悦びの涙 |
「んっ・・・」 「っ・・・」 言葉にならないふたりの声が重なる。 次の瞬間吐き出した息の音・・・・・・。 身体から抜けていく熱に身が震えた。 「岩城さん・・・」 そう呼ばれて目を開くと、息を弾ませ、優しく微笑む香藤の顔があった。 「・・・岩城さん・・・」 もう一度そう呟いて降りてくる顔に再び目を閉じると唇にぬくもりが与えられた。 再び目を閉じそれを受け取る。 まだ乱れている息を互いに吸い取るようにキスをかわす。 「気持ちよかった・・・」 少し笑って囁くおまえの髪に手をあてた。 「ああ、俺もだ」 そう言うと、嬉しそうに顔を綻ばせて・・・そっと俺の目の下に唇を近づけてぺろっと涙を舐めた。 「また・・・・泣かせちゃった」 「・・・バカ」 えへへと笑いながら、もう一方の目の下も舐める。舌の感触がくすぐったい。 「だって嬉しいんだもん」 ちゅっと音を立てて頬にキスをする。 「岩城さんのこういう時の涙って、すごくそそるんだよ」 そう言いながら顔中にキスを落としていく。 「こんな涙を流させるのは俺だけ・・・・・だしね」 嬉しそうに言う顔に少しだけ照れた。 「・・・・・・・おまえもよく泣いてるよな」 快楽に溺れ、流す涙。 少し悔しくてそう言い返すと、そんなこと当たり前じゃん!と逆に言い返された。 「岩城さんが抱いてくれるんだよ〜嬉しくて嬉しくて・・・泣いちゃうよ、当然でしょ」 さらっと返された言葉に頬が熱くなる。 「・・・バカ」 「もうっ、さっきからバカ、バカって・・・」 情けない顔をして少し拗ねたように言われた。 仕方ないだろう・・・その言葉しか出てこないんだから。 愛しいおまえだからこそ言うんだ。 俺は笑って、コツンと香藤の頭を叩いた。 「ね、一眠りしたら桜を見に行こうか?」 「桜か・・・」 肌の温度が落ち着いた頃、香藤が言った。 確かちょうど満開の頃だとニュースで聞いた気がする。 「良い所教えて貰ったからさ」 と、その場所を告げ、腕枕にした腕で俺を引き寄せた。 香藤の香りに包まれる。 「満開の桜の下の岩城さん・・・見たいんだよね」 「そうか?」 「うん・・・なんていうか美しさの相乗効果?っていうのかな・・・いいと思うんだ」 「・・・・」 言っていることがよく分からない。 そんなことを思うのはこいつだけだろうとため息をつく。 でもそんな戯言でも心地よく聞こえるようになった俺もかなり毒されているのかも知れない。 「寝よか、岩城さん・・・ふたりで朝を迎えるのも3日ぶりだし・・・」 よりいっそう俺を抱きかかえるように身体を動かす。 多忙な日々・・・昨夜は互いに仕事が長引いて帰宅したのは零時近かった。 時計は既に4時近くを指している。 「やっぱり岩城さんだよね〜」 と訳の分からないことを言いながら、俺を抱きしめる。 絡めてくる足。 ・・・もしかしてこの状態だとよく眠れると言っているのだろうか。 ・・・抱き枕みたいなものか? そう言おうと思って顔を上げると、閉じられた目・・・寝息が聞こえてきた。 ふっと微笑む。 ・・・それは俺も同じだな・・・ そっと香藤の腰に手を廻す。 このぬくもりに慣れた自分は、香藤から離れては安心して眠れない。 いつでもどこでもこの香りに包まれていたいと思う。 そっと頬にキスをする。 さっき香藤が涙に触れたように・・・少しだけ舌を出して。 ・・・目が覚めたら桜を見に行こう・・・ 満開の桜のもと花びらが雪のように舞うなか、笑うおまえを俺も見たい。 そして空を見上げよう。 何度でもふたりでこんな風景を見られるようにと願いながら・・・。 側におまえがいる幸せを味わいながら・・・。 「おやすみ・・・香藤・・・」 そう呟いて俺も目を閉じた。 優しいぬくもりに包まれる安心感が眠りを誘う。 もうすぐ夜が明け、また新しい一日がはじまる。 2005・4 日生 舞 |
微妙にお題から逃げているお話ですね・・・苦笑
お楽しみいただければそれで嬉しいですv
前半と後半に分けて読みにくくてすみません(汗)