Top secret その日香藤は小野塚と宮坂に誘われ夕食を共にする事にした。 「肉が食いたい!」との宮坂の言葉で有名人御用達の焼肉店に行く。 普通の人が見ていたら胸やけを起こしそうな大量の肉が三人の胃袋に納められた。 「う〜ん満腹。流石にこれ以上は食えないな。」 「食おうにも何も残ってねぇよ。」 「なぁまだ時間いいだろ?飲みに行こうぜ。」 小野塚の言葉に他の二人も異論はなくお洒落なワインバーに移動する。 三人で飲むのは久しぶりな事もあって楽屋話や噂話で盛り上がる。 早々に一本空にし次のボトルを開けたところで小野塚が香藤に問いかけた。 「なぁ、岩城さん今日はどこで泊まりなんだ?」 「京都。って小野塚お前なんで岩城さんが泊まりだって知ってんだよ?」 何気なく答えたもののはっと気づいたように不審顔になった香藤に答えたのは宮坂だった。 「そんなの決まってんじゃん。」 小野塚と宮坂は顔を見合わせて頷く。 「岩城さんが家に居たらお前がこんな時間まで俺達に付き合うはずないだろ。なぁ小野塚?」 「ホントホント。俺達との友情なんて岩城さんの前じゃ脆いもんだよな。」 二人に非難するような視線を向けられ香藤はむっとする。 「なんだよお前らそんな目で見やがって。自分にそこまで愛せる相手がいないからって僻んでんじゃねぇよ。」 「何だと!俺らのどこが僻んでるんだよ!」 「そういう態度が僻んでるつってんだよ!」 「何ぃー!」 香藤と宮坂が不毛な言い争いをしているのを冷めた目で見ていた小野塚が口を挟む。 「香藤この前俺ふと思ったんだけど。」 「ああ、何をだよ!」 香藤は宮坂をひと睨みしてから苛立たしげに小野塚に視線を向けた。 小野塚はそんな香藤の様子を全く気に留めることなく答えた。 「岩城さんどうやってヌいてたのかなって。」 「はあっ!?」 小野塚の言葉の意味が全く理解できず香藤は間の抜けた声を上げる。 そんな香藤に小野塚はニヤッと笑って顔を近づけた。 「だからさ、お前と同居し始めた頃岩城さんどうやって性欲処理してたのかなって。お前は乱パ行ったりしてたけど岩城さんはそういう事しそうにないからどうしてたのかなって思ったんだよ。」 「そう言われてみればそうだよな。岩城さんって真面目で女遊びとかしそうにないよな。」 宮坂も先程までの言い争いを忘れたかのような顔をして話に加わる。 「うるせー!そんな事お前らには関係ないだろ。それにそんな昔の事俺はどうだっていいんだよ。遅くなったしもうそろそろお開きにしようぜ。」 そう言って香藤が席を立つと他の二人も反論する事無く後に従う。 そして店の前でタクシーに乗り込んだ香藤を見送った二人は顔見合わせて噴出した。 「香藤のヤツ何がどうだっていいだよ。無理してんのミエミエじゃん。」 「だよなぁ。気になって仕方ないって丸分かりだっつーの。今夜眠れないんじゃねーの。」 「ホント香藤のヤツ岩城さんの事となると単純だよな。面白いように引っ掛かってくれるから余計にイジメたくなるんだよなぁ。」 悪友二人の目論見通り自宅に帰った香藤は悶々としていた。 いや自宅に帰るタクシーの中からすでに考えていた。 (今まで考えても見なかったけど本当に岩城さんどうやって処理してたんだろう。) スキャンダルを気にしていた岩城が風俗店を利用したり外で誰かと会ったりしていたとは考えにくい。 「でもなぁマスコミが張り付いてる可能性が高いマンションに女連れ込むってのもなぁ。第一俺が急に帰ってくるかもしれないのに岩城さんがそんな事するはずないよなぁ。」 香藤はいつの間にか声に出していた。 「やっぱり俺がいない間に自分でヌいてたのかなぁ。だとしたら何をオカズにしてたんだろう。俺はあの時の岩城さん思い浮かべるだけでイケたけど…。」 ブツブツと独り言を言い続ける姿はどう見てもアヤシイ人にしか見えなかった。 二日後、京都から帰って来た岩城は香藤の態度に不審なものを感じた。 何かを言いたそうに口を開きかけては思いとどまる。 そんな事を何度も繰り返しているように見えた。 「香藤言いたい事があるならはっきり言ったらどうなんだ。そんな態度をとられたら余計気になるだろう。」 岩城に促され思い切って口を開こうとした香藤だがまた言い出せずに口を噤んで俯いてしまう。 「香藤!」 岩城が少し語気を荒げるとびくっと香藤の背筋が伸びた。 「だって岩城さんきっと怒るから…。」 らしくない小さな声で呟く香藤に岩城はため息をつく。 「怒らないとは言わないが、このままじゃ俺もお前もすっきりしないだろう?とにかく言ってみろ。」 「そんなぁ〜。」 香藤は垂れ目を更に垂れさせて情けない顔になったがこのまま黙っていても怒られると思いおずおずと口を開いた。 「えっと、あの〜その…岩城さんどうやってヌいてたのかなぁ〜なんて思って。」 「はぁっ!?」 突拍子もない質問に岩城は思わず大声を出す。 香藤は身を竦め恐々といった風に説明する。 「あの…だからね。俺と同居し始めた頃岩城さんどうやって性欲処理してたのかなって。俺岩城さんがしてるの見た事ないし…。」 岩城は怒るというより呆れてしまっていた。 「当たり前だ。何でお前の前でしなきゃいけないんだ。それより何だって今頃そんな事言い出すんだ?」 岩城に不機嫌そうに睨まれ香藤はますます身を竦める。 「だって小野塚が訊いてきたから…。」 「小野塚君?」 「うん。この前宮坂と三人で飯食ったんだけどその時に訊かれて…。俺それからずっと気になっちゃって…。」 (また小野塚君達か…) 岩城は軽い頭痛を感じ額を抑えた。 「香藤、彼らはお前をからかって楽しんでるんだからいちいちそれに乗るんじゃない。そんなの彼らを喜ばせるだけだろう。」 香藤はシュンとしながらも必死に言い訳する。 「俺だってそれくらい分かってるけど…。でも岩城さんの事言われるとついむきになっちゃって…。それに今回の事はやっぱり気になるし。ねぇ、岩城さん本当にどうしてたの?」 岩城はふぅ〜っと息を吐き出すと上目遣いに訊ねてきた香藤を真顔で見つめた。 「そう言うお前はどうしてたんだ?俺に訊く前にお前が話すのが筋じゃないのか?まさかあんな事な何度もしてたんじゃないだろうな?」 まさかそう返ってくるとは思っていなかった香藤は岩城の真剣な表情に気圧される。 「乱パに行ったのはあれ一回だけだよ。あとは岩城さんを思い浮かべながら自分で…。」 それを聞いた岩城は顔を赤らめる。 「バカ、お前勝手に…。」 「だって岩城さんが一番よく効いたんだもん。」 ボカッと岩城が香藤を殴る。 「イッター。正直に言っただけなのに殴んなくてもいいじゃん。じゃあ今度は岩城さんの番だよ。」 香藤は涙目になりながらも岩城に訊ねるのを忘れない。 「俺も自分でだ。これで満足だろう?」 岩城はこれで終わりだと言いたそうだったが香藤は満足していなかった。 「俺は岩城さんだったけど、岩城さんは何を思いながらしてたの?それとも何かをオカズにしてたの?」 何でそんな事までと思った岩城だが香藤があまりに真剣な顔をしていたので言えなくなった。 「…そんなものは必要ない。仮にもAV男優だったんだ。それくらい自由にコントロールできるさ。」 香藤は予想外の答えを返されボケッとしている。 「だいたいあの頃はまだAVを見ても研究材料としか思えなかったからな。」 「そうだったんだ。勉強熱心な岩城さんらしいね。」 「納得したか?それならこの話はこれで終わりだ。いいな?」 「うん。」 翌日、入り時間の遅い岩城は香藤を送り出したあと自室に向かった。 棚の奥から一本のビデオテープを取り出しデッキにセットする。 画面にはミニスカートを穿いた主婦らしき女性が掃除機を掛けている様子が映し出されている。 そこへ作業服を身に着け帽子を被った男が訪れガス会社の者だと名乗り点検のため台所を見せて欲しいと言った。 案内され台所に入った男は突然主婦を後ろから羽交い絞めにすると着ていたセーターを捲り上げ豊満な胸を露にした。 主婦が抵抗すると男の帽子が落ちた。 画面に映し出された顔は香藤のものだった。 このビデオは香藤が出演したAVだった。 香藤が主婦役の女優を床に押し倒し行為が本格的になってきたところで岩城はビデオを止めた。 「俺も焼きが回ったな。相手役の女優に嫉妬して最後まで見れないなんて。」 自嘲しながら巻き戻してテープを取り出しケースに収める。 こんな物を持っていると香藤に知られたら何を言われるか分からない。 そう思って何度も捨てようとしたが香藤が映っていると思うとどうしても捨てる事ができなかった。 テープを元通り棚の奥にしまい扉を閉める。 実は岩城は香藤と同居し始めた頃このビデオを使って自慰をしていた。自分の物や他の俳優の物だとAV男優時代の名残で官能的な見せ方の研究材料としてしか見れなかったのに香藤の物だけは違った。 今にして思えば女優にではなく香藤に官能を刺激されていたのだ。 「しかし昨夜は香藤があっさり納得してくれて良かった。このビデオを使ってたなんて知られたらアイツ図に乗るに決まってる。これだけは絶対に秘密にしないと。」 岩城はもう一度ビデオを入れた棚に目を向けてから身支度を整えるためクローゼットのドアを開いた。 END 04.3.10 グレペン |
★まあ・・・・岩城さんったらv(*^_^*)
確かにこれはTop Secretですよね〜♪
これを知った時の香藤くんの顔が浮かぶようですvvv
ちょっとビデオの描写にドキドキ(笑)しましたわ
けれど・・・見事に悪友に遊ばれている香籐くんが可愛いです
グレペンさん、素敵なお話ありがとうございますv