小春日和の1日





「ウサずきん、何処に行くんだい?」
歩いている岩城に村の者が声をかけてくる。
「うん、御使いなんだ。父さんに頼まれて、隣の森まで行くんだ」
岩城は元気良く答える。
その為に、昨日は村の外れに近い和佐の家に泊まったのだった。
香藤狼の喜びようが目に見えて嬉しく感じる岩城だった。
「気をつけてな‥‥‥」
にこやかな笑顔でそういわれるので、
「は〜〜〜い。行って来ます」
岩城も手を振り返して、笑顔で言い返した。

そんな様子を、少しはなれた所から見ている香藤狼がいた。
「ああ、そんなに笑顔振りまかないでよ‥‥‥岩城さん。・°°・(>(ェ)<)・°°・。」
思わず涙の出る香藤狼だった。
少し離れて後を付ける姿かまるでストーカーなのだが、香藤狼は佐和に頼まれて隠れて岩城を守る使命に燃えていた。
岩城は本当に律儀らしく、挨拶されると、ちゃんと返事を返す。年上の人々はホンワカとなり、同年代には好意を持たれ、年下からは慕われている‥‥‥香藤狼が見ても、それは解かるような「好きです」でも、岩城には気づいて無いらしい。
「ハァ‥‥‥岩城さん、純真すぎて‥‥‥ボケているからな‥‥‥でも、可愛い」
森の外れの先は、少し見晴らしの良い道を歩く。
香藤狼はその事を知っていたので、自分の耳と鼻を頼りにさらに離れて歩く事とした。



さて‥‥‥こちらは、元香藤狼が住んでいた森。
暇そうに寝転がっている人物に、声をかける人物がいた。
「暇そうだな〜〜〜宮坂君」
「小野塚‥‥‥この魔法使い何のようだ?」
声に見上げると、小野塚が中に浮いていた。
「ムカつくな‥‥‥」
宮坂はボソッと言い返す。
「どうしたんだ?俺が中を浮く事は良くやる事だろうに。そうキャンキャン吼えるなって」
小野塚はクスクス笑いながら、宮坂に言い返す。
「どうせ、お前みたいな魔法使いでも香藤みたいな狼でもないからな」
フンッと鼻息が聞こえてきそうな態度で言い返した。
「怒るなよ。なあ、香藤の所に行かないか?」
小野塚の誘いに宮坂は楽しそうに立ち上がると、シッポを大きく振るのだった。
「ああ、からかいに行こうぜ」
宮坂は楽しそうに言い返す。
「気は強いよな‥‥‥さすがは豆柴」
小野塚は楽しそうにクスクスと笑い呪文を唱えると、そこに絨毯が出てきた。
「なんだ?これ?」
宮坂が不思議そうに聞き返す。
「空飛ぶ絨毯だ。これなら、お前も落ちないだろう」
小野塚は言い返し、絨毯に宮坂を乗せると、自分もその後ろに乗り空に舞い上がらせた。
行先は勿論、香藤狼のところである。
「へへへっ、楽しみ」
宮坂は嬉しそうに言うと、絨毯に座った。
空の散歩を楽しいでると、急に宮坂が小野塚に絨毯を止めるように伝える。
「どうしたんだ?」
小野塚には気づかない香藤の匂いが、宮坂にはわかったらしい。
「あいつ、この近く居るぜ」
宮坂は鼻をクンクンさせながら言い返す。
「どうしたんだ?用事かな」その言葉に小野塚は嬉しそうに高度を落としていく。
「‥‥‥もう、一人‥‥‥この匂い知らないな‥‥‥」
頭を捻りながら、宮坂は言い返した。
「ふ〜〜〜ぅん、ウサずきんかな?」
その言葉に、小野塚は思い当たる人物を口にした。
「ああ、あの有名人」
宮坂はその言葉に反応して言い返した。
ウサずきんは結構有名人だったりする。
香藤は知らなかったのだが、住んでいる村の広報ポスターとかに出て、知らないうちにファンを造っていた。
ブロマイドも実は出ていたりする(o^-^o)香藤が知ったら、買占めそうだが‥‥‥
「何処がいいのか、良くわからないけどね。俺」
宮坂は言い返すと、
「それは、実物知らないせいもあるだろう」
『あの、香藤が惚れちゃったんだしな』
小野塚は心の中でそう思いつつ、答えた。


用事を済ませての帰り道
「ああ、これを佐和さんに持って帰ってくれないか?」
急に呼び止められて、振り返った。
「おばあさまに?」
岩城は聞き返すと、出された物を笑顔で受け取った。
「好きだろう?そのうち遊びに来てくれって言っておいてくれ」
「はい、じゃあ、ありがとうございました」
岩城は嬉しくて深々と頭を下げる。頭巾についている白いウサ耳がピョンと揺れる。
「気をつけてな」
最後に言い残し、手を振られる。



Illustration:ころころ


呼び止められた岩城は、再び帰ろうとして振り返った先に嬉しいものを見つけた。
必死に隠れているのだろうが、パタパタと動いている物‥‥‥大きいフサフサの柔らかい尻尾‥‥‥
「香藤‥‥‥」
驚いたのと、嬉しさで足音を忍ばせて近づくが、香藤にはその足音もバレバレであろうとシッポの動きで解かる。
クスッと岩城は微笑むと、その木の影を覗き込んだ。
「か・と・う」
「岩城さん、偶然だね」
香藤狼は言い返す。
「そうだね。これからおばあさまの家に戻るんだけど‥‥‥香藤はどうするの?」
岩城はニッコリ笑って聞き返した。
「うん、帰ろう。岩城さん」
香藤狼はそう言い返し、岩城に手渡された荷物を取ると、オズオズともう片手を取ると握った。
『うわ〜〜〜〜岩城さんのお手‥‥‥柔らかい(〃^ー^〃) テレテレ』
香藤狼は心の中でデレデレしつつ、暗くなる前に岩城を佐和の家まで送る為に、しっかりナイトを務めていた。


さて、そんな二人を空から見ている人がいた。
「うわ〜〜〜〜〜見てられない‥‥‥」
空の上から見ていた、宮坂が呟いた。
「信じられないだろ‥‥‥笑える」
小野塚は楽しそうに言い返す。
夕日が西に沈んでゆく。
その中をおててを繋いで帰りつく二人。
初恋の純愛映画を見ているようで、小野塚は楽しそうだが、宮坂は不満顔である。
対照的な二人をその場に残して、その日佐和の家まで二人は戻っていったのだった。

―――――了―――――
2005・4   sasa





sasaさんのウサずきんシリーズ第3弾ですv
そして今回はころころさんとのコラボになっています
キュートですね〜素敵ですね〜v
誰からも好かれる岩城さんに香藤狼は気が気でない様子が微笑ましくってv
隠れているのに尻尾が動く・・・・!きゃあ、ツボです!可愛い!!
sasaさん、ころころさん可愛いお話と絵をありがとうございますv
癒しですね・・・・ほのぼのv