NIGHTMARE
「うぅ〜〜ん、うう〜〜〜」 「……とう、 香藤、 香藤!!」 岩城さんの声にハッと目が覚めた。 「大丈夫か?うなされてたようだが…」 「ああ…うん」 みれば、パジャマが冷や汗でじんわりと濡れている。 「どうした、何か嫌な夢でも見たのか?」 そう岩城さんは心配そうな顔をして優しく俺の髪をすきながら聞いてきた。 その暖かな感触に縮んでいた心臓がまた動き出したような気がする。 「うん、酷い夢だったよ……。すごく恐かった……」 そう言って縋り付くと、岩城さんは優しく抱き返してくれ、安心させるようにぽんぽんと俺の肩をたたいた。 「どんな夢だ?話すと楽になるぞ」 「う…ん、あのね」 そういって俺はあの恐ろしい夢について語り始めた。 俺は岩城さんと美しい森の中にいた。 青々とした木々の間から木漏れ日が落ち、小鳥がさえずり、遠くからは河のせせらぎが聞こえた。 地面には厚く落ち葉の絨毯が敷かれており、踏みしめるたびにクシュリクシュリと小気味よい音がした。 「綺麗な所だね」 「ああ、しばらく忙しかったからな。こんなところでゆっくりするのは久しぶりだ」 そんな取り留めもないことをぽつりぽつりと話しながら、俺たちはゆっくりと森の中を散策した。 しばらく歩いていると、向こうの方に何かキラリと光るものが見えた。 「ねえ、岩城さん。あれ何かな?ほらあの光ってるの」 「さあ、何だろう?行ってみるか」 「うん」 そう言って俺たちはその光るものの方へ歩き出した。 行ってみるとそこには小さな泉があった。 どうやら泉の水が太陽の光に反射して光って見えたようである。 その泉はこぽこぽと小さな音をたてて水が湧き出てをり、周りの岩には青さも美しい苔が一面に張り付いていた。 「綺麗な泉…。うわぁ、冷たい!飲めるかな」 水に触れると手にちくちくと感じるほど冷たく透き通っていた。 「さあ、湧き水だから飲めるんじゃないか?ちょうど喉も乾いたし飲んでみるか」 そう言って俺たちは手に水をすくって飲み始めた。 その水は口に含むとほんのり甘く、歩いて火照った身体を気持ちよく冷やしてくれた。 すると突然、、 「うわぁっ!!!」 ザブーン 叫び声をあげて岩城さんが泉に落ちてしまった。 どうやら岩の苔で足を滑らせたようである。 「岩城さん!!」 俺は急いで水面をのぞき込むが、そう深さもないように見えるのに一向に岩城さんが浮かんでこない。 「岩城さん!岩城さん!!」 呼んでみても返事はない。 俺は助けに向かおうと服を脱ぎ始めた。 すると突然泉の表面がゴボゴボと大きく波立ちはじめた。 もしや岩城さんだろうかと見ていると、みるみる黒髪が浮上してきて最終的に人の形になった。 が、岩城さんではなかった。 よりにもよって 「菊池克也!?」 だったのである。 「俺は菊池克也ではない。泉の精であ〜る」 そうふんぞり返って言った。 「なに言ってんだよ。妖怪の間違いじゃねーの?お前菊池克也だろ」 するとその自称泉の精はチッチッチと人差し指を振りながら、 「違〜う。俺はこの泉に住む泉の精であ〜る」 「この泉にぃ!?はっっ!俺飲んじまったじゃねぇか!!うえぇ〜〜〜」 「こんガキャぁ……。そんなこと言ってると返してやンねーぞ……であ〜る」 そう言うと菊池克也…もとい…泉の精はにやりと笑った。 「あっ!!てンめぇ…!!岩城さんどこやった!!」 「ふっふっふっふ。ここにいる。そら、お前の落とした岩城はこの金の岩城であろう」 そう言うと菊池、もとい、泉の(以下略)は泉の中から黄金に光る岩城さんの姿をした像を取り出した。 「違ーーーう!!!俺の岩城さんはそんなんじゃねぇ!!それに何だその格好は!」 「ふっふっふっふ。これは俺の趣味だ。なかなか色っぽいだろう?」 「てンめぇ……」 「では、お前の落とした岩城はこの銀の岩城か?」 そう言うと菊(以下略)は、また泉の中から、今度は銀色に光る岩城さんの像を取り出した。 「違う違う違ーーーーーう!!!早く本物の岩城さんを返しやがれ!!それにまたそんな格好させやがって!俺の岩城さんを勝手にいじるなーーーー!!!」 「ふははははは。これも俺の趣味だ」 「てめぇはっ!!あーーもーー!!」 うがぁっ!と髪を掻きむしっていると、 「ふむ。お前はなかなか正直だ。いいことであ〜る」 と、き(以下略)は言った。 「そんなお前には、この金の岩城と銀の岩城両方をやろう。ふふふ、喜べ。俺の渾身の作だ」 そう言って(以下略)は泉の縁にゴトンとその岩城さんの像を置いた。 「ってこれお前が作ったのかよ。ってそーじゃなくて!!俺の岩城さんはこんなんじゃねぇ!俺の岩城さんはもっと桃色ですべすべしててサラサラしててふわふわなんだーーー!!かーえーせー!!!!!」 そう叫んで手を伸ばすが、いつの間にか本物の岩城さんを抱きかかえていた菊池はそんな俺を嘲笑いながら、 「はっはっはっはっは!!ではさらばであ〜る」 「香藤のばかやろ〜〜〜」 と、来たとき同様、ゴポゴポと水面を波立たせながら泉の中に去っていった。 「岩城さん!岩城さん!!いーわーきーさーーーん!!!」 「てとこで目が覚めたんだよ。あーもー菊池克也の奴、夢とはいえ許せん!!ってあれ?岩城さん?」 見ると岩城さんはやれやれというふうに溜息をつき自分のベッドで寝に入っている。 「ね〜ね〜、岩城さ〜ん。もうこんな夢見ないように今日は一緒に寝ようよ〜」 そんな俺にちらりと目をやり、ふわぁ〜〜と欠伸をしながら、 「俺は明日は朝から仕事なんだ。お前の妙な妄想につきあっている暇はない」 そういってまたひとつ欠伸をすると、 「おやすみ」 と言って寝てしまった。 「妄想じゃないよ〜〜夢だよ〜〜」 と反論してみるものの、岩城さんはもうすうすうと穏やかな寝息をたてていて、答えはなかった。 「むぅ〜〜〜〜」 しょうがないので勝手に岩城さんのベッドに潜り込み、体をぎゅっと抱きしめた。岩城さんはもう深い眠りに入っているのか気づかない。 この岩城さんは、俺のもの End. 2004・3 海田およぐ |
★およぐさん・・・最高ですv
菊池さんが・・・・・爆笑! 何とも胡散臭い泉の精ですよねv
そして何よりこんなおバカな夢を見てしまう香藤くんが
愛しくってたまりません(*^_^*)。
でも岩城さんが桃色ですべすべでさらさらでふわふわ(笑)
いいなあ〜触りたーーーい!!
およぐさん、今回もとっても楽しいお話ありがとうございますv