月の裏側


俺は今生番組のトークコーナーに出演中。
トーク番組って苦手じゃないけど今日はいつもより緊張してる。
何故ってオフの岩城さんが家で見てるから。
こういうコーナーに出るのは大体仕事の宣伝が多いんだよね。
んで、その宣伝が終わると決まって訊かれるのが岩城さんとのこと。
普通の芸能人カップルとは違うから興味があるんだろうけどさ。
岩城さんとのこと話すのは嫌いじゃない。
って言うかむしろ話したいくらい。
でも、岩城さんがどんなに可愛いか色っぽいかはあまり人に知られたくないからその辺はちょっと控えめにしてる。
あまり喋りすぎると岩城さんに怒られちゃうしね。
あっ、金子さんにも気をつけるよう言われてる。
俺、岩城さんのこと考えると顔が緩んじゃうからさ。
仕事の話が終わると思った通り司会者が岩城さんとの話題を振ってきた。
その話題も大体パターン化してるよね。
岩城さんと俺が対照的だとかさ。
俺が<動>のイメージなのに対して岩城さんは<静>のイメージ。
俺の瞳と髪が明るめな色なのに対して岩城さんはどちらも凄く綺麗な黒。
そしてよく言われるのが俺が<太陽>で岩城さんが<月>。


俺が太陽ってのはあってるのかなと思う。
自分で言うのもなんだけど明るい性格だし、ポジティブシンキングだし。
でも岩城さんが月って言うのは違うと思うんだ。
確かに黒い髪と瞳は夜のイメージだし、夜空に冴え渡る月のように凛としてるけど。
俳優の時は凛としてるけどおれの前でいろんな顔を見せてくれるのは満ち欠けで姿を変える月にちょっと似てるかな。
考えてみればどこか神秘的なとこも月と同じだ。


あれ?岩城さんの月とは違うとこをあげるつもりが肯定ばっかしてる。
月の満ち欠けは移り気な心のたとえにもなるけど岩城さんは絶対そんなことない。
満月前後の月はその明るさで周りの星が見えなくなり孤高の存在にたとえられるけど岩城さんは一人ぼっちなんかじゃないし。
どんなに手を延ばしても触れることのできない月と違ってちゃんとこの手で触れることができるし。
それに月は太陽の光を受けて輝くけど岩城さんは自分自身の力で輝いてるんだから。
そしてこれが一番の違い。
月よりも岩城さんの方がずっとずっと何倍も綺麗。
ほらね。岩城さんは月じゃないでしょ?


あっ、でも今考えてて気がついた。
俺以外の人間には岩城さんは月だって思われてた方がいいかも。
綺麗で誰にも愛されるけど絶対手の届かない存在。
侵しがたい清廉さを感じさせる存在。
近づきすぎるとその魔力に魅入られそうで畏怖を感じる存在。
やっぱり俺以外からはそう思われてた方がいいや。
そうだ、もうひとつ岩城さんが俺以外には月でいて欲しい部分があった。
月はいつも同じ面を地球に向けてて裏側は見えないんだよね。
それと同じように俺以外には俳優としての顔だけ見せてて欲しい。
プライベートに関する質問にも俺にしては無難に答えコーナーも終わりに近づいた。
テレビを見てる岩城さんにほんの一瞬目で合図を送る。
多分誰も気づかないけど岩城さんだけは分かってくれるはず。
『岩城さん、俺上手くやれたでしょ?帰ったら褒めてね。』
今夜はベッドで月光に映えるその綺麗な肌を見せて。
そして俺以外は見ることのできない裏側、色っぽくて可愛い顔をたくさん見せてね。


終わり

04.11.8  グレペン



☆「太陽の灼熱」と対になる香藤くん側からのお話ですv
香藤くんが語っていますが岩城さんのことを話しているので
月のバックにしてみました(^.^)
月の裏側はけして見えない・・・・それと同じように他の人には
岩城さんの素の部分ってなかなか見えない・・・・とても納得v
でも香藤くんには見せている・・・・ああ、素敵ですね!
きっと今夜も綺麗な岩城さんを堪能するんでしょう・・・香藤くん、幸せ者!(笑)

グレペンさん素敵なお話ありがとうございますv