- VIRGINAL VAMP -


6月が近付き出してから、岩城さんの様子がおかしい。
俺の顔を見て、時々こっそり妙な溜息をついている。
熱い視線、投げかけてくれんのはすんごく嬉しいんだけど、その後のはぁぁぁ〜って何っ?
まさか俺が気付いてないとでも思ってんの?・・・失っ礼だよな〜。

察するに、もうすぐ俺の誕生日だから、イベント好きな俺の為に、

『やっぱり・・・、なんかしてやんなきゃいけないんだろうな?』
『欲しけりゃ、なんであれ買ってやるのはいいんだが、自分で選んで考えるなんてのが、億劫だ』
『ナニが欲しいか、聞いた方が早いんだが』
『いやいや、香藤のことだ。何が欲しいかなんて聞こうもんなら、どんなスケベなリクエストがくるか、解ったもんじゃない』
『・・・はぁぁぁ・・・』

・・・てな感じで、鬱々悶々とでも、してるんでしょ?

まあ、実際、俺は大概のモノは持ってるし、欲しけりゃ勝手に買うし、誕生日だからって、別に岩城さんに何かして貰わなくたって、そんなのどーだっていいんだよね。
俺は、演出する方、が好きだから♪
岩城さんが、びっくりしてくれて、テレながらも実はこっそりすごーく喜んでくれたりする、そのことに意義がある。
俺の世界一大切で大好きな岩城さんの、可愛い笑顔が見たい。
偶にやり過ぎちゃって、嬉し泣きなんかされちゃった日には、もう可愛くて可愛くて、止まんないんだけど〜!!!
こういうこと、苦手で不器用なんだって、ちゃんと解ってるからさ。
そんな悩まなくたっていいんだよ?
当日は、俺の方から、適当に強請って、ちゃんと岩城さんが気にしなくていいようにしたげるからさ?

・・・まあ、でも、俺に悪いな〜くらいに思っててくれりゃ、どっちに転んでも、俺的には美味しい思い出来そうだし?
可哀想なんだけど、ちょっと放っておいちゃお♪


・・・なんて、イジワル考えた罰が当たったんだろうか!?

「ええええ!?明日、帰れないの!?」

ドラマロケで、6月8日、俺 in グアム。
今日のロケが終わり、ホテルで夕食後の一息。
明日残りの撮影終わったら、速攻帰国!
6月9日バースディオフは取れなかったけど、10日は丸々オフ貰えたから、撮影が終わったら、すぐ飛行機飛び乗って、成田に迎えにきてくれる岩城さんとディナーデートとその後・・・に超・超期待して、わくわく!
どんなに遅くても、誕生日ラストギリギリくらいまでには会えるはずだから、岩城さんとめくるめく愛のひと時を〜!!!

・・・のはずだったのに。
初日撮ったフィルムに、撮影許可の下りてない予定外のモノが映ってたのが発覚して、丸々リテイクだって、金子さんがすまなそうに言う。
せっかくせっかく岩城さんが、9日仕事の俺に合わせて、10日にオフもぎ取ってくれたんだよ!?
それこそ、絶対NGなんか出さないように、集中して集中して頑張った撮影だったってのに!
つまり、帰れるのは、早くて10日の夜の便・・・。
ううう。 それじゃ、次、2人一緒のオフ取れるの、いつなんだろう!?

「・・・香藤さん?」
「うっ。・・・まあ、しょうがないよね。仕事だから。じゃあさ、出来るだけ早い便で帰らせて?監督のOKが出たら、その場から、速攻で空港行けるくらいに?」
「・・・ええ。それはもちろん・・・」
「よし、じゃあ、明日はさっさとリテイク片付けよう!岩城さんに予定変更の連絡しなくちゃ」
「・・・そうですね。お願いします」

金子さんは、複雑そうな苦笑をして、部屋を出て行った。

パタン・・・。

ドアが閉まると同時に、電話に飛びつき、岩城さんの携帯を鳴らす。
俺の指先の早いコト早いコト。家のも携帯番号も、指先が覚えてるから。

「あ、岩城さん!?今、電話してて平気?」

電話の向こう、かなり周りが騒々しいみたいで・・・雑音が酷くて、岩城さんの声、よく聞こえない。
それでも、なんとか、叫ぶみたいにして明日帰れなくなったことだけ伝えると、そうか、解った・・って、至極あっさり。
なんか、ちょっと忙しなく、煩わしそうに聞こえて・・・がががーーん。ナニそれ〜!?
そして、あんまり周りがうるさ過ぎるから、また後でホテルに電話するって、電話は切られてしまった。
・・・・ショック〜。あうあうあう・・・っ!

岩城さん、まだ仕事中なんだ・・・。
今日の仕事、どこの局だ・・・って言ってたっけ・・?

「・・・・・・」

ずるずるずる〜と、俺、ベッドにごろん。

・・・あ〜あ・・・。

思い切り、脱力&溜息。

「・・・・・・」

別に・・・さ。誕生日だから・・・どうこうなんて、それで期待してた訳じゃないんだ。
特に何かして欲しいなんて、思ってなかったし?
・・・ただ、岩城さんと過ごすオフが・・・嬉しくて。
絶対、絶対、岩城さん、いつもよりうんとうんと、甘やかして、優しくしてくれるのが・・・解ってたから。
いつもよりほんのちょっと、遠慮なく我儘、言えて・・・って、俺、いつも我儘言ってるし、遠慮なんかしたことないんだけど。
岩城さんが俺に優しくない時なんて・・・ないんだけどさ。
ベッドに転がって、携帯の待受の岩城さんの写真を見つめる。
俺に向かって、少しテレたみたいに微笑む・・・キレイな岩城さん。
頭の中に、岩城さんの声が木魂してくる。

『・・・甘えてんのか・・・?』

岩城さんの腰に抱きついて・・・岩城さんのお腹に顔埋めて・・・頭ぐりぐりしたりする俺の顔を覗き込むみたいにして、優しく笑う・・・。

『・・・いい年して・・・子供みたいだぞ・・・?』

その手が俺の髪をそっと撫でながら、上向かせて・・・。
それから、岩城さんは俺の頬を両手で包んでくれるから、ずいっと体を起こして、俺が目を閉じさえすれば、そのまま・・・岩城さんの唇はこれ以上ないくらい優しく俺に触れてきて・・・。

『・・・香藤・・・?』

・・・って・・・。

それから・・・、それから・・・。

俺は思わず、ぎゅっと唇、噛み締める。
たった1日、2日、会える日が延びただけだっての。
飛行機に飛び乗れば、ほんの2〜3時間で岩城さんのいる日本に帰れる、そんな近場にいるだけだって。
国内とさえ変わらない。
電話は繋がるんだ、岩城さんの仕事が終われば・・・、もうちょっとだけ待っていれば、きっと岩城さんは電話をくれて、その声が聞ける。
別に無人島にたった1人で取り残されたわけじゃない。
帰る船がないわけじゃない。

それなのに・・・。

明日になれば、また1つ大人になって、ほんの少し岩城さんに近づける日だってのに。
今夜の俺は、なんか・・・幼稚だ・・・。

「・・・ホームシックだ・・・・これ・・・」

岩城さんの写真を見つめて・・・涙じわり・・・うう。

「・・・岩城さ〜ん・・・」

明日の仕事に差し障りない程度なら、スタッフと飲んだっていいし、遊びに出掛けたっていい。
ホテルの正面はプライベートビーチ。
カーテン開けただけで広がるパノラマは、水平線まで見渡せるライトアップされたロマンチックな海。
夜の海眺めながら、散歩がてら、頭冷やすのもいい・・・。
グアムなんて、大した広さもない島なんだ、その気になれば一巡出来る。

でも・・・、切り替えのいいはずの俺が、どうしても今夜はそんな気になれない。

「・・・電話・・・すぐには来ないよな・・・」

仕方なく、電話がいつ鳴ってもいいように、サニタリーのドアは開けっ放しでシャワーを浴びる。
髪を洗う間すら、耳はコール音を探ってる。
いいのか悪いのか、やっぱり電話は鳴らず・・・。
濡れた髪をタオルでこすりながら、バスルームから上がってきても、静まり返った部屋に、重い沈黙・・・。
つい、また携帯開いて、着信なしを確認して・・・がくりと肩が落ちる。

・・・ヤバイ・・・マジ、ヤバイ・・・・。ううう・・・、本格的に凹んできた・・・・。
どーしたんだよ、俺・・・・!?

時計の針を見ると、いつの間にか、あっさり0時を回っていて・・・。
腰にバスタオル1枚巻きつけただけのまんま、またどさりとベッドに転がる。
ああ・・・寝ないとマズイよな・・・とは思うんだけど・・・。

「まだ・・・仕事してるの・・・?岩城さん・・・」

こっちからまた掛けて、留守電だったら、俺、もっと凹みそう・・・・。
仕事の邪魔する訳にもいかないし・・・。

「・・・岩城さ・・・ん・・・」

イラっと焦って、咥えたタバコに火をつけて、煙を吐き出しても、鳴らない電話。
気を紛らわせようと、枕元の有線チャンネルの悪戯開始。
インターバルな言語の飛び交うパルスの中で、ふと耳に飛び込んできた・・・透明感のある日本人女性ヴォーカリストの切ない歌声。
燻らせるタバコの煙が、悲哀を誘う音律に寄り添うみたい・・・。


  ねえ どんな寂しさも 今よりはつらくはないはず・・・
  会いたくて恋しくて切なさがあなたへと跳ぶの・・・


「・・・・・・」

・・・他人に言えない恋でもしてんのかな?
会いたくて会いたくてどうしようもないのに、何かの障碍に阻まれてるみたいで 恋人に会えなくて・・・、
恋しくて恋しくて・・・って歌詞が切ない・・・。
体は置いてきていいから、心だけでも自分の傍に跳んで来て・・・て、今、今すぐに、って、すんごい哀しい旋律・・・・。

「・・・・・・う」

普段の俺ならさ・・・。
リスクのある相手と恋してんなら、キッチリ腹括れよ!?
メソメソ泣いて待ってるだけなら、自分がいったいどうしたいのかくらい、はっきり決めなよ!
周囲に反対されてるんなら、じゃあどうしたら祝福して貰えるのかとか、どうしたらその恋成就出来るのか考えて、行動起こせばいいじゃん!?
なんて・・・カッコイイこと、言っちゃうんだろうな。

俺と岩城さんだって、決して安穏だったわけじゃない・・・。
偶々岩城さんが俺に振り向いてくれたから、岩城さんが俺を愛してくれたから・・・、ふたりだから乗り越えて来れたリスクだったんだし・・・。
これからだって、いくらでもリスキーなことってあると思うし・・・。
でも、俺達だったら大丈夫なはず・・・俺達なら・・・。
だけど・・・。
そうそう、世の中、簡単じゃなかったりもするよね・・・。もっとツライ状況だって、そりゃ色々あるよね・・・。  
 
「・・・・・・うう」


  これ以上あなたに求めはしないから 抱き締めに来て今すぐ・・・


「・・・だーーーーっ。ちょっと、やめてよ〜〜〜っ」

俺は思わず、スイッチ、ぶち切り。
ナニ、歌詞にシンクロして、曲調にメロウになってんの、俺?
灰の落ちそうだったタバコも灰皿でもみ消し、ピロケースにばふばふと額ぶつけて、思い切り頭を振る。

 
  ・・・導きに・・・来て・・・唇・・・   


「やめてったらーーーっ!」

そして、俺にしては、珍しく、年に一度あるかないかの、本格的な落ち込みに、すっかり目頭が熱くなってしまったその時、

RRRRRR・・・・・。

鳴ったのは、ホテルの、じゃなくて、俺の携帯だった。

「岩城さん!?」

猛ダッシュで、受信。

『・・・香藤?』

電話の向こうで岩城さんの俺を呼ぶ声。低くて・・甘い・・・大好きな・・・。

『遅くなって、悪かったな?・・・寝てたか?』
「・・・ぁ・・・」

やっと、やっと声だけでも届いたのに・・・呼吸が、変、だ、俺。
知らない感情がこみ上げてくる・・・息苦しさ。ナニ?なんなの、・・・これ?

『・・・香藤?・・・香藤だろ?』
「・・・わき・さ・・」
『ん?なんだ?・・・泣いてんのか?どうした?』
「・・・だ・・・だ・・って」

俺自身も、何が何だか、解らない。
嬉しいんだと、思う。岩城さんの声が聞けて。
でも、その待ってた声が、その優しい、俺を愛してくれてるのが解る声に、益々心臓が早鐘を打つ。

「岩城、さ・・・ん・・・っっ」

それでも、声を聞いてると、まるで知らない町で迷子になった子供が、迎えに来てくれた母親にやっと会えたみたいな気分になって・・・。
洟啜りながら、ようやく、さっきも言った帰国の延びた理由を伝えている内に、思いがけない愚痴が口から飛び出す。

「・・・岩城さん、帰りたいよ・・・」
『・・・・・・・香藤?』

俺らしくない、って言われるの、解ってるのに・・・。
・・・大人、なんだから。男、なんだから・・・っ。
俺達が俺達である為に、どうしても譲っちゃいけない仕事、なんだから。
それなのに・・・。解ってるのに!!!

「会いたい・・・会いたい・・・会いたい・・・」

今では両親以上に、この俺を愛してくれる岩城さん。
大人のフリなんかしたって、どうせバレちゃう、けど・・・。
背伸びしたって、どんなに岩城さんを守るんだって叫んでたって、俺はいつも岩城さんに守られてるんだけど・・・、それも事実なんだけど!
慣れない欝に頭に血が上って、逆上せてくる。
苛立ちと焦燥と・・・不安。
もう、ダメ!!言いたいことは何でも言っちゃえ!って、開き直って。
今は仕事もナニも放り出して、岩城さんのいる日本に帰りたい!って思ってる自分が恥ずかしいんだって、わーわー喚いてみた。

そしたら、

『・・・そんな可愛いコト言っても、俺の顔見りゃ、すぐ強気になるくせに』

電話の向こうの岩城さんは、優しく相槌打って、くすくす笑う。

「そんなことないよ〜!?俺、今、寂しくて死んじゃいそうなんだよ!?」
『・・・死ぬか、バーカ』
「うさぎは寂しいと死んじゃうんだよ!?俺も死んじゃうよ〜!!」
『誰がうさぎだ・・・っ!?』

うっうっうっ・・・。
愛されて・・・、愛されて・・・俺は・・・、岩城さんに愛されてて・・・。
そんなの解っていたって、恋しい。胸が苦しい。声、だけ、じゃ・・・足り・・ない。

「・・・・・・っく・・・」
『・・・どした?』
「・・・・・・ひっく・・・」
『・・・どうした?うさぎの香藤?』

からかうような声すら、愛してるって言ってるの、聞こえる・・・。
だけど・・・、だけど・・・、だから・・・!!!

「ねえ・・・岩城・・さん・・・?」
『・・・ん?』
「今・・・すぐ、・・・ここに来て、俺のこと、抱いて?」
『・・・は!?』
「今!今すぐ、ここに来て、俺のこと抱いて!!!」
『あああ〜〜〜!???』
「なんか、なんか、なんかもう、思いっきり、思いっきり、めちゃくちゃにしてーーーって感じなんだよーーっ!!」

自分でも、ナニ言ってんだ、俺!?ってな、一世一代の超我儘、バカ発言。
言った後で、カァッと顔が火照る。

・・・女の子みたいじゃん、俺〜〜〜!バカバカバカ〜俺のバカ〜〜っ!!

『・・・ぷっ』

案の定、岩城さんは冗談だと思ったらしくて、思い切り噴出す。
う・・・っ、それはそれでいいけど・・・。
でも、・・・やっぱ、すんごい、恥ずかしーーーっ、ムカぁーっ!
うぐぐ・・・うぐ、あうっ。
・・・なんかもう、我ながら、悔しくて・・・悔しくてっっっ。

「わ、笑うことないでしょ!?俺、マジ、ヤバイんだよ?おかしいんだってばーーもぉっ!!!」
『・・・メランコリー慣れしてない奴のナーバスってのも、大変だな?香藤』
「うーーーっ。イジワル言わないでよっ。俺が1番ワケ解んないんだから〜!」

益々興奮してきて支離滅裂な俺に、岩城さんの大爆笑。
ひぃひぃ言いながら、お腹抱えて笑ってるのが電話越しに聞こえてくる。
ヒドイヒドイヒドイよーーー、この人〜〜〜!!!

『あはははははは・・・・・・くくくっ・・・はぁ』
「岩城さんは得意だからいーよ!ねえ、こーゆー時って、どうしたらいいの?」
『ああ!?悪かったな。得意ってなら、そんな時気持ち切り替えるのが巧いのが、お前じゃないのか?』
「そーなんだけど、変なんだもん。今夜の俺・・・」
『・・・ホントだな・・・ぷぷ・・・っ』
「うー!俺のトランキライザーは岩城さんだけなの!他の薬じゃ効かないんだからね!!?」

もう、こうなったら、俺が唯一甘えられる人に、何でも言ってしまって笑い飛ばして貰っちゃえ。
そんな俺の喚きたてに、珍しいものを聞いてるって、なんか妙に楽しそうな笑い声な岩城さんなもんだから・・・、そうしてると、なんだか段々楽になってくる気がしてきた。

『あ・・・香藤?』

って、そしたら急に岩城さんは、笑うのをやめて。

「ナニ?」
『・・・日本時間で、0時回ったぞ?』
「え・・・?」
『・・・誕生日だよな?』

・・・おめでとう・・・って・・・。

「岩城さん・・・」
『・・・なんとか、今年は一番に言えたみたいだ・・・』

・・・あ、時差か・・・。・・・この時間に電話くれたのって・・・わざと・・・?

「ああああああーーーん!岩城さ〜〜〜んっっっ!!!」

俺は、再び胸が締め付けられて、もうホントに涙が出てきた。

『・・・何が欲しい?やるぞ、プレゼント・・・』
「・・・う・・う・・・う・・・」
『・・・言ってみろ、香藤?』

岩城さんは、ここぞとばかりに、とっておきの男前な口調で、思い切り、俺を甘やかす。
もう、俺は見栄もプライドもあったもんじゃなく・・。

「岩城さん!!!岩城さん!岩城さんだけ。岩城さんだけ、欲しいっっっ!」

って、叫んでいた。
海の向こうの声は、それに嬉しそうな吐息混じりで。

『・・・期待を裏切らないタラシだな・・・お前って』
「ナニ・・・それ・・・ひっく・・・」
『・・・じゃあな。金子さんに頼んでおいたプレゼントがあるから・・・お前のいる部屋のドア、開けてみろ?』
「え・・・?」
『・・・ドア、開けろ・・・香藤?』
「う、うん・・・」

岩城さんの言葉に、俺は携帯を耳にしたまま、自分の格好も考えずに、ドアに向かう。
カチャリとドアを開け・・・、そしたら・・・、

「・・・な、なんで!?」

目の前に、携帯を耳に当てた・・・岩城さん!!!
開いたドアの脇の壁に凭れて、俺に向かって、にこって笑う岩城さんがいた・・・。
俺はそれこそ、心臓が口から飛び出しそうな程驚いて。

「・・・ぁ・・・ぁ・・・あ・・・」

びっくりしてびっくりして、舌が回らない。
そんな俺に、ゆっくり体を向き直らせて、岩城さんが、

「迎えに来てやるって・・・言っただろ?」

って、俺の頭ぽんぽん、って。

「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーん!!!!」
「うわっ」

それこそ、今会えるなら、地球なんかどーなったって、明日なんかどーだっていいってくらいだった俺は、携帯を放り出して、岩城さんにしがみ付く。

「岩城さん!岩城さん!岩城さん!!!」
「・・お、おい。香藤、タオル落ちるっっっ。そんなカッコで・・・」
「ヤダ、岩城さん、ヤダ・・・っ」
「とにかく、部屋に入れろって・・・」
「うう、う、うん・・・・うん・・・」
「・・・ったく・・・。凶悪だぞ・・・お前?」

しがみつく俺を抱えるようにして、岩城さんが部屋に入ってくる。
ドアを閉めて、纏わり付いて離れない俺を抱いたまま、ベッドに腰掛けると、

「え・・・?」

岩城さんが・・・いきなり俺を、後ろ抱っこ、に・・・して、あわあわっ。

「い・・・岩城さん・・?」
「・・・ん?」
「・・・ど、ど・・・して?」

いつもと逆の体勢が・・・、俺を後ろから抱く岩城さんの腕が・・・。

「・・・は・・・恥ずかしいんだけど・・・?」

なんか・・・、なんか、すごい・・・ドキドキする!!
岩城さんの顔が俺の左肩口にあって・・・耳元で・・・。

「・・・お前がいつも・・・俺にするだろ?・・・あれ、落ち着くから・・・」
「・・・・・・」
「・・・お前に・・・愛されてるの・・・感じる。だから・・・」

・・・って。
ああああ・・・っ!!!なんで、またそう、こんな時の、こんな俺に、そんな殺し文句を〜!!!
俺はがばっと振り返り、また岩城さんにしがみつく。

「わ・・・っ」

俺の重みで、岩城さんの体もベッドに沈んだ。
岩城さんの体に被さるみたいに、その肩に顔を埋めて。

「・・・香藤・・・?」
「・・・・っく・・・・ひっくっ」
「・・・おい・・・?」
「・・・・・・っ」

そして、俺の髪をぎゅって掴んで、頭を抱えてくれると。

「・・・俺で、いいんだろ?プレゼント?」

って・・・更に耳元で囁いた。

「うわぁぁぁぁぁんんんっっ!!!」
「・・・リクエストは、『めちゃくちゃに〜』だった・・・っけ、か・・・?」
「〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・それから・・・、ん・・・と・・・え・・・っと。
言葉とは裏腹に・・・・、それはそれはもぅ・・・・・なんて言っていいのか・・・。
どうしていいのか・・・解んない、程・・・・優しく・・・優しく・・・・・・〜〜〜して、貰って・・・。
恥ずかしくて、嬉しくて・・・・。えへへ・・・vvv

そして、もろもろの俺の咽喉のひくつきがようやく治まり始めた頃・・・岩城さんの腕枕で、やっと、ぼつりぼつりと、このサプライズのネタばらし。

「えええ!?じゃあ、最初の電話の時って成田空港だったの?それであんなに煩かったんだ?で・・・、で、え?え?じゃあ、じゃあ、金子さんもグルで・・・、初日のフィルムのリテイクって、嘘なの!?」
「あ、金子さん、そんな風に言ったのか?・・・すまん。適当に、お前に1日帰国が延びるって思い込ませてくれって、俺が頼んだ」
「じゃあじゃあ・・・?」
「明日、予定通り、お前の撮影終わったら、そのまま1日、ここで俺とオフ」
「・・・・・・・・っ」
「・・・どうだ?」
「・・・・・・・う・・・っ」
「イヤだったか?」
「・・・・・・・・ううっ」
「嘘ついたの、・・・怒ったのか?香藤?」
「・・・・・・うっ・・・・嬉しい、に、決まってんじゃん!!!!!」
「うわぁぁっっ!!!?」

それからは、もちろん、改めて、予定通りのめくるめく、メイクラブターイム〜♪
こっからが本番だよ!!?
大好き!!大好き!ホントにホントに、愛してるーーー!!岩城さん!
当然、俺は、頂戴したプレゼントを満遍なくイタダキマシタ♪



♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



翌朝、すっかり暗雲の去った晴天快晴ピカピカ、の俺は、睡眠不足もなんのその、元気にお仕事♪

「・・・な、ナニが、『思い切り、めちゃくちゃにして〜』だ!?この、絶倫うさぎが・・・っ!!」

俺の出掛け、まだ起き上がれず、ベッドで、ちょっとだけ、ご機嫌ナナメな岩城さんに、

「えへへ。ぱぱ〜っと残りやっつけてくるから。それまでゆっくりしててね?」
「・・・ううう」
「今朝もキレイだよ?俺の岩城さん?」

チュv

「とっとと、行けーーーっ!!」
「わ!はーい、行ってきまーす!」

もちろん撮影も絶好調でNGなし。
予定よりずっと早くホテルに戻ると、なんとか回復していた岩城さんと、さっそく海遊びにGO!
サーフィンだと岩城さんがつまんないだろうから、2人で遊べるものにしようって。
それで、ジェットスキーとパラセーリング!
そのパラセーリングで、岩城さん。
なんか、俺を後ろ抱っこするのが気に入ったみたいで、今日だけは俺が後ろって譲らないの。
俺の誕生日だってのにさ。
男2人でデュエットパラってなんなんだ!?って、最初はすんごい恥ずかしがってたくせに〜。

走り出した船が、俺と岩城さんを、広がる青空上空に舞い上がらせていく。
視界いっぱいに広がる、やっぱり蒼・蒼・蒼の海を下界に、2人で蒼の世界に飛んでいく。
パラセーリングのリードの限界まで舞い上がった上空までいって、感極まって、

「・・・キレイキレイ!!ホント、気持ちいいよねーーー!!岩城さん?」

って、振り返った俺に、岩城さんから、不意打ち無言のディープキス。

船からも沖からも浜辺からも、豆粒みたいで誰にも解んないだろうって思ったのか、岩城さんてば、大胆!

幸せーーーーーーっ!!!!!!

これ、してくれようと、後ろ譲らなかったんだ・・・ああああああああ!!!
これって、これって・・・最高の、最高の、最高のバースディプレゼントだよ!?岩城さん!
もうもう、どーしよーーーー!!?
ホテルに戻ったら、またどーなっても、知らないよ?
それにそれに、次の1月27日にどんなサプライズ仕掛けたら、この幸せ、返して上げられるんだろう!?

岩城さんに、そう言ったら、

「・・・年なんかとりたくないから、俺の誕生日は忘れてろ」

だって。
あはは。ヤダよー。

ねえ、岩城さん?思いっ切り、期待してていいからね?
絶対絶対ぜーーーったい、俺、毎年、岩城さんを嬉し泣き、させてみせるよ?
・・・もちろん、ベッドまでのフルコースでね!?



おわり
2005/05/28 にゃにゃ

注)本文中の曲 : 彩 恵津子<セカンドバージン>

私の妄想&願望全開vv
香藤くん、乙女で乙女で乙女で〜〜〜!!!
カッコイイ香藤くんファンの皆さま、許して下さい〜;;;
しかし、その乙女香藤くんの御蔭で、asさんの素晴らしいvv
<後ろ抱っこ・リバ>イラストがvv
asさんvv 大感謝です〜vv 


香藤くん・・・何?この可愛さは一体・・・・(^o^)
犯罪だわ(笑)
こんな可愛くされたら岩城さんもたまらないですよね!
後から抱っこ・・・おお、萌えます!
asさんのイラストがもうたまりません!!!
おふたりの合作とっても楽しく萌えさせて貰いましたv
香藤くん本当におめでとう!

asさん、にゃにゃさん素敵な作品本当にありがとうございましたv