☆はじめに☆

この話には「ドーン」と言う名前の魔法使いが出てきます。
このドーンはオリジナルキャラではありません。
香藤くんの事務所の社長さんがモデルです。

香藤くんの事務所→サンライズプロ→サンライズ→日の出→夜明け→ドーン(dawn)

名前をつけないと書きにくかったので勝手に考えたんですが発想が貧困ですね;;
センスのない名前ですが新田先生の描かれたかっこいい社長さんをイメージしてお読み頂けるとありがたいです。

グレペン



シンデレラ? 6



ここは毎度おなじみのとある王国。
国王様の弟君、キョースケ様の治める領地は今日もいい天気です。


「ナギサさん、疲れたよ〜。ちょっと休ませて〜。」
ヨージは爽やかな天気に似つかわしくない疲れ切った声を出してソファーに倒れ込みました。
「情けないわねぇ。そんなことでキョースケ様をお守りできるの?」
ヨージはナギサの家の大掃除を手伝わされていたのでした。
「だってこんなことするのキクチの屋敷で召使してた時以来なんだもん。」
「しょうがないわね。じゃあちょっとお茶にしましょうか。」
「ヤッター。ありがと、ナギサさん。」


「ヨージ君今日は無理なお願い聞いてくれてありがとう。やっぱり男手があると助かるわ〜。」
「男手って・・・ナギサさんだって男じゃん。それにこんなの魔法使えば簡単じゃないの?」
「ダメよ。魔法をこんなことに使っちゃいけないのよ。人のためになることに使わなくちゃ。」
ヨージにもの言いたげな目で見られてナギサの視線がおよぎます。
「そりゃ、たまには私の楽しみのためにも使ってるけど。」
「たまには・・・ね。」
「そ、そうだわ。掃除が終わったらお礼に珍しい魔法の道具を見せてあげるわ。」
ナギサが話題を変えようとしているのはミエミエでしたがヨージはこれ以上のツッコミは無駄だと思い何も言いませんでした。


ナギサの魔法の道具部屋には珍しい物がいっぱいでした。
ヨージは目を輝かせて見て回りナギサに次々と質問しました。
「ナギサさんこれはどうやって使うの?これはどんなことができるの?」
ナギサも嬉しそうに丁寧に説明していきました。
「魔法使いでなくても使える道具もあるのよ。お礼にどれか貸してあげましょうか?」
「ホントに?いいの?」
「ええ、この辺りの物なら誰でも使えるわ。その分たいした力はないけどね。」
ナギサに指された辺りを見ていたヨージの目がある物に釘付けになりました。
「ナギサさん、これはどんな魔法が使えるの?」
ヨージが指した物を見てナギサは困った顔をしました。
「それは・・・ちょっとやめておいた方がいいわ。」
「なんで?危ない魔法とかじゃないんでしょ?」
「そうなんだけど。使い方を間違えるとある意味危険なのよ。」
そう言われてもヨージの心はもうそれに囚われてしまっていました。
ヨージの心を捕らえた物、それは黒いネコの耳を模った物でした。
それは本当に良くできていて今にもピクピク動き出しそうな気さえします。
ヨージの頭にはこれを着けたキョースケ様の姿が張り付いて離れないのでした。
「これって使い方難しいの?どんな魔法が使えるかだけでも教えてよ。」
再度問われてナギサはしぶしぶ説明を始めました。
「それはベッドの中で使うのよ。それを着けると凄く感じやすくなるの。」
それを聞いた途端ヨージの目がキラキラと輝きました。
「俺これにする。絶対これがいい。使い方間違えないように気をつけるからいいでしょ?」
おねだりモード全開の目で見られてナギサは困ってしまいました。
「本当に使い方ちゃんと守ってくれる?でないと本当に大変なことになるのよ。」
「うん。絶対守るから。でその使い方って?」
ナギサは諦めのため息をつきました。
「使い方は簡単よ。それを相手の頭に着けるだけ。ただし、その相手の同意が絶対条件なの。」
「なんだ、それだけなの?」
ヨージは特別な使い方があるのかと思っていたので拍子抜けしました。
「なんだじゃないわよ。これは凄く大事なことなのよ。もし無理に着けたりしたら・・・・。」
「・・・したら?」
ナギサの真剣な様子にヨージはゴクリとつばを飲み込みました。
「それが取れなくなって、やがてその人はネコになっちゃうのよ。」
「なんでそんなことになるの?」
想像もしていなかった答えにヨージはビックリしました。
「元々これは愛し合っている者同士の行為に刺激を与えるために作られたの。」
「それで?」
「男としては恋人が感じやすい方が嬉しいからこれを何度も使いたくなるでしょ?」
「それは当然だよね。」
「でも着けられる方はちょっとの刺激でも感じちゃうからいつも以上に疲れるのよ。」
「そうなんだ。」
「だから着けられる側の身体のことを考えて同意なしに着けると大変なことになるようにしてあるのよ。そうでもしないと男の方はブレーキかからないでしょ?」
「はい、そのとおりです。」
ヨージは時々キョースケ様に無理をさせてしまう自分を思って神妙に返事をしました。
これを着けて乱れるキョースケ様を想像すると確かにちょっとやそっとではブレーキがかかりそうにないと思いました。
「キョースケ様こういうの絶対嫌がりそうだから心配だわ。くれぐれも同意なしに使っちゃダメよ。」
「うん、分かってるよ。キョースケさんがネコになっちゃったら俺生きてけないもん。」
ヨージは真剣な顔でそう言うとネコ耳を持って帰っていきました。
「はぁ〜っ、ヨージ君はああ言ったけど心配だわ。やっぱり貸さない方がよかったかしら。」
覗き見してベッドの中のキョースケ様の壮絶な色っぽさを知っているナギサは不安になりました。


「ただいま〜。」
お城に帰ったヨージはキョースケ様の姿を見つけると駆け寄ってぎゅっと抱きしめました。
「お帰り、ヨージ。」
「もうナギサさん人使いが荒いから疲れちゃったよ。」
すりすり甘えるヨージの頭をキョースケ様はポンポンと優しく叩きました。
「お疲れさん。」
「ね、今夜頑張ってきたご褒美くれる?」
背の高さは変わらないのになぜか上目遣いでおねだりしてくるヨージがキョースケ様は可愛くて堪りません。
「ナギサさんのところで働いたご褒美を俺がやるのか?それに疲れてるんじゃなかったのか?」
「疲れててもこれは別だもん。それどころかこれは俺のエネルギー源だもん。ね、ダメ?」
「ご褒美なんかやらない。」
「え〜っ、そんな〜。」
ヨージの目があっという間にウルウルと潤みました。
キョースケ様はそんなヨージの頬に手を添えると零れかけた涙を唇で吸い取りました。
「バカだな。こんなことにいちいち理由なんかつけなくていいだろ。」
優しく微笑んでそう言われヨージは困ってしまいました。
ヨージがねだりたかったご褒美はネコ耳を着けて貰うことだったからです。
「そうだね。じゃいっぱいエネルギー補給させて。」
「ああ。」
ヨージは一度激しく愛して朦朧となったキョースケ様にねだろうと思ったのでした。


ベッドの中のキョースケ様はヨージの目論見どおり半ば意識を飛ばしかけていました。
さんざん焦らされた上になかなか開放を許して貰えなかったからです。
その様子を見てヨージはキョースケ様の耳元で囁きました。
「ね、キョースケさんお願いがあるんだけど。これを着けて欲しいんだ。」
差し出されたネコ耳をキョースケ様は焦点の合わない目でぼんやりと見ました。
「ね、いいでしょ?一回だけでいいから。」
ヨージの甘い声にキョースケ様はコクリと頷きました。


一度燃え上がった身体はただでも感じやすいのにネコ耳まで着けられたキョースケ様はちょっとした愛撫にも激しく乱れました。
ヨージが熱い迸りを叩きつけるとキョースケ様は気を失ってしまいました。
このままだとまた抱きたくなってしまうのでヨージはネコ耳を外そうとしました。
しかし簡単に取れるはずのそれは外れません。
もう少し力を入れてみましたがやっぱりダメです。
「なんで?ちゃんとキョースケさんの同意貰ったのに。」
焦ったヨージはぎゅっと力を入れて耳の部分を引っ張りました。
途端に「痛いっ!」とキョースケ様が目を覚ましました。
「ヨージなにするんだ痛いじゃないか。」
言葉と同時にネコ耳もピクピク動きヨージは呆然としてしまいました。
キョースケ様は痛むところを擦ろうとして頭に何か着いているのに気がつきました。
力の入らない身体を何とか動かして鏡の前に行くと頭には黒いネコ耳が着いていました。
「・・・・・何だこれ?」
触ってみると全身にぞくりとするような感覚が走りました。
取ろうとして恐る恐る引っ張ってみると軽い痛みを感じました。
「ヨージこれは何だ?俺はどうしたんだ?」
キョースケ様に問われヨージははっと我に返りました。
「どっどうしよ〜。」
ヨージは涙目になってキョースケ様に駆け寄るともう一度ネコ耳を引っ張りました。
「痛いっ!」
キョースケ様の声にヨージはビクッと手を離しました。
「どうしようって、これはお前のせいなのか?」
トーンの下がった声にヨージの背中に冷たい汗が流れました。
「ごめんなさい。それ今日のお礼にってナギサさんが貸してくれた魔法の道具なんだ。」
「魔法の道具?」
「うん・・その・・・それを着けると凄く感じやすくなるんだって。」
「なんだってそんな物。今の俺に不満なのか!?」
キョースケ様は怒りの論点がずれていることに気づいていませんでした。
「違うよ、そんなわけないでしょ!キョースケさん凄く色っぽくて俺いつも止まらなくなりそうなのに。」
「だったら何で?」
「だって・・・見た瞬間それを着けたキョースケさん見たくて堪らなくなっちゃったんだもん。」
あまりにもヨージらしいその理由にキョースケ様は大きなため息をつきました。
そしてとりあえずなぜ取れなくなってしまったかを知る方が先だと思いました。
「もうそんなことはどうでもいい。何で取れなくなったんだ。謝るからには理由に心当たりがあるんだろう?」
着ける同意を得た方法に後ろめたさのあるヨージはすぐには答えられませんでした。
「ナギサさんが危険な物をお前に貸すとは思えない。と言うことはお前の使い方に問題があったんじゃないのか?」
核心を突く質問にヨージは観念しました。
「ナギサさんに言われたのは相手の同意なしに着けると取れなくなるって。でも俺ちゃんとキョースケさんの同意貰ってから着けたんだよ。」
それを聞いたキョースケ様の眉とネコ耳がピクリと動きました。
「俺が同意した?いつ?全く記憶にないんだがな。」
キョースケ様の低い声にヨージは背筋が凍りそうな気がしました。
「・・・・・えっと一回いった後。「いい?」って訊いたらキョースケさん頷いてくれたよ。」
「お前最初からそれが目的であの時さんざん焦らしたんだな。そんな朦朧としてる時の返事で同意なんて言えるわけないだろう!」
言われてみればそれは当然のことでした。
そんな同意でいいのならブレーキの意味は全くないことになってしまいます。
キョースケ様のネコ耳姿を見たい思いばかりに囚われてそんなこともわからなかったヨージは情けなくなりました。
そしてもしこのまま取れなくてキョースケ様がネコになってしまったらと思うと自分を呪いたくなりました。
「ごめんなさい、ごめんなさい。」と繰り返しながらボロボロと涙を流し続けるヨージをキョースケ様はそっと抱き寄せました。
「そんなに泣くな。もうやってしまったことは仕方がない。朝になったらナギサさんに取る方法がないか訊いてみよう。」
そう慰めるキョースケ様もやはり不安が拭えるはずもなく二人は抱き合ったまま一睡もできず朝を迎えたのでした。


翌朝、心配でいてもたってもいられずお城にやって来たナギサはキョースケ様から話を聞いて頭を抱えました。
「ヨージ君あれほど念を押したのに何でそんなことしたのよ!」
ナギサに責められヨージはビクッと肩を震わせました。
「ナギサさん、これ以上ヨージを責めないでください。こいつ昨夜からずっと自分で自分を責め続けてるんですから。」
ナギサとしては怒り足りないと思いましたが憔悴しきったヨージと優しく抱き寄せるキョースケ様を見て何も言えなくなってしまいました。
「ナギサさん、この耳を取る方法何かないですか?」
「ありませんわ。私が作った物ならよかったんですけどそれは貰った物ですから。人がかけた魔法を解くのはとても難しいんです。」
それでもナギサは何か方法がないか一所懸命考えました。
「そうだわ。ひとつだけ方法がありますわ。」


「美人コンテスト!?」
キョースケ様とヨージは揃って目を丸くしました。
ネコ耳を取る唯一の方法が美人コンテストで優勝することだと言うのです。
「この国で一番の魔法使いドーン様が開く美人コンテストで優勝すると願いをひとつ叶えてくれるんです。」
「そのドーン様にならこのネコ耳取れるの?」
「断言はできないけど、誰がかけた魔法でもドーン様に解けないものはないって言うから。」
絶対ではないと分かってヨージの目が不安に揺れました。
キョースケ様はヨージの手に自分の手を重ねてきゅっと指を絡めました。
「ヨージ、ドーン様の力を信じよう。でもなぜ美人コンテストなんですか?ナギサさん。」
「コンテストをする前にはドーン様の力を頼って毎日たくさんの人が押しかけていたんです。それがあまりに多すぎてある日我慢できなくなったらしいんです。」
毎日たくさんの人に押しかけられたら、ヨージは自分でもいやになるだろうと思いました。
「それで一週間に一人、コンテストで優勝した者の願いだけ叶えることにしたんです。」
「毎週コンテストやってるの?でも美人しか願いを聞いて貰えないなんて不公平だよ。」
こんな時でも変わらない優しさを見せるヨージにナギサは微笑みました。
「大丈夫よ。美人って言っても容姿だけじゃなくて心の美しさもちゃんと見てくれるから。」
美人コンテストはその人がどれだけ本気で願いを叶えたいと思っているかを確かめるための名目に過ぎないのです。
「いいヨージ君、コンテストは毎週あるけど受けられるのは一人一回きりなの。それに来週じゃ手遅れになっちゃうわ。」
「大丈夫、絶対優勝します。願いの真剣さなら絶対誰にも負けないから。」


そしてコンテストの日、ヨージは町娘の格好でドーンの屋敷やってきました。
ヨージの他にもたくさんの女性が集まっていました。
なに不自由ない暮らしをしていそうな貴族の娘たちも何人かいました。
まず最初に叶えたい願いを申し出ます。
あまりにも身勝手な願いや人を不幸にする願い、死んだものを生き返らせて欲しいなどという願いはその時点で却下されてしまいます。
ヨージは「魔法の道具を間違って使ったために大切な家族にかかってしまった魔法を解いて欲しい。」と申し出て先へ進むことができました。


屋敷の中に入りコンテストを受けさせて貰えたのは20人ほどでした。
「では一次審査を始めます。皆さんにはこちらの窓を磨いて貰います。」
あまりに意外なことで参加者は皆言葉が出ませんでした。
「制限時間内に終わらなかった者はその時点で失格。私の満足のいく仕上がりになっていない者も失格です。」
それぞれに道具が渡されベルの音とともに磨き始めます。
貴族の娘たちは当然窓拭きなどしたことはないのでどうしていいのか分かりません。
ほとんどの貴族の娘たちは制限時間に間に合わず失格になってしまいました。
何とか時間内に終えた者も仕上がりチェックで落とされ貴族の娘は全員失格になってしまいました。
ヨージはキクチの屋敷でやらされていたので完璧な仕上がりでした。
「まさかキクチの屋敷で働いてたことが役に立つ日が来るとは思わなかったな。」


「さて、二次審査は皆さんに礼儀作法のお勉強をして貰います。」
礼儀作法の審査ではなく勉強と言われてまた皆ビックリです。
歩き方、お辞儀の仕方、食事のマナーからダンスまで厳しく教えられます。
一次審査で落とされた貴族の娘たちなら難なくできただろうことも町娘たちにはとても難しいことでした。
同じことを三度注意されるとその場で失格です。
ヨージは以前国王様に命じられて作法を徹底的に仕込まれていたことが幸いして何とか合格することができました。
「前の俺のマナーだったら男としてはオッケーだろうけど女性としては失格だったろうな。人生どんな経験がどこで役に立つか本当にわかんないもんだな。」
ヨージは人生で無駄な経験など何一つないのかもしれないとしみじみ思いました。


二次審査を通過できたのはヨージを含めて5人だけでした。
「ではこれが最後の審査です。ひとりずつ特技を披露して貰います。時間は5分。その後もう一度叶えたい願いを訴えなさい。」
ひとり目は雑巾の早縫い、二人目はイモの皮の早剥きを披露し、三番目がヨージの番でした。
女性らしい特技などあるはずもないヨージは悩んだ末、正直に「剣」と申告しました。
相手になってくれたのが男だったので女にしては強い程度にして負けようと思いました。
しかし、始めると相手がなかなかの腕の持ち主と分かりつい本気になってしまいました。
そして熱戦の末勝った瞬間「ヤッター!」と地声で叫んでしまいました。
しまったと思った時にはすでに遅く、責めるような視線がヨージに向けられていました。
恐る恐るドーンの方を見ると鋭い視線と目が合いました。
「お前は男なのか?」
「はい。」
「その格好はそういう趣味なのか?」
「いえ、違います。」
ヨージは正直に話すことにしました。
「女の振りをして騙したことは謝ります。すみませんでした。でも、俺どうしてもドーン様に願いを叶えて貰いたかったんです。」
ヨージはドーンの前で両膝を着いて必死に訴えました。
「コンテストを受けたいだけなら何も女装などしなくてもよかっただろうに。」
「へ?だって美人コンテストなんですよね?」
ヨージはドーンの言っている意味がよく分かりませんでした。
「そうだ。美人コンテストであって、美女コンテストとは言ってないだろう。だから男女どちらでも受けられるんだよ。」
「じゃあ俺はこんな格好する必要なかったってこと?でもコンテストの内容は女性向のことばかりでしたよ?」
「ああ、それは参加者が女ばかりだからだ。おそらく皆お前と同じ勘違いをしてるんだろう。」
ドーンの言葉を聞いたヨージは脱力してしまいました。
「お前名はなんと言う?」
「ヨージです。」
「では、今回の優勝者はヨージとする。まだ特技を披露してない者も残っているが女装までしてきたヨージの熱意に敵う者はいないだろう。」
参加者にはその言葉に異議を唱える者はいませんでした。


魔法を解いてもらうために近くで待っていたキョースケ様がドーンの屋敷にやってきました。
強い魔法を使うところはあまり人に見せたくないとヨージは別の部屋で待たされることになりました。
キョースケ様とナギサと三人になるとドーンは魔法のスティックを軽く振りました。
スティックから出た光がネコ耳を包むとポロッとキョースケ様の頭から落ちました。
あまりのあっけなさにキョースケ様は拍子抜けしてしまいました。
「こんな簡単に取れる物だったんですか?」
「まあ、元々の魔法が力が強い物ではないですからね。自分以外がかけた魔法を解くのは難しいのは確かですけど。」
ドーンがもう一度ネコ耳に向かってスティックを振るとさぁ〜っと消えてしまいました。
「ナギサこの程度の魔法も解けないようじゃあんたもまだまだだね。それに魔法の道具をそう簡単に人に貸すんじゃないよ。」
「はい、すみません。」
ナギサは小さくなって謝りました。
さすがのナギサもドーンには敵わないようです。
「でも魔法にかかったのがキョースケ様だと知っていれば無条件でお助けしましたのに。」
「それは俺が王の弟だからですか?」
「いえ、国王陛下とキョースケ様が素晴らしい統治者だからです。他の者に代わって国が乱れることは望みませんから。」
ドーンの目にはキョースケ様に媚びている様子はかけらもありませんでした。
「でも、今言ったことはヨージ、いえヨージ様には内緒にしてください。簡単に解けると知ったら今回のことが教訓になりませんから。」
「知ったとしてもヨージは二度と同じ過ちを犯さないでしょう。でもそうですね内緒にしておきましょう。」


ヨージはキョースケ様の頭から無事にネコ耳が取れたのを見て抱きついて号泣しました。
「わ〜ん、よかった〜〜。キョースケさんごめんなさい。もう絶対こんなバカなことしないから。」
「もう泣くな。お前が頑張ってくれたからちゃんと取れたんだから。」
「俺・・・もし取れなかったら・・・・・どうしようって。凄く怖くて。何であんなバカなことしたんだろうって・・・」
「もいいから。もう十分すぎるくらい後悔と反省しただろ。」
キョースケ様はヨージの背中をあやすようにポンポンと優しく叩きました。
それを優しい目で見ていたドーンがナギサに言いました。
「キョースケ様はいい伴侶を見つけられたんだね。」
「ええ、本当にそう思います。ただ少し軽はずみなところがある伴侶ですけど。」
「あんたも人のこと言えないだろう。」
「はい、そのとおりです。」
余計な一言で墓穴を掘ったナギサでした。


お城に帰ってもヨージはキョースケ様にピッタリくっついたままでした。
「なんだ?そんなにじっと見つめて。」
「うん・・・やっぱりそのままのキョースケさんが一番だなって。」
「その言葉嬉しいよ。耳着けられた時はこのままの俺じゃダメなのかって悲しかったから。」
「ごめんなさい。俺本当にバカだった。」
キョースケ様は俯いてしまったヨージの髪にそっと口付けました。
「ヨージ愛してる。お前の笑顔が俺のエネルギー源だ。だからエネルギー補給させてくれ。」
「俺も、俺も愛してるキョースケさん。」
顔を上げて微笑んだヨージの目は幸せの涙で潤んでいました。
キョースケ様とヨージの愛はなにがあっても揺らぐことはなく益々深まるばかりでした。
そして二人の幸せは城下にも広がり領民たちもみな幸せなのでした。
そんな幸せな街をまあるいお月様が優しい光で照らしていました。



おしまい

'05.8.3  グレペン





★ぐはあっ・・・・・萌えで鼻血が出そうです!(笑)
グレペンさん!ブラボーですわ〜vvv
猫耳キョースケ様に女装のヨージくん(^o^)たまりません!
猫耳つけて激しく乱れるキョースケ様にもうくらくらですv
動悸目眩・・・・激しいです・・・はあはあ(笑)
今回のトラブルもふたりの愛を深めたようですね
ナギサさんもふたりのいい理解者となっているようで素敵ですv
続編が読めて幸せです!

グレぺんさん、楽しく萌える作品をありがとうございますv