それぞれの気持ち



―岩城 京介―

2人の写真集の発売日が決まった・・・・・香藤の誕生日だ。

浮かれまくって、だらしない顔をしているあいつを見る度に、怒鳴りたくなるのだが、あいつの気持ちも解る。

雑誌のインタビューに発売日は言わなくとも、香藤が出るらしいとの言葉が載っただけで、本屋に問い合わせがすごいらしい。

『予定より少し多い数字に発行部数がなりそうです・・・・・』と、清水さんに聞かされた。

しかし、男二人の写真集買って何が良いのだろう?少し疑問だが・・・・・あの写真が載るのだぞ。

プライベートもプライベートの写真。

海岸線で二人とも素裸・・・・・






―香藤 洋二―

岩城さんの顔が赤くなっている・・・・・写真集の事聞いたんだろうな・・・・・

最近、なんとなく岩城さんが考えている事が、解る気がする。

自惚れ?かも知れないけどそう思ってもいいよね。

俺の何気ない一言・・・・・『写真集のオファーが来ていてね。それも俺と岩城さんになんだよ。

発売日はまだ決まってないけど、この間、写真撮りに行ってきたんですよ』最近の仕事の話、そんな話題を口にした。

その雑誌を読んだ人たちからの反響がすごいって・・・・・止められてないから、口を滑らした言葉がこんなにすごい事になって改めて知らされた。

そして、始めに予定していた発行部数が大幅に増やされたらしい。

でも、あの時の写真が撮られていたなんて・・・・・色稿を見せられて驚いた。

俺、マジで写真集、買占めに走ろうかな・・・・・





―岩城 京介―

写真集の写真は撮影したカメラマンの選んだ写真を、出版社が更に選んでページに収めていくらしい。

という事は、あの写真はカメラマンと出版社の社員の間で確認された・・・・・はずなのに、なんで外してくれなかったんだ?

・・・・・本気で疑問に思う。

そう言えばあのカメラマンはTVで見られない俺を撮りたいって・・・・・・(真っ赤)

香藤と2人で居るときの、リラックスな俺を・・・・・あいつと居る時の俺はどんな顔しているのだろうか?

清水さんが表情豊かになったと言った事にも関係あるのだろうか・・・・・

そう思うと、なんとなく写真集を見てみたくなった。

そう言えば、香藤も言っていたな・・・・・

自分しか知らない、俺を見せる事になるってな。

だったら、あいつは解っているのだろうか?俺しか知らない、あいつを他の人に見られるかも知れない俺の気持ちは・・・・・

あいつの気持ちと同じなのだろうか?

でも、この事は・・・・・香藤に今度の事は解られたら困る・・・・・付け上がらせるだけだ






―香藤 洋二―

岩城さんが何かを悩んでいる。

今度は何を考えているのか解らない・・・・・本気で考えていると表情が無くなるから、解らなくなる・・・・・

こんな時は、ジレンマに陥りたくなる。

岩城さんを守りたいんだけど、その事に予想が立てられないからだ・・・・・

でも、こんな時に無理に聞き出せば、余計に意地になりそうだし・・・・・どうにかして聞きだせるきっかけを掴まないといけない。

事の発端は、写真集・・・・・それから先に何を考えたんだろう?

う〜〜〜〜〜〜ん

やっぱり、見せたいのと見せたくないのが混じっているな・・・・・俺は‥‥‥

って、俺のことじゃないだろう。岩城さんが何を考えているかだよ。

このままだったら、俺、暴れるぞ!!






岩城さん、何を悩んでる?」

「香藤、お前こそ何をそんなに考え込んでんだ?」

「えっ、俺はそんなにたいした事じゃないよ。写真集の事でね。こんな反響があるなんて思わなかったな〜〜〜ってね」

あれ?岩城さん黙り込んだ?どうしたんだろう?

「香藤、今夜の食事はどうする気だ?作るのか?」

話題を摩り替えた・・・・・うぅ〜〜〜ますます解らなくなったぞ?

そして、困惑する香藤の誕生日前夜はふけていくのだった。 







6月9日  PM0:30

「さっきから何を見つめてるの?」

香藤が笑顔で聞き返す。

「ああ、お前の言葉をかみ締めていた。俺しか知らないお前を写真集で他人に見せたく無い気持ちが、ここに来て俺の中に出てきてる」

岩城が苦笑しながら言い返すと、香藤は思わず抱きしめた。

「だったら、これからも俺たち2人だけしか知らない表情を見せて、岩城さん」

                     ―――了―――

                                     2004・4・22 sasa

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写真集を絡めてのやりとり・・・・
ふたりの気持ちが丁寧に書かれていて心が温かくなりますねv
きっと写真集はふたりの愛の形の1つ・・・
ふたりにしか分からないものが溢れているのかもv
続きは花園で☆
sasaさん、素敵なお話ありがとうございますv