DISTANCE (G ver.)
―――――カチャリ 真っ暗な寝室のドアを開け灯りを点す。 予め入れておいたエアコンで室内は程よく暖まっていた。 自分のベッドに腰を下ろし主のいない隣のベッドを見つめた。 香藤は一週間前から沖縄にロケに行っていた。 このくらいのロケはそう珍しくなく二人とも年に何度かある。 それなのにいつも以上に寂しく感じるのは日付のせいだろうか。 今は深夜零時前、もうすぐ日付が変わり1月27日になる。 東京に来てからは自分の誕生日なんて長く意識したこともなかった。 それが今ではひとりで迎えるのが寂しいとまで思うようになった。 俺はいつからこんな欲張りになったんだろう。 明日の夕方には香藤は帰ってくるというのに。 急に寒くなったような気がしてベッドにもぐりこむ。 『岩城さん、何か欲しいものある?』 クリスマス前の香藤の言葉を思い出す。 「ねえ岩城さん、何か欲しいものある?」 クリスマスを数日後に控えたある日香藤が訊ねてきた。 「なんだ、クリスマスプレゼントか?それなら何もいらないぞ。」 「違うよ。それはもう買ってあるから。そうじゃなくて誕生日のプレゼント。」 「誕生日プレゼント?」 「そう、何がいい?早く聞いといた方が色々探せるしさ。」 「誕生日でも同じだ。欲しい物なんてない。お前が…」 お前がいてくれれば…そう言いかけて言葉を飲み込んだ。 香藤がその日夕方にならないと戻れないのはもう分かっていたから。 「お前が選んでくれたものならなんでも嬉しいよ。」 「うっ、岩城さんそれって凄い殺し文句だよ。分かってて言ってる?」 「バカ…。」 「へへ。ねえホントに何もない?ビックリはしたけど今年みたいのでもいいんだよ。」 「ああ、ホントに何もないよ。」 香藤が去年の誕生日にくれたのは俺がリクエストしたこのベッドのマットレスだった。 この家の中で一番多く身体を重ね合ってきたのは俺のベッドだ。 そのせいでマットレスは早々に寿命が来てしまったのだ。 この新しいマットの上でももう数え切れないほど抱き合った。 ただ前よりは頻度が減っているとは思う。 別に行為そのものの回数が減った訳ではない。 意識して香藤のベッドもするようになったからだ。 それでもまだ一番頻度が高いのは俺のベッドなことには変わりはないが。 もし香藤がいたら今夜もここで愛し合っただろう。 きっと香藤は「今夜は朝まで愛してあげる。」とか言って何度も俺を求めただろう。 そして俺も何度でもそれに応えただろう。 ぶるぶると頭を振って浮かんだ想像を追い払う。 何を考えているんだ俺は。 これじゃあまるで欲求不満の人妻じゃないか。 恥ずかしさに火照る頬をパタパタと手で扇いだ。 気分を変えようと身体を起こして読みかけの本を手に取るが一向にページは進まない。 諦めて本を閉じた時ベッドサイドに置いた携帯が耳慣れた待ちわびていたメロディを奏でた。 「はい。」 「岩城さん、元気だった?」 「ああ。」 二日ぶりに聞く香藤の声に胸が温かくなる。 昨日は俺の仕事が終わったのが深夜二時を過ぎていたから話せなかったのだ。 「昨日はずいぶん遅かったんだね。大丈夫?疲れてない?」 「ああ、大丈夫だ。お前の方はどうなんだ?順調に進んでるのか?」 「うん、順調だよ。予定通り夕方には帰れると思うよ。」 「そうか、良かった。待ってるからな。」 「うん。」 「そうだ、香藤こっちは寒いからな。ちゃんと上に着る物用意して飛行機に乗れよ。」 「あ、そうだね。こっちは暖かくてずっと半袖だもんね。ありがと岩城さん。あっ。」 「なんだ?どうした香藤?」 「もうすぐ日付が変わる。」 言われて時計を見ると今まさに午前零時になるところだった。 全ての針が重なった瞬間に祝いの言葉が告げられる。 「岩城さん、誕生日おめでとう!」 「ありがとう。」 「岩城さん、ごめんね。一緒に誕生日迎えてあげられなくて。」 「何言ってる。仕事なんだから謝る必要なんてないだろう。」 「そうだけど。」 「こうしてちゃんと電話してくれただけで十分嬉しいよ。」 「俺が一緒にいたかったんだよ。そしたら一晩中愛してあげたのに。」 想像と同じことを言われドキンと心臓がはねる。 「ん、どした岩城さん?」 沈黙した俺に香藤が問いかける。 「…もしかして同じこと考えてた?」 俺以上に俺の事を分かっていると言うだけあって察しがいい。 この手のことに関しては特に。 俺が沈黙したままでいることで確信を得たようだ。 「なんでそんなに可愛いかなあ。もう俺堪んない。ああ〜、今すぐ抱きしめたいよ岩城さん。」 「バカ…可愛いって言うな。」 「だって可愛いんだもーん。どうしよ俺熱くなってきちゃった。岩城さん責任とってよ。」 「なんで俺が、お前が勝手に熱くなったんだろうが。」 「ちぇ、冷たいな。…そうだ、岩城さん電話Hしようよ。」 「は?」 「だってひとりでするんじゃ侘しすぎるよ。岩城さんの色っぽい声聞きながらイきたい。」 「…なっ、何勝手なこと言ってるんだ。冗談じゃない。」 「いいじゃん付き合ってよ。帰ったらいっぱいお返しするからさ。」 「……分かった。」 仕方なく承知したふりをしたが俺もすでに熱くなり始めていた。 「あ、岩城さんひとりで先にイかないでね。」 「何だと、お前の方が過敏なくせに。その言葉そのまま返す。」 「ごめん。一緒にイこうね。」 「俺もすまん。」 「岩城さん、いい?」 「ああ。」 ・ ・ ・ 「岩城さん…愛してるっ。」 「俺も愛してるっ。…香藤っ。」 言葉を交わしたのは最初だけだった。 後はもう自ら与える刺激と相手の息遣いとで昂ぶりが増していった。 ・ ・ ・ 俺と殆ど同時に香藤もイったようだった。 まだ息も整わない中携帯越しにキスを交わした。 「はあ…失敗しちゃったな。余計に抱きしめたくなっちゃった。」 「バカ…待ってるから、早く帰ってきてくれ。」 「うん。」 「じゃあ、おやすみ香藤。」 「おやすみ岩城さん。」 もう一度携帯にキスをしてベッドサイドに置き布団にもぐりこんで目を閉じた。 早く朝が来るようにと祈りながら。 END 05.1.7 グレペン |
トントン・・・・首の後を叩く音(笑)
あ、すみません鼻血出していました(こらこら)
いやあ、テレフォン何とかですね!(笑)
いいですねえ〜最高ですねえ〜vvvv
なんて素敵な誕生日!(はあはあ)
グレペンさん萌える作品をありがとうございますv
携帯に口づけ・・・うふふvいいですね!