夜空に輝くプレゼント  − Iwakisan's ribon −





6月9日、朝から香藤は不安だった・・・。

二人で迎える自分の誕生日も今年で8回目を迎える。
「俺も30歳か・・・男は30からだよな。岩城さんみたいに良い旦那様になるぞ!」
自分から何も言わない岩城と違い、毎年大騒ぎして大人気ない催促するような真似は止めようと、香藤は今年そのことに自分からは一切触れずにいた。

そして・・・今日に至る。つまり岩城は何も言ってこないのだ。
今日のせっかくの岩城のオフも小野塚と競演のドラマが予想以上に押しているため、朝から仕事になってしまった。

「まさか忘れてるって事はないよな・・・」

岩城が出掛けて殻になった隣のベットを見つめ、香藤は情けない声で呟いた。



「岩城さんブラックでしたよね。」
「ああ、ありがとう。」
「そういえば、今日って香藤の誕生日ですよね。なんかやるんすか?」
ドラマ撮影の休憩時間にコーヒーを岩城に手渡しながら小野塚が聞いてきた。
「なんかって?」
「香藤が喜ぶことつーか。あっ、そういえば、今年の岩城さんの誕生日のプレゼントのことで香藤に言ったんっすよ、やんねーのかって、自分にリボンかけて”プレゼントは俺”って。」
「ブッ・・・!」
岩城は思わずコーヒーを噴出してしまった。
「そ、そんな事あいつやろうとしたのか?」
「どーかなぁ、誰がやるかって怒ってたけど。一瞬マジに考えてたっけ、それ見たら笑っちゃいましたけどね。ぷっ、思い出したら可笑しくなって来た、あはは・・」
小野塚はツボに入ったらしくお腹を抱えて笑い出した。
一瞬、岩城の頭の中に身体中リボンでグルグル巻きにした笑顔の香藤が浮かんだ。
『ふっ・・・可愛い奴・・・』
その岩城の見せた優しい表情が期待していたものと違い、小野塚は『あれっ・・』っとちょっと驚いた顔をした、そしてニャッと笑った。
「参ったなぁ〜、そんな顔されたら大笑いしてる俺がバカみたいじゃないっすか。うーん、となると・・・岩城さんもアリってことか・・・」
「えっ、アリ?」
「今日の香藤の誕生日に、自分にリボンかけて”プレゼントは俺”ってやつ。」
「俺が?そんな事しない!なんで俺がそんな事・・・」
岩城は目元を少し紅く染めて恥ずかしさに怒ったような口調で言った。
「ですよね、岩城さんのキャラじゃないっすもんね。でも・・・」
小野塚はいきなりプーッと噴出すとまた笑い出した。
「どうしたんだ、小野塚君?」
「くっ・・、今リボンかけた岩城さん見て、喜んでる垂れ目の香藤を想像したら・・嬉しくって尻尾が契れるぐらい振っちゃってる犬っすよ。くっ・・腹痛てー。」
「犬って・・小野塚君、君ね・・」
「はぁー、笑った。でも、あいつも遂に三十路か・・・なんかそんな感じしないっすね。俺より年上のくせに可愛いから、香藤って。」
「んっ、そうかな。」
岩城は小野塚が何気なく言った可愛いの言葉に少しムッとした。

「すいませーん。小野塚さんお願いします。」
「うぃーす。さて、お仕事、お仕事。」


岩城のバックの中には、昨日買った香藤へのプレゼントのキーホルダーが入っていた。
毎年1ヶ月以上も前から、岩城の誕生日と自分の誕生日は大騒ぎするのが恒例になっていた香藤だが、今年に限ってなぜか自分の誕生日の事を何も言って来なかった。
『あいつ、なんで今年に限って騒がないいんだ?』
まだ仕事面で本調子ではない香藤に比べ、岩城は小野塚とのドラマ以外にもゲスト出演のドラマを数本抱えていて、毎日目まぐるしいスケジュールをこなしていたため、2,3日前に清水に言われて気が付いたぐらいだった。
慌てて用意したプレゼントは、香藤が以前岩城の誕生日にペアで買ってきたキーホルダーがそろそろくたびれ始めていたので、何でもペア物を持ちたがる香藤のために自分のものと一緒に色違いのペア物を買っていた。
『俺に気を使って言わないのか?』
いつも何かとプレゼント以外でも岩城を喜ばせてくれる香藤に、何かしてやりたいと思ってはいるのだが、去年の20代最後の誕生日も岩城が体調を崩し、予定していた食事をキャンセルする有様だった。

「喜ばせること・・”プレゼントは俺”・・か・・」



「香藤、ちょっと待っていてくれるか、すぐに準備するから。」
岩城はホテルのバスルームに入っていった。
「岩城さん、持って来た服、クローゼットに掛けとくよ。」
「ああ、すまんな香藤。」

撮影が思ったより早く引けた岩城は、夕方オフで家に居る香藤に電話をした。
「香藤、悪いが何か服をホテルまで持って来てくれないか、撮影中にスーツを汚してしまったんだ。それとせっかくだから夕食もここのホテルでしょう。」
香藤は嬉しそうに返事をすると、岩城の指定した時間通りにホテルの部屋にやって来た。
何とか理由をつけて香藤をホテルに来させたものの、バスルームにいる岩城は顔から火が出るほどの恥ずかしさと戦いながら迷っていた。
『俺は本当にやるのか?香藤が喜ばなかったら・・俺は愚かで情けないことをしようとしているのか・・しかしここまで来て今さら止める訳には行かないし・・・』
水のように冷たいシャワーを浴びて気持ちを立て直すと、赤いリボンを手に取り鏡の前に立った。。
首にかけて一巻きさせて・・・蝶結び・・・(可愛い岩城さん出来上がりvv)
『ダメだ、俺には出来ん!』
ピュッとリボンを解くと頭を抱えた。
やっぱり自分には結べない・・・あれで我慢してもらおう・・・

「香藤、ちょっと椅子に座ってくれ。」
「えっ、この椅子?」
「ああそうだ。いいと言うまでこっちを見るな、椅子に座ったまま前だけを見てろ、いいな。」
「うん。でも、何で?」
「いいから俺の言う通りにしろ!」
「わ、わかったよ。」
香藤は何がなんだか分らないままに、言われた通り椅子に座ったまま前を見た。
バスルームから自分がセットした椅子に香藤が腰掛けるのを確認すると、岩城はゆっくりと深呼吸した。
部屋の明かりが消えたと同時に窓のカーテンが開いた。
香藤の正面に大きな窓ガラス、そこには大きな赤いリボンが貼り付けられていた。
『ん?なんだこのリボン?』
香藤は身を乗り出してそのリボンを見た・・・岩城がいた・・・光輝く夜空に浮かぶ、赤いリボンにラッピングされた岩城の姿がガラスに映っていた。
「岩城・・・さん・・・」
「香藤、誕生日おめでとう。”プレゼントは・・俺”・・だ。」
うっとりと見惚れていた香藤が、突然振り向いた。
「ばっ、バカ、こっちを見るなと言っただろう。」
素っ裸の岩城は慌ててベットに飛び込こみ、頭までシーツを被ってしまった。
香藤はベットに近寄り腰掛けるとシーツの中の岩城の耳元で囁いた。
「ごめん。あんまり嬉しくて・・・ありがとう岩城さん、最高のプレゼントだよ。」
シーツからゆっくり顔を出した岩城は恥ずかしさで耳まで真っ赤に染まっていた。
「も〜う、どうしてそんなに可愛いかな〜、岩城さんって。」
「可愛いって言うな。お前がやろうとしてた事をやっただけだ。二度としないぞ、こんな恥ずかしい事。」
「俺がやろうとしてた事?」
「ああ、今日小野塚君が言ってんだ、俺の誕生日にお前が”プレゼントは俺”ってやろうとしてたって・・・」
「小野塚の奴余計なことを、って言いたいとこだけど・・今日は感謝だな。こんな可愛い岩城さんがプレゼントになっちゃったから。」
「バカ、可愛いっ・・んっ・・・んんっ・・・」

岩城の言葉は香藤の口付けによって飲み込まれていった・・・・



やっぱりプレゼントはすぐに開けたいよね、香藤君!

♪♪♪♪Happy birthday(ノ^^)Y.katou(^^ )ノHappy birthday♪♪♪♪


kaz


花園versionありますvv


ええ!こんな素敵なプレゼントなら貰った瞬間開けます!(笑)
そしてその場で食します(こらこら)v
それが正しい受け取り方ですね(^o^)
小野塚くんと岩城さんの会話が楽しいですわ〜v
香藤くん本当におめでとうvvv
素晴らしい夜を・・・

kazさん、素敵なお話ありがとうございましたv