油断は禁物?
最近の岩城さんはガードが固い。 正確に言うと寝室以外でのガードが固い。 原因は…俺。 この前「セックスで全室制覇を狙ってる。」なんて言っちゃったから。 俺の部屋には呼んでも入ってきてくれないし、掃除のために客室に入った時も中から鍵をかけてる。 とにかく今までセックスをしたことのない場所では警戒しまくりなんだ。 でも俺は諦めるつもりはない。 男が一度決めたことは貫かなきゃね。 ということで俺はこの状況を打破するために作戦を考えた。 「ねえ、岩城さん来月の俺の誕生日プレゼントは何もいらないから一日なんでも俺の言うこと聞いてよ。」 一年で一番甘やかしてもらえるはずの日だから大丈夫と思っていたら岩城さんの答えはつれなかった。 「いやだ。」 「なんでっ!?岩城さんの誕生日には俺が一日言うこと聞いたじゃん!」 納得できなくて抗議する俺に岩城さんは冷たい視線を向けてきた。 「俺は常識に外れるような事は言わなかっただろう。大体お前の考えてることなんてお見通しだ。どうせベランダでHしたいとか言うんだろう。」 「……」 思い切り図星を突かれて俺は言葉を失った。 やっぱり俺の考えることって分かり易過ぎるのかなぁ。 色々策を練っても岩城さんはベランダHを許してくれそうにない。 こうなったら少々強引な作戦に出るしかない。 俺の誕生日当日、オフのはずの岩城さんは家にいなかった。 泊まりのロケが天候が悪くて予定通り終わらなかったんだ。 夜中に電話で「誕生日おめでとう。」って言ってくれて嬉しかったけど離れていることを実感してちょっと悲しくなった。 最近は清水さんも金子さんも何も言わなくてもそれぞれの誕生日はオフにしてくれる。 二人とも本当に有能なマネージャーだと思う。 俺も岩城さんもいつも感謝してるんだ。 でも今回のような場合はいくら清水さんが有能でもどうしようもないよね。 本当なら朝からべったり岩城さんに甘えるはずだったのに一人で過ごすリビングは広すぎる。 俺は寂しさを紛らわすために朝からやたら張り切って掃除をした。 家中をピカピカにして一息ついたのはお昼を過ぎてからだった。 さすがに少し疲れてソファに身体を投げ出す。 あ〜あ、何で誕生日に一人で掃除してなきゃいけないんだ。 それに今日なら多少馬鹿をしても大目に見てもらえそうだからあの作戦を実行しようと思ってたのに。 岩城さんが帰って来ないんじゃ延期するしかないと思っていたら電話が鳴った。 「もしもし。」 「香藤、俺だ。ロケ今終わったから。清水さんが切符を手配してくれたから夕方には帰れると思う。」 「本当。待ってるから早く帰って来てね。」 「ああ、分かった。」 電話が切れても俺は暫く受話器を握ったまま喜びを噛み締めていた。 「やったー。早速準備しなくっちゃ。あっ、その前に腹ごしらえ。腹が減っては戦ができぬって言うしね。」 俺は宅配ピザで食事を済ませると作戦のための準備を始めた。 夕方、待ち焦がれた岩城さんが帰ってきた。 「岩城さん、お帰りなさい。」 「ただいま。」 「疲れたでしょ?夕食までまだ時間あるしお風呂沸かしてあるから入って身体休めて。」 「ありがとう。ずいぶん準備がいいんだな。時間もあるしそうさせてもらうか。」 岩城さんは俺の勧めに従って荷物を片付けるとお風呂に入った。 夕食の後デザートに岩城さんを食べちゃうつもりの俺の作戦とは気づかずに。 ちなみに今日の夕食は岩城さんが頼んでくれたケータリングのディナーだ。 俺の誕生日に俺に作らせるのは申し訳ないって岩城さんが言ったから。 ディナーにはワインがつき物。 いっぱい飲ませて酔わせちゃおうっと。 でもまずはお風呂から上がってきた岩城さんにべったり張り付いて甘える。 「岩城さん、寂しかったよ。」 岩城さんは「何子供みたいなこと言ってんだ。」なんて言いながらも優しく俺の髪を撫でてくれた。 俺って本当に幸せものなんだと実感する。 夜になって届いたケータリングを二人でセッティングして夕食を始める。 乾杯するのに岩城さんが取り出したのは俺の生まれた年のワインだった。 「お前がこのワインのように深みのある役者になれるように。誕生日おめでとう香藤。」 「岩城さんありがとう。俺頑張るからね。」 俺は密かな目的にためにせっせと岩城さんのグラスにワインを注いだ。 食事が終わってソファに移動した頃には岩城さんはいい感じに酔っていた。 酔いのせいでほんのり頬が染まり目が潤んでる姿はなんとも色っぽい。 俺は岩城さんを抱き寄せ唇を塞いだ。 そしてそのままソファに押し倒す。 「んふっ…ちょっと待て…香藤。」 「だめ。待てない。俺もう止まらないよ。」 目的のためにも止まるわけにはいかないんだ。 いつもより焦らして激しく岩城さんを攻める。 絶頂を迎えた岩城さんはくったりしていた。 よしここまでは作戦通りだ。 俺は岩城さんを抱き上げて寝室に向かった。 寝室に入った俺は岩城さんを抱いたままベランダに向かう。 そこには予めエアーベッドを用意しておいた。 シーツの代わりに大判のタオルケットを掛けてあるし準備はバッチリだ。 夜風に当たった岩城さんが覚醒した。 「おい、香藤!お前何するつもりだ!?」 「何って、決まってるじゃん。」 俺は岩城さんをそっとエアーベッドの上に下ろした。 「冗談じゃない。こんなとこでできるか!恥ずかしい!!」 怒鳴って起き上がろうとする岩城さんをしっかり押さえ込む。 「離せっ!」 「もう岩城さん諦めてよ。30代の岩城さんが20代の俺に力で適う訳ないでしょ?それに大きな声出すとご近所に聞こえちゃうよ。」 最後の言葉が効いたのか岩城さんはおとなしくなった。 「岩城さんごめんね。でも今日は俺の誕生日だから大目に見て?」 俺が深いキスを与えると岩城さんの身体から力が抜ける。 一度絶頂を迎えた身体は再び熱くなるのに時間は掛からなかった。 ≪このシーンの詳しい記述は筆者の力不足により割愛させていただきます。m(_ _)m≫ ≪皆様の素晴らしい萌えをフルに生かしてご自由にご想像くださいませ。(;^_^A ≫ 念願のベランダHを達成した後「ごめん俺も疲れたから下まで連れてってあげらんない。」と言って2階のお風呂でのHにも成功した。 本当はそのまま客室でもしたかったけど岩城さんの体力を考えて諦めた。 次の日俺は後ろ髪を引かれる思いで午前中オフの岩城さんを残して仕事に出た。 ちなみに岩城さんは俺が出掛ける時もまだベッドの中にいた。 当然すこぶる不機嫌で一言も口を利いてくれなかった。 やっぱりちょっといや、かなり無理させちゃったよなぁ。 そんな反省モードの俺に岩城さんからメールが届いた。 もしかして許してくれたのかもと期待した俺は甘かった。 <お前が20代だと威張っていられるのもあと364日だ。せいぜい名残を惜しむんだな。> 岩城さんが怒ってたのはベランダやお風呂で強引にHしたことだけじゃなかったらしい。 岩城さんに年のこと言うと怒るのは分かりきってたのに。 作戦が上手くいったことが嬉しくて油断して岩城さんの地雷を踏んでしまった。 俺ってやっぱり馬鹿? あと364日で落ち着いた大人の男になれるかのなぁ。 終わり 04.5.21 グレペン |