『rape blossoms』


少し遅めになったが久々にふたり揃っての夕食ということで腕をふるった香藤の料理がテーブルを飾る。

「いただきます。」

岩城が箸をつけると香藤はその様子を見ながら味はどう?と尋ねる。
うまいよという岩城の言葉を聞いてほっとして香藤も料理に箸をつけた。

「菜の花のおひたしか。春なんだな。」

感慨深げにつぶやく岩城を見て、今日は岩城の好きな和食にしてよかったと香藤は思う。

「春だよね〜そう言えばうちの近くに菜の花畑があってさ。
すっごく綺麗なんだよ。」
「そうか、見てみたいな。」

岩城が菜の花畑を見たことがないと言うのを聞いて香藤はそうだと目を輝かせた。

「明日岩城さん仕事午前中で終わるんだよね?俺はオフだから一緒に見に行かない?菜の花。」

今が盛りできれいだと思うよという香藤の提案に岩城もいいなと同意したのだった。


そして翌日、仕事を終えた岩城を迎えに来た香藤の車でふたり一路千葉へ向う。

「そうそう菜の花って千葉県の花なんだよ。知ってた?」

得意げに話す香藤に知らなかったなと岩城は相槌を打ちながら車窓に目を向けた。ところどころに桜の花が見受けられ思わず目を細める。
春だな、などと他愛無い会話をしているうちに目的地に到着した。

車を降りて少し歩くとそこは一面の菜の花畑だった。
平日ということもあって人もそれほど多くはなくふたりはのんびり歩きながら花を眺めた。

「どう?岩城さん。」
「ああ、綺麗だな。見事だ。」

嬉しそうな岩城の顔見て、よかったと香藤も微笑んで小さい頃よく家族で見に来たのだと話す。

岩城はそんな香藤の顔と菜の花を眺めながら思いを巡らした。

(そう言えば菜の花の花言葉は……ふっ、香藤にぴったりだな。)

少し吹き出してしまった岩城に気づいた香藤がどうしたの?と不思議そうな顔をして尋ねる。

「いや、菜の花の花言葉がおまえにぴったりだったからつい。」
「そうなの?どんな花言葉なの?」
「”快活”だ。」

そうなんだと香藤が関心したようにつぶやく。

「なぁ、香藤。おまえは俺の菜の花だ。」

唐突な岩城の言葉に香藤は驚いて岩城を見つめた。

「え、何?俺は岩城さんの”快活”ってこと?」

意味がわからないと言う香藤の言葉に菜の花にはもうひとつ別の花言葉があるのだと岩城は言った。

「もうひとつって何?」

その言葉を岩城は心の中でつぶやく。

(豊かさ、財産だ)

「内緒だ。」
「え〜?なんで〜!?」

気になるよ〜と騒ぎ立てる香藤の様子に笑いながら岩城はいつまでも菜の花を眺めていた。



2005.4.9 ゆうか




香藤くんの料理が食べたい・・・(o^^o)
岩城さんにとって香藤くんはもう1つの”財産”なんですね!
ステキです・・・そしてきっと逆も・・・vvvv
これから菜の花を見ると思い出しそうですv

ゆうかさん、ありがとうございますv