俺の好きなのは、岩城さんがしてくれるkiss。
だって岩城さんがしてくれるkissって、とっても甘くて気持ち良いんだもん♪
俺からするのとは全然違う、とっても幸せなkiss


雨が降るたびに春から夏へと近づく6月、今日も夕方から雨が降り出した。
雨音を聞にしながら、岩城は自宅のリビングでテレビを見ていた。
「もう12時か…」
見ていたニュース番組が終わり、ちらりと時計に目をやる。
もうあと数分で日付が替わろうとしていた。
「今日は随分遅いな…」
この家にいるのは岩城一人、香藤はまだ帰っていない。
「撮影が押しているのか?」
帰宅予定は午後10時だった、しかしそれはあくまでも予定。
仕事の都合で帰りが日付が替わってからになる事は、そうめずらしくもない。
「はぁ…」
なぜかため息…
別に今日は約束をしていたわけではない。
何かの記念日だったわけでもない。
それでも期待してしまう、自分の仕事が思いがけず早く終わった日は、あいつの仕事も早く終わるのではと…
「そろそろ寝るか」
待っていても仕方がない、明日も朝から仕事が入っている。
この様子だと香藤の帰りは朝になるかもしれない。
岩城はあきらめテレビを消した。
  ― ザァー…ザァー… ―
外はまだ雨が降っているのだろう、激しく降る雨音が部屋に響く。
2階へ上がろうと腰をあげたが、雨が気になりカーテンの隙間から外を覗く。
やはり雨は強く降り続いていた。
「あいつ傘持って出たのか…」
止む気配のない雨に、急に香藤の事が心配になりだした。
「あいつが帰るまでに止んでくれると良いんだが…」
マネージャーの金子が車で送ってくれるのだから、傘がなくともそんなには濡れないだろう。
しかしそれでも気になってしまう…
「うん…!」
家の前に白い車が止まった。
しばらくした後、後部座席から人が降り、そのまま走って玄関へと入った。
その姿を見届けると岩城は、ソファにおいてあったタオルを手に取った。
その顔はなぜか嬉しそうだった。


「冷てー」
玄関に掛けこみフルフルっと頭を振って水滴を払う。
車から玄関までのわずかな距離だったのだが、思ったよりも雨は強く、結構濡れてしまった。
「ふー…」
もう12時、岩城は寝てしまっただろうか。
リビングに明かりが付いていたような気もするが、明かりが付いていたからと言って岩城が居るとは限らない。
それに明日も朝から仕事が入っていたはずだ、もう寝ているだろう。
シャワーでも浴びようと靴を脱ぎ、家に上がる。
「おかえり」
「岩城さん!?」
リビングの扉が開き、岩城が顔を出した。
もう岩城は寝た物だとばかり思っていた香藤は驚き、喜んで飛びついた。
「い〜わきさ〜ん、会いたかったよ〜」
「こ、こら…濡れるだろう」
香藤の突然の思いもよらぬ行動に驚く。
しかし、そんな事はお構いなしに、香藤は嬉しそうに顔をこすり付けてくる。
「まったく…風邪引くぞ」
そう呆れたように言いながらも、手に持っていたタオルを頭に掛けてやる。
「えへへ」
優しく髪を拭いてやると嬉しそうに顔を上げた。
「それより香藤、『おかえり』]]
「あ、『ただいま』岩城さん!チュ」
大切な言葉を交わす、そしてすかさず香藤は口付けた。
「ただいまのチューも〜らい!」
「こら」
「いいじゃん、せっかく起きて待っててくれたんだし!」
「なっ!」
急に言われて岩城の頬が朱色に染まる。
「ち、違う!」
「違うの?」
「たまたま、起きてただけで、ちょうど寝る所だったんだ!!」
「えーそうなの?」
図星をさされ頬が染まったまま反論してくる、そんな姿が可愛くて仕方がない。
「そうだ!俺はもう寝るから。風呂さっきつけといたから、もうすぐ沸くはずだから入って来い。」「えー、もう寝ちゃうの?」
「明日も朝から撮影があるんだ」
せっかく起きて待っていてくれたのだから、今日はたっぷりと甘えようと思っていたのに…当てが外れてしまった。
「ちぇ〜」
「お前も早く風呂入って寝ろ」
「わかった…じゃあハイ」
ハイ、といって香藤は岩城に顔を近づける。
「…?なんだ?」
「おやすみのkiss、せっかく起きて待っててくれたんだから、今度は岩城さんから頂戴!」
「なっ」
何か言い返そうとしたが、嬉しそうに目をつぶり岩城からのkissを待っている香藤の顔を見ていると、言葉が出てこない。
「はぁ〜」
岩城はため息をひとつ付くと観念したようで、香藤の顎に手を添えるとそっと触れるだけのkissを唇に贈る。
唇が一瞬触れ、すぐに離れる。
それでも香藤はこの上なく嬉しそうだ。
「おやすみ、お前も早く風呂入って来い。風邪引くぞ」
「うん、おやすみ〜」
ニコニコ顔をの香藤を残し、岩城はさっさと2階へ上がっていく。
残された香藤だが、幸せいっぱいな笑顔でバスルームへと向かうのだった。


おやすみのkiss
とっても嬉しい、甘いkiss
額にされるかと思ったら、ちゃんと唇にしてくれたkiss
触れるだけだけど、とっても優しいkiss
岩城さんがくれる、1日の疲れを吹き飛ばしちゃうkiss
そんな幸せな、おやすみのkiss


2004.05.20 水樹



★どのKissも香藤くんにとってはこの上ない愛しいKiss・・・
どの岩城さんも自分のモノvvvv いいですね〜
こんな優しいKissをされたらきっと素敵な夢を見られそうです
本当に羨ましいなあ〜香藤くんv
水樹さんお題クリアーありがとうございましたv