ちいさな嫉妬(香藤)
岩城と香藤はここ最近休みも無く、何時もの如く忙殺されそうな勢いで、仕事に追われている。 お互いの顔さえあわせる、時間もなかなか見つけられなくて…。 番組での撮影や特番のロケ撮影、雑誌の取材などで忙しく。 自宅で寝る事さえままならない日々に……。 わずかな休憩時間を食事や次の打ち合わせなどの合間に、岩城の携帯にメール送るが、なかなか岩城からのメールは貰えなくて、まして岩城の声さえ何時聞いたのかさえ分らなくて。 一つの仕事が終わり、次の現場に向かう車のバックシートに身を沈めながら、 ついに、香藤は金子に言い寄った。 「ねぇ!金子さん、俺…何時、休みが取れるの?たとえ半日でも何とかならないかな―ぁ」 「香藤さん、解っていると思いますが…後しばらくは、 如何する事もできなくてすみません」 金子は、軽い溜息を香藤に分からない様についた。 車の運転をしながら、…ここ4ヶ月近くもまともな、休みらしい休みは無いのも判ってはいるものの、余りにも情けない顔する。 香藤はまだ何かぶつぶつとい言う姿に、金子はただ苦笑いをすることしか出来ない。香藤の願いも虚しく次の現場へと車を走らせた。 この秋に放映が決まったドラマに、岩城は刑事役で出演する。 それの記者会見もこの場所で行われる事になっていた。 早朝でのロケ現場。都内に在る西東京最大級の教会である。 岩城は息を切らしながらも、とてもスマートに教会の階段を駆け上がる。 「は―い、カット!!」 監督が声を張り上げた。満足そうに微笑む、カメラ3台での撮影シーンだつた。 「岩城くん、いい表情が撮れたよ。この後も宜しく。」 「はい、有難うございます。」 頭を下げ掛けた時に、アシスタントから、声がかかった。 「岩城さん、お疲れさまでした、この後は午後7時からですので、しばらくの間ゆっくりして下さい、其の後はノンストップですから、宜しくお願いします。」 「あっ、分かりました。お先に休憩にはいります。お疲れ様。」 マネージャーの清水が、岩城の側まで歩み寄りながらタオルを手渡しながら。 「岩城さん、大丈夫ですか?控え室に行かれますか?それとも…5時間ほど休憩が出来ますね」 差し出された、タオルを受け取りながら岩城は答える。 「ええ、大丈夫ですよ、この頃、香藤の真似をして時間のある時に軽いランニングをしていましたから。」 と言う岩城を頷きながら清水は聞いていた。 「それに、台本も、もう一度確認をして置きたいので…」 岩城の仕事に対する厳しさを誰よりも、判っている清水が、 「ええ、そうですかでは、私はこの後一度事務所に連絡をしてきますので」 この話が来たとき、余りにも走ったり、少し高い所から飛び降りたりと、かなりハードな撮影だが、とても遣り甲斐があるからと引受けたのが、岩城だった、自主トレーニングをこの1月間ほど、がんばってきたのだった。 刑事役、家庭を顧みず仕事に使命感を抱きかかえた役だ。 ここでの撮影は犯人を捕まえたり、娘が結婚式をするシーンも含まれている。 若い時の役から五十才近くまでの役だ、幅が広いので岩城もかなり、 神経を使う役どころだ。 岩城と清水が、教会の庭園を歩いていると、突然騒がしく大きな声が聞こえた。 「何に―!! 怪我した?だと―っ!!」 「ええ、此処に来る途中に、顔に怪我をしたと言って来たのは、彼のマネージャです。」 ばたばたと駆け回る、スタッフ達が準備をしながらも何とか、モデルを探しに各方面に携帯を鳴らしたりと、慌しく次のモデルをと。 岩城は、なでかとっ捕まり?岩城の空き時間を拝み倒されたのだ。 でモデルの代わりを務めていた。 この教会庭園や室内を借りて(勿論岩城達の撮影に差し支え無い様にと。) 来春のウエディングドレスやタキシードにイブニングドレス、オーマルスーツやフラワーガールのドレスに フラワーボーイー達のおしゃれな洋服や大胆なデザインの服装だ。 有名デザイナー数名の作品の撮影が行われていた。 この教会のイメージアップもかねている、宣伝効果もばっぐんだ。 お昼を過ぎた頃からキッズ達の撮影が行われていた。 其の中に、微かに見覚えのある子供の顔があった。 岩城はしばし其の子を見詰ていた、岩城の方に、3〜5歳の子供達ともう少し大きい少年達にまだり駆け抜けて来た。 岩城が見詰ていた、その男の子が押し倒された、フワフワ栗色の髪をしている、男の子供が膝を打ちつけて今にも泣きそうな顔をしている。 慌てて近寄り抱き起こした、岩城は子供をあやす様にして。 「大丈夫かい?偉いね、泣かないで、ママを探そうね―」 優しい声で話しかけた。 「ママ―?ママ―!!」 その子供は少し戸惑いながら、首を回し母親を呼び探している。 「ママ―?ママ―どこ―に、いるの?」 「洋介―!!」 聞き憶えのある声に岩城は、えっ?と思い後ろを振り返ると。 「洋介どうしたの?あら、岩城さん、お久しぶりです。ほら、おいで」 何でここに、香藤が?でも声は女性の声だと少し混乱しかけた岩城は、洋子さん?と気が付いた。岩城はつくづく、よく似た兄妹だと思う。 岩城に抱かれていた、洋介は母親に両手を広げ差し出しす。 洋子も、吾が子に手を差し伸べ抱き寄せながら、岩城に頭を下げる。 側に居た清水が気を利かせ、 「ここでは何ですから、お時間があれば岩城さんと、ご一緒に如何でしょうか?」 岩城の控え室に案内された。 岩城の控え室では、清水がそれどれに飲み物を手渡していた。 それを受け取りつつ、岩城は気になっていたことを洋子に、尋ねていた。 「洋子さん、ところで今日如何したの?こんな場所で…遇うなんて」 「前に洋介を連れて、買い物に行った時に『子供服のモデルを是非に』と言われ、お断りをしたのですが。そこを何とかと頼まれて今日ここに来たの」 これまでの、経緯を説明をする洋子だった。 岩城も清水も洋介の愛らしい姿を見詰め納得した。 清水にも可愛い盛りの愛娘有紀がいるから、洋子の気持ちが良く分かる。 岩城も、優しい顔をみせる母親達の会話に眼を細め心が和む、一時を過した。清水は腕時計に眼をやり岩城に、 「もうそろそろ時間なので、次の衣装に着替えなければ」 清水の言葉で動き出す。洋介は岩城のことを気に入って、なかなか離れない。 そんな洋介に、岩城は抱き抱えたまま、控え室を後にする。洋子は申し訳なさそうな顔で岩城に謝る。 「すみません、洋介が甘えてしまて」 「洋子さん、気にしないで、俺はこんなに懐いてくれる洋介くんが可愛いくて、嬉しいから」 岩城は洋介を通して、香藤の子供の頃に思いを馳せた。 岩城は洋介を抱いたまま歩いていると、ブランドファション誌のカメラマンに出くわし、からかう様に、 「岩城くんどうしたの?その可愛い子供、もしかして隠し子?…」 岩城は、慌てて何でこんな所に隠し子なんて、第一俺に子供なんて… と顔をピクピクさせながら否定をする岩城だった。 「ち、違います!!。この子は香藤の甥っ子です!!」 カメラマンは、香籐の甥子だと分かりいい事を思いついたと、岩城に話を持ち掛ける。 「ねえ、岩城くん!その洋介くんと、一緒の所を一枚撮らせて貰えないかい?。雑誌の売り上げに、協力してもらう訳には行かないかなぁ〜」 急に話を振られて戸惑う、岩城と何がなんだか分からない洋子達だった。 そのブランドファション誌の表紙と最後を飾ることとになり岩城と洋介は、もう一度、教会の外庭で何枚か写真をとる事と成った。 洋介は可愛いブルーががった燕尾服に小さな両手に花籠を持って、はにかんでいる。岩城はタイトなフォーマルスーツに身を包んだ、 凛とした姿に、周りの人達は見惚れて立ち尽くす。 「それでは、岩城くん洋介くんを右肩に乗せる感じで」 次々にシャッターをきるフラッシュが光る。 だんだん眩しい光のも馴れ愛らしい笑顔が溢れていく洋介。 「ラスト一枚で終わるか。今度は岩城くん屈んで左膝を地面にけて、洋介くんと立たせ向かい合って」 岩城はそっと洋介を肩に乗せ、カメラ目線にあわせ、指示どうりに進められていく。 「お疲れ様。いいのが出来上がるよ」 意味ありげな顔で挨拶をされ、岩城は小首を捻る。 「お疲れ様でした」 お互いに挨拶を交わした。無事に仕事が終わったとたんに、肩の力が抜ける。洋子も緊張していたのか、優しい笑顔がこぼれた。 洋介も洋子抱かれ疲れたのか、うつらうつらしはじめた。 清水が洋子に、 「洋子さん、お疲れになったでしょう?。お送りしますが」 「いいえ、清水さん気を使わないで、車を置いていますから、大丈夫です。岩城さん、清水さん今日は本当に有難うございました」と頭を下げる洋子に岩城は、 「洋子さん気をつけて、旦那さんに宜しく今度ゆっくり家にも遊びに来て下さい」 それから、約1ヶ月後、早くも来春の先取りと銘打ったブライダル誌が発売された。 その頃、岩城達の自宅のリビングでは、香藤がそのブライダル誌を手に。 「なんで――で、洋介が岩城さんと一緒なわ―けぇ」 ブライダル誌の表紙には、岩城が右肩に洋介を乗せて優しい微笑みを洋介に向けていた。さらにページを捲ると普段余り見せない岩城の顔の表情が何ともいえない位、良い雰囲気を醸し出していた。 よく似たポーズも幾つかあるが、その中の一枚が、香藤が目くじらを立てる元になている。 岩城が屈んで左膝に洋介乗せ真正面を向いている岩城と、岩城の横顔を見詰ている洋介が岩城の左頬に、口付けをしている様に見えるのと岩城も知らないうちに、洋介が僅かに振り向いた岩城に唇が触れた様に写されていた。香藤は大声で、岩城につかかる。 「何で?!こんなぁ〜〜〜の、あり?洋介のやつ――ッ!。お、俺の岩城さんに何てことを―!!」 岩城は呆れれはてて…。 「馬鹿か!お前は、甥っ子にやきもちを妬くな―!!、見っとも無い!」 「岩城さん、な〜んで黙っていたのさ―ぁ!!、この話俺訊いてないよ!!」 言いたくとも、お互い顔も見なければ、話しも出来なかったことは、香藤も判っていたはずだ。 岩城は掌を握り締め言い放つ。 「ここ数ヶ月間まともに俺達まともに顔をあわせる時間も無かっただろうが!!」 久し振りに、お互い夕方からゆっくり出来るので、夕飯も二人でと思い岩城は、簡単な食事を作り待っていたのだ。千切ったレタスと目玉焼きにざる蕎麦がテーブルに置かれていた。 なのに、香藤は帰るなり文句を言いはじめ、喚き散したのだ、岩城はうんざりして 「香藤もういいだろう!いい加減にして食べよう、伸びるぞ!」 「じゃあ、俺も後で頂いていい?。早く食べよう、お腹ペコペコだ」 「は〜〜〜あ?」 香藤は岩城の気の抜けた返事に脱力しながらも…まぁ良いさ、今夜はゆっくり岩城さんを啼かせるからと思いを巡らす。 そんな香藤の魂胆など知る由も無い岩城だ。 食事も終わり、お風呂から出てきた香藤が。 「岩城さん明日オフだよね?俺もオフだよ〜♪」 忙しくて気を緩めている暇など無かったから、久し振りの休みに、のんびり出来ると気を緩めていた岩城。何時もの岩城なら香藤の下心など判る筈だが流石に疲れが溜まっていたのか、岩城は無防備に答える。 「ああ一日、ゆっくり出来るな」 次の日、岩城はすこぶる不機嫌な顔でリビングのソファで新聞を読んでいる。 言わずと知れた事、昨夜、いや正確には、明け方まで香藤に散々啼かされ声も嗄れぐったりと果てるまで、香藤は岩城を放さないでいた。 そんな岩城が起き出したのは午後二時ごろだ。 「もう―いい加減に機嫌を直して―!!岩城さん」 「・・・・・・・・・」 「岩城さん、ごめんね無理させて、お詫びに美味しいコーヒーを淹れるから、許してね」 「・・・・・・・」 香藤は、機嫌の悪い岩城の為に、とびっきり美味しい珈琲を淹れ手渡す。 「はい、岩城さん、熱いから気をつけてね♪〜」 「・・・・・・」 岩城は姑息な手を使わなくてもと、思いつつ確かにこいつの淹れてくれる、珈琲は美味しいし香りもいい。香藤がブレンドした珈琲は何故か他で飲むよりも、はるかに美味しいのだ。 岩城は溜息を付きながらも、差し出されたカップを受け取りながら、香藤を上目遣いに睨む。香藤もかなりやり過ぎたと思ていたので。真剣に謝るかと思いきや。 「岩城さん、本当にご免なさい。体大丈夫?俺ついうれしくてサ〜〜〜♪だって岩城さん、超可愛いかったんだもん〜!」 はっきり言って、岩城は声を出すのも辛いし、腰も重いし、怒鳴る気力も無い。ただ、香藤に甘い顔をするのも、腹が立つから、無言でいたのだが・・・・ 何時までも続きそうな言葉に岩城はたまらず。 「もう、良いから、気にするな香籐」 香藤には、結局勝てない岩城だった。 「だから岩城さん、大好き愛してる〜〜ぅ」 言いながら抱きつき、素早く唇を重ねる、香藤の頭に、岩城拳骨のが落ちたのは語るまでも無い。 「い!! いたたたぁ――い痛いなぁ―も―岩城さん!!」 余りの痛さに、頭を抱えその場に屈みこみ、香藤は眼に涙を滲ませて叫ぶ。 「岩城さん!暴力反対!!、幾ら口で勝てないからて―ぇ!」 こいつは、懲りるってことを知らないのかと、岩城は岩城で頭が痛くなる。 おわり babamama |
babamamaさんの初投稿ですvありがとうございます!
きゃん、洋介くんになりたい!(こらこら)
撮影時の岩城さんは綺麗だったろうし
洋介くんは可愛かったでしょうねえv
見たいわ〜はふはふ(・・・あぶない人ですか?)
そしてそんな洋介くんに嫉妬してしまう香藤くんも可愛いですv
babamamaさん、可愛いお話ありがとうございますv