- Dream Clone - |
春は眠い・・・。 いや、芸能人なんて、春に限らず、仕事が詰まってくりゃ、連チャンの徹夜も、休みなしも当たり前なんだから、ちょっと気を抜きゃ、睡魔なんてどっと押し寄せてくるんだけど。 CM、ポスター、ロケ、取材・・・、過密スケジュールを笑顔で捌いてやっと一息ついたのは、次の現場までの移動の車内。 「・・・どうぞ?香藤さん、着いたら起こしますから、寝てて下さい」 気の利く金子さんの穏やかな物言いに、うつらうつらな俺は、ありがと・・・と言いながら、すでにリアシートでこてん・・・と・・・。 ********** 春の日差しが柔らかく、差し込むお日様、ポカポカ陽気。 お天気快晴、緑はのどか。そよぐ風の気持ちいいこと! 空気すっきり、爽やか渓谷山中の、キラキラを眺めながら、白馬の綱引いて、気分はすっかり森林浴〜。 ・・・・・・・・・ん!?白馬の綱引いて・・・!? 「・・・・・・キレイだな。緑の芽吹く春の自然・・・。この大自然の中で人は命の尊さを実感出来るんだ・・・。有難いことだ」 恐る恐る・・・、ま、正に、恐る恐る声のする馬上を見上げると、何の樹木なんだかさっぱり俺には解んないけど、春の朝露、日差しでキラキラ、をバックに、馬上の白い法衣。 金色の袈裟を纏った眩しい、岩城さん。 「さ、さ、三蔵岩城さ〜〜〜ん!!!?」 「ん?」 思わず、拝みかけたくなる、神々しいまでの美僧姿に、それでも絶叫してしまう俺。 それは、ああ、またこの夢、見ちゃってるよ、どうしよう!?が大方を占めていた。 「・・・・また、歩きながら寝惚けてたのか?・・・お前が俺をその名前で呼ぶってことは、また例の、夢か。・・・ふん」 「あ、あ、あ、あのね、え・・・と、その・・・」 半年ぶりの劇的再会。 夢で再会っていうのかどうか、知らないけど。その美貌は、相も変わらず。 西遊記・玄奘三蔵コスプレの岩城さん・・・。 そりゃあもう、超お似合い!!凛々しくも麗しいそのスタイル。 白馬に悠然と跨る優雅な姿勢といい、下がり冠揺らして小首傾げるノーブルな雰囲気。 憂いを帯びた悩ましげな眉が顰められ、つんと唇微かに尖らせ、拗ねた顔がこりゃまた、色っぽいのなんの! 思わず馬から引き摺り下ろして、あんなことやこんなこと仕掛けたくなるような、超可愛〜〜〜い、岩城さん・・・なんだけど。 ・・・でもでもでも! 見た目はどんなに俺の岩城さんにそっくりでも、アレが、アレが・・・っ。 「・・・まあ、いい。俺も慣れた。好きに呼べ」 「え?いいの?岩城さん、て呼んで?」 「・・・何を今更、昨夜も散々・・・・って、いいんだ!そんな話は」 言いながら、何か思い出したように、またちょっとポッとなるその顔が可愛くて、つい見惚れてしまう・・・。 ・・あぁ・・・・キレイ・・・。 ・・・ううう、そーだよ。そうそう。きっとそう。 俺、ずっと仕事続きで何日も岩城さんに会えなくて、欲求不満。 メールや電話の声だけじゃ、やっぱり寂しくて、フラストレーション溜め捲りなんだよっっ。 仕事モードが弛めば、考えてるのは岩城さんのことばかり。 早く会いたい。傍にいたい。ずっとその顔見ていたい。 触れたい、抱きたい。…抱かれたいって。 出来ることなら、★くんの恋人みたいにちっちゃい岩城さんをポケット入れて、いつも一緒にモバイルしたい。 「・・・・・・」 ちっちゃい岩城さん!?・・・え〜、可愛い〜、ぽわわぁ〜ん。 おっと、ダメダメ、ちっちゃい岩城さんに何が出来るってんだよ。 そんなの俺、益々欲求不満になるじゃん! しかし、それでなんで、こっちの岩城さんの夢見ちゃうかな? あんなに怖い思いしたってのに。 ・・・この美貌は確かに忘れられない衝撃だったんだけど・・・。 やっぱり、どっちかってゆーと、・・・怖い。正直言って、怖い。 いや、怖いのは岩城さんじゃなくて、禁固経、なんだけどさ。 「ん?どうした?そんなしゅんとした顔して?怒ってる訳じゃないぞ?」 夢だと解っちゃいるものの、これから三蔵岩城さんとどうしたもんか? 思案にくれる俺の顔が情けなかったのか、不憫だったのか。 馬上から上体を傾けて、俺を覗き込む岩城さん。 「・・・う、う・・・ん」 なんて、生返事しか出来ない俺に、 「悟空?」 という、大好きな人と同じ声、同じ口調の、優しい呼びかけ。 でも、やっぱり上手く返事が出来ない。 ポクポクポクと馬の足音に重なる俺の歩調に、しばらくして、 「・・・おい・・・、香藤?」 ・・・って、岩城さん。 「何?」 思わず条件反射。声のする方見て、再度呆然。 ・・・・・えええええええええええええ!? な、なんで、三蔵岩城さんが、俺を香藤って呼ぶの!? 前回同様、しっかりはっきり孫悟空、石猿装束の、この俺を!? 「・・・なんだ、その顔はまた。・・・こう、呼ぶと・・・お前、喜ぶから・・」 「うん!!うん!呼んで?香藤って呼んで?ずっと!いや、せめて夢が覚めるまで!」 「・・・・・・バカ。もう、いい加減、起きろ!」 ポク♪ポク♪ポク♪ 途端に足取りも軽くなる。 ・・・モノは考えようで。 三蔵岩城さんが、俺の岩城さんと違うのは髪の毛くらい。 俺が岩城さんって呼んでOKで、俺を香藤って呼んでくれるなら、前回のような美味しい状況でも、失敗はありえない。と、なれば、この夢の世界での俺達も、現実と変わらないラブラブな夫婦! この三蔵岩城さんは、やっぱり俺の岩城さんだ!! 「おかしな奴だな・・・くす」 「だって嬉しいもん♪」 すっかり気を良くした俺に安心したのか、またいつもの苦笑兼微笑。 零れるような俺への愛しげな視線が嬉しい。 ああ・・・大好きな人に愛されてるって感じるこの幸せってないよね♪ どんな世界でもシチュエーションだっていいよ。岩城さんがいる世界が、俺の世界。 岩城さんさえいれば、あとは2人でどうにでもなるとさえ思っちゃう。 ![]() ・・・と、そこで、俺はさっきの閃きにあれ!?と気付いた。 夢の舞台は西遊記。岩城さんが玄奘三蔵、俺が孫悟空でしょ。 孫悟空って言えば、道教の仙人修行した石猿。 キントウンとかって雲に乗ってひとっ跳びだったり、色んな術、使えたんだよね? 如意棒振り回して大暴れ、って、だけじゃなかった。 他人に化けたり、大きくなったり、小さくなったり。確かそん中に、分身てのが・・・。 岩城さんに禁固経が使えるなら、俺にも術って使えるのかな・・・? 「岩城さん、ちょっと止まって、い?」 「ああ。・・・どうした?」 「ちょっと実験」 「???」 岩城さんの乗ってる馬を木陰に止まらせ、「大人しくしてろよ?」って言い聞かせて綱を離す。 あ、そういや馬も確か龍だっけ? まあ八戒も悟浄いないんだ。そんなことは俺の夢に関係ない。 俺は大きく深呼吸すると、自分の髪の毛引っ掴んで何本か引き抜き、精神統一。 呪文だなんだなんて知る訳ないから、とにかく分身分身〜と心の中で唱えて、TVの見よう見真似で、ふーーって息を吹きかけた。 「う・・・っ、うわぁっっっ!」 すると、パァっと散った俺の髪が空を飛んで、パサリと地面に落ちた瞬間、突如現れた孫悟空装束のちっちゃい物体。 あ、あれ、お、俺〜!? ・・・や、やっぱり、もしかして、もしかしなくても、あれって、俺、だよね・・・!? ひいふうみい…五匹のチビ俺〜! 『お師匠様、お師匠様、お師匠様〜』 『岩城さん、岩城さん、岩城さ〜ん』 ち・・・ちっちゃい、30センチくらいの、デフォルメして、圧縮して、頭身変えたぬいぐるみみたいな俺が、岩城さん目指して、一直線にダダーーッと駆け寄っていく。 う・・・わぁ・・・シュール・・・。 「何始めるかと思ったら・・・」 木陰の馬上で、ずっとそれを見ていた岩城さん、自分に向かって突進してくるちっちゃい俺の軍団に目を細めると、軽やかに馬から下りて、その目線に合わせるように、ゆっくりしゃがんで膝をつく。 そして両手を広げて、ヘイカモンのポーズ。 「可愛い、な・・・。・・・ほら、来い?チビ悟空達?」 ええええええ!? もちろん、ちっちゃい俺の軍団に、躊躇や遠慮なんか、あるわけない。 岩城さんの腕の中に思い切り飛び付いて、奇声を上げての大はしゃぎ。 『お師匠様〜キレイ!』 『岩城さん、可愛い〜!』 「・・・ははは。バカ言って・・・。くすぐったい。こら、おい・・・」 などと、甘やかし放題に目尻を下げつつ。 ううう・・・・・っ。 ミニチュアでも俺は俺なの!?これが俺の分身ってやつだからなの!? 1匹は岩城さんの膝に乗りあがり、1匹は肩によじ登り、はたまた1匹は腕にぶら下がり、と、法衣姿の岩城さんの身体中に纏わり着いて、しがみ付いて!まるで犬猫抱くように、何匹かを腕に抱えて、あああ〜っ、げぇ〜っ、嘗め回されてるよ、岩城さん!! 「・・・こら、ちっちゃい香藤?そんな、引っ張るなって」 『お師匠様、お師匠様、お師匠様〜大好き〜』 「・・・ああ。悟空・・・」 『岩城さん、岩城さん、岩城さん〜大好き〜』 「・・・知ってるよ、香藤・・・」 ちっちゃい俺の軍団は口々に、ストレートな愛を叫びながら、岩城さんに群がっている。 分身達は見た目は同じなんだけど、悟空verと俺verといるらしく、呼び方まちまち。 岩城さん、それに併せて、ホント大変。 あんまり利口そうじゃないなりに愛嬌だけはめいっぱいなちびっ子軍団のそれに、慈愛深い僧侶姿の保父さんな岩城さんは、優しく微笑みながら、いちいち相槌打って応えてる・・・。 あうあう…っ。 「ううう・・・ぐぐぐ・・・」 しばらくその微笑ましいなりに、異様にシュールな光景に唖然としていた俺だったんだけど。 げっ!? ちっちゃい軍団の何匹かが、岩城さんが甘やかしてくれてるのをいいことに、生意気にも袈裟めくって、法衣の裾だの懐だのに、こそこそもぞもぞ忍び込もうとしている。 挙句の果てに、腰帯・・・?何、お前ら、腰帯なんか解こうとしてんだよっ!?ってのを発見して。 「ダーーーー!!ダメーーーーっ!!」 思わず、そこへ突進して、俺は岩城さんを奪い取った。 「ハァハァハァ・・・。油断も隙もない・・・危なっ」 『あーーーお師匠様がぁ〜っ』 「しっ、しっ、消えろ!抹消!!デリート!!分身終わり!!」 岩城さんを肩に抱え上げて、チビ軍団から引き剥がした俺に、 『なんだよ、なんだよ、でっかい悟空!!』 『ずるい、ずるいぞ!でっかい悟空!俺のお師匠様だぞっ!?』 などと、唇尖らせ、思い切り食って掛かってくる。 「・・・だ、誰がお前の、だ!?このチビっ!」 5匹とも俺の足に掴まって、噛み付かんばかりに、詰め寄ってくる。 『返せ、離せよ〜俺の岩城さん!』 『そーだ、そーだ!岩城さんは俺のだぞ、でっかいバカ香藤〜っ』 「・・・言わせておけば・・・このくそチビ共が・・・っ」 俺の顔してようが、ミニチュアだろうがお構い無しに蹴散らしてやろうかと、俺が足を振り上げかけると、 「やめないか!香藤!子供相手に大人気ないっ!」 「ええ!?」 抱えた腕の中の岩城さんから、まるで俺が弱い者イジメでもしてるかのような、激しい叱責。 こ、子供ったって・・・こいつらは・・・。 「とにかく、いいから、下ろせ」 「岩城さ〜ん。ちょっと、それなくない!?」 「下ろせ!香藤!」 渋々・・・そっと、岩城さんを地面に下ろすと、途端にまたチビに囲まれる岩城さん・・・。 ううう。 『あーんっ、お師匠様、お師匠様、お師匠様〜』 『うぇぇぇーーん、岩城さん、岩城さん、岩城さん〜』 「・・・大丈夫だったか?」 『うん!お師匠様』 「怪我は・・・してないな?」 『うん!岩城さん』 1匹、1匹、抱き上げては全身を見回し、順繰りにぎゅっと抱き締めていく・・・。 あ〜ん、なんだよ〜〜〜それぇ〜〜〜っ!? 順に抱擁し終わり、きちんと整列させた5匹を並べて、岩城さん。 「俺達はそろそろ出立しなくちゃならないんだよ。この旅には危険が伴う。お前達を連れては行けない。だから、・・・もう、お帰り?またいつか遊ぼうな?」 優しく1匹1匹に諭すように微笑んで。 ちっちゃい俺の軍団は必死に泣きそうな顔を堪えてるみたいに、うるうるしながら、ヤダヤダと身に覚えのあるような駄々を捏ねつつ、岩城さんに追い縋っていた。 だけど、そこはどんなに優しくてもやっぱり堅い意思を伝える岩城さん。 チビ達が泣いても喚いても、キリリと眼光鋭く、静かに首を横に振る。 それで、しばらくして、 『きっとだよ?・・・絶対だよ?お師匠様!』 「・・・ああ。悟空」 『ホントにホントに天竺から帰ったら、必ずだよ?岩城さん?』 「・・・ああ。約束だ。香藤」 1匹1匹の頭を撫でて、片手印字結びで呪文唱えの、恐るべし三蔵岩城マジック。 ちっちゃい軍団は1匹ずつ、静かにパ〜ッと消えていった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 自分で帰れと言って消滅させたものの、寂しそうなのがモロバレな岩城さん。 そっと近付いて、後ろからぎゅっと抱き締めた俺の腕の中で、名残惜しそうにちっちゃい俺がいた辺りを眺めて、ふぅ、な溜息。 ・・・なんか複雑・・・。 ほんの悪戯心の実験だったのに。 嬉しいような、くすぐったいような、情けないような・・・トホホな俺。 「スケベなチビ共だったね。・・・・びっくりした」 「・・・お前のまんまじゃないか…?」 「えええ〜っ。ひっど〜いっ」 あははと、笑うと、俺の腕をそっと解いて、膝の埃を払う。 法衣の乱れを整えて、 「じゃあ、行くか?」 なんて、爽やか笑顔。 「うん・・・。ごめんね。つまんないことして」 ちょっと反省して、項垂れかける俺に、 「いや・・・。ちっちゃなお前に囲まれるのは、悪くなかったぞ?」 って、くすりと笑う。 「・・・うっ」 もぉっ!可愛、カッコイイんだから〜っ。岩城さんてば!! ・・・岩城さんが産めるんなら、ね〜っ。 それこそ野球チームでもサッカーチームでもって程、励ませて貰って、お腹の空く暇ないくらい、いくらでも孕ましてあげるのに・・・、なんて、思っても口にはしない。 そんなの冗談でも口にしようものなら、鉄拳どころか、フルパワーの禁固経、必至の逆鱗に違いない。 ・・・・ところが。 ほんの少し寂しそうに、肩を落としながら馬に戻った岩城さん。 白馬に乗り上がろうとして、ピタリと止まる。 「どしたの?」 岩城さんに肩を貸そうと近付く俺に、 「・・・お前、分身何人作った!?」 と、あんぐり声。 「5匹じゃなかった?」 「じゃあ、・・・この子は何だ?」 「ええええええ!?」 白馬の足に隠れるように、悪戯見つかった悪餓鬼そのものの顔したチビ俺1匹。 照れ臭そうに、肩すくめてペロリと舌を出す。 『・・・・だって、やっぱりお師匠様から離れたくなかったんだもん』 だーーーーーっ。 三蔵岩城マジック、チビ俺の執念に負け〜。 どうやら、5匹は岩城さん恋しさに団結して、消滅間際に1匹に纏まって復活したらしい。 ・・・ねぇ・・これも俺の分身・・・だから?・・・なのかな・・・。 ちょっと・・・かなり・・・すんごい恥ずかしいんだけど・・・? キラキラな日差しの降る渓谷の足場も、岩がごつごつ。 馬に乗ったままでは降り難いだろうというのもあって、俺と岩城さんは渓谷を降り終えるまでは徒歩でいくことにした。 岩城さんに抱き上げられて、チビ悟空はきゃっきゃ♪な超ご機嫌。 最初は、岩城さんをチビに獲られちゃった気がして、あ〜あ、な俺だったんだけど、チビ悟空をあやしてる岩城さんが、なんだかとっても幸せそうなのって、やっぱり俺達の子供みたいな気になるからなんだろうなって気付いて。 それって俺に似てるから?俺・・・だから?・・・俺、ホント、物凄〜く、愛されてない!? って、今更ながらにじーん・・・。 しかし・・・、歩き出した当初は無邪気な子供との会話をしてたかと思ってたら、 『お師匠様、お師匠様、チュ』 「え?」 岩城さんに抱っこされたチビは、唇突き出して、あろうことか、キスの催促。 岩城さんもどうしたものか、戸惑っている。 『・・・チュ・・・して・・・?』 「だーーーーーっ!?いい加減にしろ。このマセチビ!!」 耳を覆いたくなるようなバカ発言の連続は、なまじちっちゃいだけに、姑息に媚び媚びで、ムカつく!オネダリ口調が俺のまんまなのが、同属嫌悪で、もっとムカつく〜! ! 「香藤・・・。落ち着け」 「だって、俺だって今日はまだして貰ってないよ?・・・ってゆーか、岩城さんの体は全部俺のなの!チビでもヤダ!しないで!」 「・・・バカ・・・」 心底呆れたと言わんばかりの岩城さんの溜息。 駄々っ子とヤキモチ亭主に苦笑して、少しの間、視線を泳がせる。 それから、抱っこしたチビの目元を掌で覆うと、 「・・・子供と・・・張り合うんじゃ、ない・・・」 って・・・そっと俺の唇に、キス・・・してくれた。 『あああ〜』 「・・・岩城さん・・・」 「真っ昼間から・・・こんなこと、させるな・・・」 一瞬逸らした視線を、伺うようにゆっくり俺に戻して、眩暈がしそうな強烈流し目・・・。 ・・・だから、だから・・・それが誘ってるんだってば!!ああ〜んっ、もお!! 『うぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーん。ずるーーーい、お師匠様ぁぁぁぁ』 見えてなくても、俺達のラブな空気を感じたのか、嫉妬深い俺の分身は喚き出した。 「え?あ?・・・お、おい、こら・・・」 岩城さんの胸をポカポカと叩いて、両手を振り回し暴れ出す。 「わっ、やめろ、バカ!」 『お師匠様のイジワル〜っ。でっかい悟空ばっかり、ずるいずるいっっ』 そして、岩城さんの腕から、無理やり落ちると、ダダーっと駆け出した。 「あ・・・危ない!」 1本道とはいえ、足元は傾斜のある坂道。 ゴロゴロと転がるジャリやら砕けたごつごつした岩。そこから大木の枝が生い茂り、気をつけないとホントに転ぶ。 うぇ〜んうぇ〜んと泣き喚きながら、ポテポテとしたちっちゃい体を揺らして、岩伝いに大木によじ登り、不安定な枝の上で、あっとゆー間にぐらり。 ・・・わ、落ちる、ヤバい! 瞬時の反応は岩城さんのが早かった。 法衣の裾を翻し、チビの落下地点まで駆け寄り、見事にキャッチ、し掛けて、うわっとよろめく。追随した俺が抱き留めた岩城さんの法衣には、岩から突き出した大木の枝が絡まり、いきなり、びりびり〜って音。 「・・・ぅ・・・」 って、小さな呻き。 岩城さんの左足は、チビをキャッチした時に引っ掛けた枝で法衣ごと裂かれ、血、血、血が・・・!! 「岩城さん、岩城さん、足!足!ちょっと…っ」 「・・・っ・・・」 このまま下りれば、谷間の清流。それを見た俺は、二人を担いだまま、下流を目指し、一気に傾斜を下った。 川べりに辿り着くと、俺はそっと岩城さんを小岩に座らせ、 「足、見せて?」 傷を確かめるべく裂かれた法衣をめくる。 自分のせいで岩城さんに怪我させたのを理解しているチビは、岩城さんの腕から下り、俺達から少し離れて、びくびくと心配そうに状況を見つめ、さすがに声が出ない。 「・・・擦り傷だ、心配しなくていい」 泣き出しそうに硬直するチビに、岩城さんが優しく笑い掛ける。確かに出血のわりに、傷は浅そう。 「でもちゃんと傷洗っとかないと・・・化膿したら大変・・・」 俺は何かないかと自分を見回し、ダサイスカーフを首から取り去り、清流に浸した。 充分に濡らしたその布で、岩城さんの傷口を拭っていく。 「・・・っ」 「・・・沁みる?痛い?岩城さん?」 「・・・平気だ」 「・・・アルコールでもあればよかったんだけど・・・」 腰のすぐ脇から引き裂かれた法衣。 傷口は、太腿から脹脛にかけて一直線。尖った枝先が岩城さんの白い肌に紅いラインを彫り込んでる。うう・・・。 「・・・歩けない訳じゃない。大袈裟に騒ぐな。チビが・・・怯えるだろう?」 「だって!」 俺の愛してやまない岩城さんの脚線美に入った亀裂が生々しくて、それ見る俺の方が痛い。 どうせ怪我すんなら、なんで俺じゃないんだ・・・っ。 白い肌に拭っても拭っても薄っすらと浮かんでくる赤い血。 ・・・俺がついていながら・・・、そう思うと、たまんない。 出来るだけそっと、そっと刺激しないように、岩城さんの左足の内側に手を添えて、側面の傷に布を当てていく。 どんなに優しくやってるつもりでも、やっぱりキリキリと痛むのか、沁みるのか、その都度岩城さんがぴくぴくと身動いで。 「・・・こんな血、すぐ止まる。・・・・それより」 「ん?」 「・・・自分で・・・、やるから・・・離れて・・・くれ・・・」 「・・・え?何言ってんの、こんなんなのに!?」 「いいからっ!!とにかく、チビ連れて、俺から離れろって・・・言ってる!」 急に声を荒げて、岩城さんが俺から布を奪い、傍にぴたりと張り付いていた俺の肩を強く、押す。 「・・・岩城さん・・・?」 「・・・頼むから・・・、触らないで・・・くれ・・・」 ・・・あ・・・。 改めて岩城さんを見つめて、その高潮した頬の、離れてくれ・・・って意味、にピンとくる。 「・・・岩城さん・・・?あ、あれ・・・え・・・、え・・・と・・・?」 ・・・俺が・・・足・・・撫で回してるみたいに・・・感じちゃった・・・の? 俺、もしかして、内側・・・何気にイヤラシク擦って、た・・・? 「・・・・・ぁ・・・・」 確かめるように、膝裏に添えた手の指をそろり滑らせる。 「・・・か・・・や・・・っ」 すると、岩城さんはまたびくりと仰け反り、その解釈が正しいと教えてくれた。 ・・・うっ、・・・感度良好。 こんなに過敏でどーすんの・・・っ!? か、か、可愛い・・・よ〜〜〜っ!!! 俺はそのまま岩城さんの傷口に口付けた。 「・・・ぁ・・・ぅ・・・」 「・・・言えばいいのに・・・。ホント・・・強情で・・・可愛いんだから・・・」 差し出した舌が触れる、太腿から脹脛に掛けて伸びる・・・傷口。 その血を味わうように、ゆっくり、ゆっくり、嘗め取って。 ・・・鉄の味が・・・甘い。 「ん・・・ぁ、・・・バ・・・カっ」 太過ぎず、細過ぎず。でもスレンダーで真っ直ぐ。 ・・・弾力があって、キレイで、肌理の整った・・・強烈な脚線美。 俺をそそる、すんごくセクシーな岩城さんの・・・左足。 緑溢れる春の日差しは、やっぱりキラキラと、俺達に降り注いでくる。 谷間に清流が流れる、清々しい・・・音。 そんな中で、小岩に腰掛け、裂けた法衣からナマの片足が覗く光景は、岩城さんの咽喉から漏れた甘い声と相俟って、俺の股間を直撃していた。 ・・・ダ・・・ダメ・・・俺。 意識しちゃったら、こんなに明るくたって、興奮しちゃって・・・。 ハァハァ・・・。 それでも努めて平静を装い、 「・・・化膿しないように・・・だよ?我慢、して?」 消毒なのか、愛撫なのか、もうきっとそんなのバレバレなんだろうけど、チビが見てようが、俺の知ったこっちゃない。 「この体に触れていいのは、俺だけ・・・。俺の、なんだから、俺が治す・・・ 」 「・・・か・・・と・・・・っ」 囁きながら、優しく、優しく・・・何度も何度も舌を這わせる・・・。 時折唇で血を吸い上げると、更に岩城さんの体が強張って、息が上がるのが解った。 「・・・やめ・・・チ・・ビ・・・が・・・」 俺の腰帯を掴んで、背中に顔を埋めて、イヤイヤしながらも、声が上ずるのが、また堪らない! ああ、もうどうしようっっっ。このまま、ここで、でも、いいかな!? 俺が下なら、岩城さんも痛くないかな!? そんなことばかり考えながらの足舐めは、どんどんエスカレートして、俺はとうとう、絶対ヤバくなっているだろう、岩城さんの腿の付け根に手を・・・。 「うっえぇぇぇぇぇぇぇぇええ〜〜〜んんっ!!」 と、そこで響き渡るチビの、お約束な大絶叫。 こ、こんな時に、く、くそチビ・・・っ!!! 「お師匠様、お師匠様、ごめんなさーーいっ。うぇぇぇぇぇぇぇえんっ!」 泣き叫ぶチビに、一気に理性の戻った岩城さんは、顔を上げて、俺を突き飛ばそうとする。 「は、離せっ!香藤!」 「えええ!?」 「もう、いい!血も止まった。とにかく離せ!チビが・・・」 「お、俺のは・・・!?俺の分身にはもう、思い切り血が集結してんのに〜!?」 「・・・なっ!!」 「岩城さんだって、抜かなくていいの?足が平気だって、こっちで立てないんじゃないの?」 「こ・・・こ・・・この・・・、バカーーーっ!!」 スケベ心は身を滅ぼす。 解っていた筈なのに、愚かな俺は、またも三蔵岩城さんの逆鱗に触れ、気付いた瞬間には、岩城さんの両手は印字を結んでいた。 「・・・・ひぃ・・・っ」 「※*★*▲■□§★●◎○→※▽▲○●◇」 「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 岩城さんの呪文と共に、頭の輪は一気に絞まり出し、半年振りの緊縛呪!!脳内直撃、神経攻撃、き、き、禁固経〜!! 「・・・・いっ、痛いーーーっ、痛いっ、痛いっ!!やめて、やめてぇ〜っ!! 」 イヤがオウにも、岩城さんの体から引き剥がされて、俺は頭を抑えて、蹲る。 「この、バカっ!頭で足りなきゃ、望み通り、その自制のない下肢にも淫呪喰らわす!」 「い、岩城さんが誘ったんじゃんっ!!足で感じちゃって、あんあんだったの、岩城さんの敏感エッチな体じゃん!うぎゃっ、痛ーーーいっ!!」 「・・・・こ、の・・・、エロ猿・・・っ。言うにことかいて・・・っ」 「痛いっ、痛いっ、痛いーーーーっ、やめて、やめてーーーっ!」 「※*★*▲■□§★●◎○→※▽▲○●◇」 「ひぎゃぁぁぁぁ!!痛い、痛い、た、た、助けてーーー、助けてーーーっ、岩城さーーーんっ!!」 ********** 「香藤さん?香藤さん?」 ・・・と、そこでパチリと目を覚ました俺は、がばっと起き上がった拍子にリアシートの掴みに後頭部をがつん!前回同様、い・・・痛い。 「だ、大丈夫ですか?香藤さんっっ?」 「う・・・ぐ・・・っ」 後頭部を抑えて、辺りを見回す。く・・・車の中?あ、あれ? ああ、そうだ・・・仕事、移動中、だったっけ・・・。 ハァ・・・、よかった・・・。 「あれ?なんで自宅?金子さん」 停止している車は自宅前。 やっとリアルに返っても状況が飲み込めず、運転席の金子さんに尋ねる。 「移動中、次の撮影延期して欲しいって連絡入ったんですよ。今日のスケジュールはそれで終わりでしたし、香藤さんお疲れのようでしたし・・・、岩城さんもうご自宅だって聞いたのでこちらに回しました。・・・いけませんでしたか?」 「あ、ありがとう!金子さん!大好き!」 さすが、俺のマネージャー!!最高に気が利いてる!! 「お疲れ様でした。また明日。香藤さん」 「お疲れ様!!」 俺はそそくさと車を降りて、玄関に飛び込む。 「岩城さーーーん!!」 靴を脱ぐのももどかしい程、気持ちが逸る。岩城さん、岩城さん、岩城さん! そして、飛び込んだリビングには岩城さんはいなくて・・・また叫ぶ。 「岩城さん!!どこ〜!?」 キョロキョロバタバタと、俺が1階を駆けずり回っていると、 「お帰り。香藤・・・なんだ?大声出して・・・」 バスルームからローブ姿の岩城さん。 お風呂上りみたいで、濡れた髪をタオルで拭ってる。 「い、い、岩城さーーーーんっ!!!」 俺はそのまま岩城さんに思い切り、抱きついた。 「か・・・香藤?」 「会いたかったの!会いたかったの!すんごく、すんごく、会いたかったの!岩城さん!」 「お・・・おい・・・っ」 「愛してる!!愛してる!!」 夢の余韻を引き摺りつつも、やっぱり俺の岩城さんはこの岩城さん! 俺にぎゅうぎゅうに抱き締められて、困惑しながらも、半べそな俺に気付いて、そろそろと抱き返してくれた。 「・・・か、香藤、おい・・・、こら・・・」 しばらくその体の感触にリアルを実感し、喜びを噛み締めてたんだけど。 やっぱり急に不安になって。 「・・・足、見せて?」 「はぁ・・・っ!?」 俺は強引に岩城さんのローブをめくって、左足を確かめる。 「い、いきなりなんだ、バカ・・・っ!」 「・・・よかったぁ。・・・無事だ・・・」 しゃがんで左足を抱き締め、その腿に頬擦りし出した俺を、また呆れたように見下ろして。 「だから、こら、どうしたんだって?香藤?」 俺は岩城さんの顔を見上げて、そのまま岩城さんの足首に、夢で昂ぶったままの俺の股間、擦りつけ、 「・・・したい・・・今すぐ。・・・ダメ?岩城さん?」 って、言った。 「・・・な・・・っ、帰る早々・・・何いきなり・・・」 「・・・ダメ・・・?」 うぐぐ・・・って顔しながらも・・・俺のオネダリに岩城さん、しゃがんだ俺を見つめて。 足首から伝わる俺のに、哀れを感じたのか、ほんの少し考えて。 「・・・ここじゃ・・・イヤだぞ?」 って、言ってくれた。 「・・・廊下でなんか・・・ごめんだ」 「うん!」 岩城さん、岩城さん、岩城さん・・・・。 ああ、やっぱり、本物がいいよっ! どんなにそっくりそのままで、お色気全開だって、俺の岩城さんはこの、岩城さんなんだから!前回同様、俺はまた、リアルに感謝! ただいま、愛してるよ!?俺の岩城さん! 俺はそのまま岩城さんを抱き上げて、階段駆け上がって、寝室へ直行した。 ********** それから・・・。 岩城さんで満たされた幸せいっぱいのその夜、岩城さんに俺が見た夢の話をすると、 「・・・そのクローンだけは、俺もちょっと・・・会いたかった・・・な?」 だって、さ。やっぱり、愛されてるんだよね?俺・・・。 おわり 2005/03/13 にゃにゃ(イラスト:ころころ) |
★花園に連動しておりますv
にゃにゃさんところころさんの合作でしたv
三蔵岩城さん・・・そりゃあもう綺麗で綺麗でたまらんでしょうねえ!
そんな綺麗な人が乱れるからこそ・・・ごほごほっv 香藤くんも可愛い
花園に連動しているお話です☆
お腹いっぱいいただきましたv
おふたりさま、ありがとうございますv