あけぼの

やっぱり寝つきが悪い。

仕事で疲れてるはずなのに、眼が冴えて仕方がない。

きっとそれは隣に愛しい人がいないせいだろう。

久しぶりのロケの仕事。

しばらく帰れないのもわかっていた。

お互いプロなんだからそれくらいは割り切ってるはずだった。

なのに・・・。

会いたくて仕方がない。

 

窓の外には漆黒の闇。

まるで黒くしなやかな髪の色のようだ。

何の気なしに見つめていると、一瞬、すべての闇が沈黙した。

「なんだ・・・?」

黒から濃紺へと徐々に淡い光りが混じりだしたのを合図に、

星々は煌めきを薄め、東の空にほのかに薄紅色の雲がかかる・・。

凛とした澄み渡った空気の中、少しづつ蕾が膨らむように

辺りに色がつきはじめる。

それはやがて大輪の華が咲き誇るような朝日へとかわる。

その美しい情景に香藤は愛しい人へ想いを馳せた。

「岩城さん・・・」

 


まどろみの中でお前に呼ばれた気がして目が覚めた。

恋しくて・・俺の手がいるはずのない姿を求め

シーツの上を漂いだす。

仕事なのだから、会えなくても仕方がない。

そんなことは十分すぎるほどわかってる。

同じ道を歩むと決めた以上、互いに極めていきたい。

なのに・・・

せつなくて仕方がない。

 

窓の外がほのかに明るい。

陽が昇り夜が明けるのであろう。

夜のしじまを打ち破り、暖かな光りが輝きだす。

オレンジは香藤の色。

誰にでも好かれる人懐っこい笑顔が思い浮かぶ。

お前が傍にいるだけで太陽に照らされてるように清清しい。

ふいに、枕元のケイタイがメールが来たことを知らせる。

「香藤」の文字に思わず口元が緩む。

きっとお前も俺の事を思っていてくれるのだろう。

たとえ離れていても気持ちはひとつなんだなと、

優しく甘いぬくもりが胸に広がった。




2005・4 ゆめつき 




ステキなイラストと文で綴られた岩城さんのあけぼの・・・
いつどんなときでも互いを感じていたい
そんな気持ちがとってもステキで
私達も幸せを貰うんですよねv
優しい時間が流れているようです

ゆめつきさん、ありがとうございますv