雪‥‥‥ウサギ‥‥‥??

「うん、金子さん。今回だけでしょう。かまわないよ。俺、プーだから」
「香藤さん、そんなにいじめないで下さいよ。でも、全国に流れるCMですし、少しギャグ物になると思うんですけど」
金子と香藤が電話で話をしている。
内容は、仕事らしいが最近香藤もぼちぼちと仕事を始めている。
「だって、俺が無茶を頼んでもらってるんだし、CMに出してもらえるんならかまわないよ。ついでにギャラもあるんでしょう」
香藤の声が明るい。
こんな事は、以前は良くあっていた事だったのに、今日は新鮮に感じる。
二人の電話を聞きながら、珈琲を入れていた。

「香藤、仕事か?」
「うん、CMだってさ。冬蝉も一段落付いたし、事務所も少し露出って思ってるんじゃない?まあ、その冬蝉のスポンサーらしいからね」
電話を切って聞き返す岩城の言葉に、香藤は答えを返すとソファに戻った。
「飲むか?」
「もち‥‥‥まあ、今回の事は俺にはいろいろと考えさせられたし、結果はプラスと思ってるからさ。岩城さん」
その言葉に香藤がニッコリしたのは、10月始まりの頃だった。


CMはあるアイスクリームである。
その日、打ち合わせをしていた香藤は、バーコード2枚を送ると抽選であたるコートを見て、
「これ、小さい子供用ないの?俺、それだったら欲しいな」
メーカー、広告代理店の人間に言っていた。
「香藤君、子供用だったら誰に着せる気ですか?」
その言葉を聞きつけて尋ね返された。
「このコート、白にフードにウサギの耳にシッポでしょう。おそろいで、茶色で狼の耳とシッポのコートで‥‥‥5歳ぐらいまでの子供が着られるのだったら、親は自分の子供にって思うよ。俺も、甥っ子と姪っ子に着せたいなって、今、思った」
香藤は素直に言い返す。
今あるプレゼント用は、ある程度の年代の女性を対象にした物だったが、香藤の言葉に頷きを返すメーカー側だった。
「香藤さん、狼バージョン出来たら着ていただけますか?」
不意に聞き返され、少し考えて答える。
「俺が言い出したんだし‥‥‥良いよね。金子さん」
「ええ、問題ないと思います」
マネージャーの金子の許可をもらって、香藤はその狼コートを着ることに決まった。
「香藤さん、子供用を着せたいって?誰にですか?」
スタッフの一人に不意に聞かれる。
「妹の子供の洋介と、岩城さんのお兄さんの子供で日奈ちゃん‥‥‥絶対に可愛いと思う」
「まさか、お二人に似ているとか‥‥‥」
「実は、そのまさかだったりして」
にこやかに香藤は答える。
スタッフに囃されて香藤は携帯に入っている洋介と日奈の写真を見せてしまい、その事で岩城に怒られる事になるのは、後日の話となる。

数日後、CMの撮影が終わり、帰り道に香藤はメーカー側の人間に呼び止められた。
「香藤さん、これを」
手渡された包み紙。
「何?これ」
「ええ、香藤さんの言われた、子供用の物です。HPでアンケートとったら、本当に小さい子供に着せたい親が多かったのですよ。ですから、作りましたので」
「ええ、いいの?」
香藤は嬉しそうに受け取る。
「はい、ついでに大人用も入れておきましたので」
そういい残し、立ち去って行った。
「大人用‥‥‥岩城さん着てくれないかな‥‥‥」
香藤はこのコートを着る岩城を思い浮かべた。
フードに兎の耳に、お尻に真ん丸いシッポ‥‥‥
心の中で絶対、岩城に着せようと目論む香藤だった。



 そのコートを岩城が着たかは、謎である。
                             ――――了――――

                                 
         

   某アイスクリーム「雪○大■」のプレゼントのコートを偶然お店で見ました。
   で、つい書きました。   2005・1    sasa
               


大人用・・・それを着る岩城さん・・・・!
もうその妄想だけでご飯が食べられます!(おい)
それを着た洋介くんと日奈ちゃんも可愛いでしょうねえ!!
いっそのことみんな着ちゃえ!とか(爆)
(お兄さんも・・・? 笑)

sasaさん、素敵な作品ありがとうございましたv