Blue Illumination 


分かってる・・・分かってます!

この時期休みが取りにくいっていうのも

俺達の仕事がそんなものだというのも

でもさあ、分かっていても割り切れないものってあるし

やっぱり羨ましいなあ・・・って思うのもあるんだよね。

あ、いいなあ、このお店・・・雰囲気がよさそう・・・

料理も美味しそうだし・・・

こんなところで岩城さんとふたりっきり・・・

時間を気にせずゆっくりと語らう・・・そんな聖夜の夜・・・

ああ、たまんない!!!

食事じゃなくてもいいんだ、光に包まれた道を岩城さんと歩きたい・・・

雪が舞ってクリスマス雰囲気満点で・・・・


・・・・でもさ・・・・ダメなんだよね・・・

俺は溜息をついた。



「なんだ、まだ拗ねているのか?」

本を片手に入ってきた岩城さんが俺を見て言った。

「別に拗ねてなんかないけど・・・」

強がりを言ってテレビの画面に目を戻す。

「仕方ないだろう? どうしてもその日ははずせない・・・」

「うん、分かってるって・・・」

岩城さんの言葉を遮って言う・・・ああ、今のタイミング・・・ガキみたいだ、俺。

なんか自己嫌悪も入ってきた。

横に座った岩城さんの視線を感じながらも、俺はぼんやりと画面を見つめた。



もう散々した話。

なんとかスケジュールをあわそうとしてくれたことも知ってる。

元々あまりそんなのを気にしないのに、お店とか調べようとしたこととか・・・

だから、岩城さんは悪くないし、これは仕方のないこと。

俺達にとって忙しくない方がまずいということも分かってる。

だから、でもね・・・って思う俺は我が儘なんだと思う。

こうやって同じ時間を過ごせるだけで幸せなのに・・・もっともっとって思ってしまう。

本当に俺って・・・。



クリスマス特集をやっていた番組の途中CMが入った。



パラッと頁を捲る音が聞こえた。

あまり明るくない部屋、スタンドだけの光で暗くないかな・・・・

そんな事を思いながら俺は少し迷って

ゆっくりと岩城さんの膝の上に頭を降ろす。

突然のことにちょっと驚いたけど、下から見上げる俺の顔を見て岩城さんは微笑んだ。

「どうした?」

「なんでもないよ・・・ただこうしたかったから」

「・・・そうか」

2,3度俺の頭を撫でて本に目を戻す。

テレビからは再びクリスマスソングが流れてきた。


「・・・岩城さん・・・」

「ん?」

「俺ってどんどん貪欲になる」

岩城さんの指が髪に絡まる。

「こんな風に過ごせる時間が何よりも大事なのに・・・ね」

「・・・・・・そんなものだろう」

「そうかな」

「人間だからな・・・1つを満たせばまた別の物を・・・それが当たり前だ」

「岩城さんも?」

「ああ」

でもおまえのように我が儘は言わないけどな・・・とか言われちゃったよ。



部屋に流れる聞き慣れたメロディー。

・・・そうだよ・・・そうだよね・・・

俺に膝枕をしてくれる岩城さんがいて・・・クリスマスソングが流れていて・・・

目を開ければ、優しく岩城さんが見下ろしてくれていて・・・・

これ以上望むなんてバチが当たるよね。



「・・・ここに行くか」

「え?」

岩城さんが画面を見て呟いた。

首を動かすとそこは何処かの植物園で・・・・

クリスマスのイルミネーションの様子が映し出されていた。

夜の園内・・・闇に浮かび上がるツリー、そして温室のドーム・・・

別世界の・・・テレビで見ていても引き込まれそうな幻想的な雰囲気。

アナウンサーの言葉が重なる。


『今年はクリスマスまでではなく大晦日、元旦までこの催しは続くそうです』



「これならクリスマスが終わっても、少しはそんな雰囲気が楽しめるだろう?」

年末までの間なら何処かで時間が取れる・・・

「うん!うん!岩城さん、行こう!!」

「ここなら広いし、園内は基本的には暗いからそんなに人目を気にしなくて済むしな」

「うん!うん!」

「なんだ、そんなに嬉しいのか?」

俺のあまりの頷きように岩城さんが吹き出す。

「嬉しいよ!俺・・・岩城さんとこんな素敵な所歩いてみたい!」


一緒に光を見上げて、見つめて・・・



きっとキラキラしていただろう俺の目を見つめておかしそうに岩城さんが言う。

「やれやれようやく機嫌が直ったか、我が儘王子様」

「岩城さ〜ん」

それは、あんまりだよ〜と叫ぶと

岩城さんがまた笑った。


甘やかされて・・・くすぐったくて・・・でも嬉しい・・・。



そっと岩城さんの首に手を回した。

ありがとう・・・・岩城さん

くちづけさせて?




『今年の流行は青だそうですね』

『ええ、ブルーイルミネーションと言って・・・・・』

聞こえてくる声。









テレビの画面に青く綺麗な光が灯る。

そしてそれは部屋を・・・・そして身体を重ねたふたりを照らす。

白い肌に映る青の光はとても綺麗だ。

いつの間にか窓の外には雪・・・積もるのだろうか・・・

ふとそんなことを思いながら目の前の肌を吸い上げた。





クリスマスまであと3日。

でも俺達だけのクリスマスはもう少しだけ先・・・




メリークリスマス・・・・






※思いっきり季節はずしてすみません・・・・;;
2004・12 日生 舞


いえ・・・なんか申し訳ないお話で何とも;;
ちょっと我が儘な香藤くんと
それに溜息をつきつつ存分に香藤くんを甘やかす岩城さんを書きたかっただけです・・・
あと、ブルーが好きなもので・・・v

楽しんでいただけたらそれで良いです・・・はい;;