太陽の灼熱 久しぶりのオフの朝リビングのソファに座って寛ぐ。 オフの日に朝からこんな風にゆっくり過ごすことは滅多にない。 毎日の仕事時間が不規則な俺たちは掃除や洗濯といった家事が滞りがちだ。 オフの時は朝からそれを片付けるんだが今朝は特別だ。 香藤が朝の情報番組のトークコーナーに出演するのでそれを見たいからだ。 とりあえず洗濯機を回していそいそとテレビのスイッチを入れた。 間もなくテーマ音楽が流れ香藤の姿が画面に現れた。 最初はお決まりの仕事の話だ。 俺たち俳優がトーク番組に出るのは仕事の宣伝が主だ。 このあたりはまだ安心して見ていられる。 問題はこのあと宣伝が終わって話題がプライベートのことになった時だ。 香藤は調子に乗ってぺらぺら喋るから見ていて冷や汗を掻くことがある。 今朝出る時に釘を刺しておいたがやっぱり心配だ。 しかしこういう番組で訊かれることはパターン化してきているように思う。 料理はどっちの担当だとか、オフの時は何をしてるのかとか。 その答えがそうそう変わるわけもないのに視聴者はそれで満足してるんだろうか。 もうひとつ定番になっている話題が香藤と俺が対照的なイメージだということ。 色々あるがよく言われるのが香藤が<太陽>俺が<月>。 俺が月というのはどうかと思うが香藤が太陽というのはよく分かる。 そこにいるだけで目を引く華やかな容姿。 明るい髪と瞳の色そのままにどこまでも前向きで明るい性格。 その明るさは周りにいる者までも明るい気持ちにさせる。 それはまさに誰にでも平等に降り注ぐ暖かな太陽の光そのものだ。 俺は時々それを面白くないと思ってしまう。 その笑顔を俺だけに向けて欲しいと思ってしまう。 俺の中に芽生えた香藤への独占欲がそうさせる。 しかし俺たちが俳優であり続ける以上それは無理な願いだ。 だから香藤、お前の本当の姿だけは俺以外に見せないでくれ。 地球上では暖かな太陽の本当の姿は強大な重力を持ち全てを焼き尽くす灼熱の星だ。 香藤も太陽と同じように激しい部分を持っている。 誰もが太陽の灼熱を知識でしか知らず身体にに感じることができないように香藤の灼熱をこの身に感じられるのは俺だけでいたい。 俺は香藤という太陽の強大な重力に捕まり引き寄せられその熱い思いで身も心も焦がされた。 そしてその熱にドロドロに溶かされてひとつになりたいとまで思うようになった。 俺たちの間に誰も入り込めないように溶け合ってひとつになりたい。 誰かにこんなに強い独占欲を抱くようになるなんて数年前の俺は思いもしていなかった。 画面の中では香藤が司会者からのプライベートに関する質問に言葉を選びながら答えている。 どうやら俺の刺した釘を忘れていないらしい。 その後も香藤にしては無難な受け答えを続けコーナーが終わりに近づいた。 今夜はご褒美をやろうかと見ているとほんの一瞬、香藤が視線で合図を送ってきた。 誰も分からなかっただろうがそれは明らかに俺へのメッセージだった。 『岩城さん、俺上手くやれたでしょ?帰ったら褒めてね。』 言われなくても褒めてやろうと思ってたなんてあいつには言わないでおこう。 本当に俺は香藤に甘くなった。 テレビからはトークコーナーのエンディングテーマが流れ香藤の笑顔がアップになる。 本当に太陽のようなこの笑顔にたくさんの視聴者が惹かれるんだろう。 でも本当の姿を知ってしまった俺には物足りない。 大気に遮られずにその熱を感じたい。 そして今夜は俺だけが知る灼熱で身も心も溶かしてくれ。 終わり 04.11.8 グレペン |
★次の「月の裏側」と対になっています
岩城さん側からのお話ですv
岩城さんがハラハラしつつも画面の向こうの香藤くんを
見守っているのが伝わってきて・・・・幸せな気分になりますね
そして今夜は・・・・きゃv(笑) ええ、溶かして貰ってくださいなv
香藤くんの熱にどっぷりと浸かってくださいませ・・・・
グレペンさん素敵なお話ありがとうございますv