この話は2006年の香藤君バースディお題企画の『ムーンストーン』を1部引用しています。  
                  

                         『太陽の守りを‥‥‥』

「じゃあ、次の問題です。宝石にムーンストーンと言われるものがありますが、それは何月の誕生でしょうか?」
司会者が問題を読み上げると、いっせいに目の前の画面にペンで答えを書き出す。
書き終えた後に数人のパネルを空けると、何故その月にしたかを司会者が聞きだす。
「香藤さんは、6月ですね。その理由は?」
自分が空けられるとは思っていなかった香藤が、その言葉に驚いた。
「‥‥‥言いづらいんですけど‥‥‥」
香藤が指で鼻の頭をポリポリと掻きつつ答えだす。
「前に、自分の誕生日にもらったんですよ。誕生石って事で」
その言葉で周りの視線は宙に浮き、司会者も合えて突っ込んで聞くことを避けた。
渡した相手のことになると長くなり、番組にも支障がきそうなのである意味スルー気味だったが、答えは正解だった。
この答えは香藤以外にも、女性陣の方が当たった確立は高かったのは、誕生石や占いは女性の方が興味あると一般的な事だった。
「じゃあ、次の問題です。ムーンストーンに対抗するサン・ストーンと呼ばれる石はあるか無いか?さあ、どうでしょう」
ザワッと周りが探りを入れる様子である。
「有るか無いかの2択です。サービス問題ですよ」
司会者は答えを書くように進める。
「う〜〜〜〜ん」
香藤は唸って、カンで有ると答えを書いた。
そして、その答えは正解だった。

香藤はその事を、食事の時に岩城に話して聞かせていた。
「石って知らないもの有るよね」
香藤は少し興奮気味に言うと、
「そうだな‥‥‥宝石店に行ったときも、知らない石があって困ったな」
岩城も思い出して、苦笑して答える。
「岩城さんもそうなら、俺が知らなくっても仕方ないか」
香藤は笑って答える。
「お前のそれを買ったときも、後で清水さんに言われて知ったんだがな」
岩城は香藤が首にかけている去年の誕生日で買い求めたネックレストップを指して其処まで言い、茶碗を机の上に置いた。
「うん、何?」
香藤は少し身を乗り出す形で、話の先を進めようとする。
「脇石に使ってくれた緑の石‥‥‥ガーネットって言ったかな‥‥‥それは、1月の誕生石だそうだ」
岩城はそう言い返し、軽く微笑み返した。
「えっ、岩城さん」
香藤はその事に興奮して、嬉しそうだった。


そして、今年も6月がやって来ようとしていた。
岩城はふとそんな話を思い出していた。
「サン・ストーンか‥‥‥名前は香藤に似合っているな」
しかしどんな石か岩城は知らない。
清水に聞いてみたが、普通に流通している石ではないので、清水も詳しい事は知らなかった。
清水の知らないものを岩城はそれ以上深く聞く事は無かった。
その場で終わりかともっていたのだが、ある日の清水が時間を作って岩城を連れ出した。
「清水さん‥‥‥」
岩城は意味が解らず聞き返す。
「時間が空いたので‥‥‥それに、サン・ストーンの事もわかりますので」
清水はそう答えると、後は無言で岩城を連れて行くだけだった。
以前、香藤の誕生日に結局はオーダーでネックレストップを作った宝石店に着いた。
今年もリフォームをしていた。
「清水さん、聞かれたのですか?」
岩城は驚いて確認するかのように清水を見つめる。
「すみません‥‥‥デザイナーの彼女がサン・ストーンの事も知っていたので、つい」
清水は出すぎた真似をといいつつも、岩城の喜ぶことをしたかった。
「ありがとう。清水さん」
岩城は清水にお礼を述べた。
店の中には、デザイナーが待っており、岩城は挨拶を交わす。
デザイナーも待ち構えていたみたいに、椅子を勧めてきた。
「すみません。無理な話を聞いて」
清水もその横で、挨拶を交わした後にこう言葉を続けた。
「いいえ。かまいませんよ」
心持デザイナーは楽しそうだった。
「ムーンストーン和名『月長石』に対してサン・ストーン『日長石』と言われています。でも、鉱物的には同じ仲間なんですよね」
そういいながら、テーブル上のトレーにオレンジ系の石を取り出しておいた。
前回のオレンジムーンストーンと見た目にも違うオレンジだった。
石の中から光が当たるとキラキラと輝きを見せる。
「これは‥‥‥」
岩城は目を見張った。
本当に太陽の一部を切り出したような石だった。
「この輝きが特長なんです。アペンチュリン効果と言われているインクルージョンになる輝きです」
デザイナーは笑いながら答える。
「凄いですね‥‥‥本当に夏の太陽みたいだ」
その石を手にとって、岩城は目を見張った。
「私も始めてみました」
清水も横でまじまじと見ている。
「この石は‥‥‥産出量も多いので、宝石として扱われる価値の物は透明度の高い物のごく一部なんですよね。普通には、天然石ビーズとかで利用される方が多いです。あと、分類としては人工石になるのですけども、ゴールド・サンストーンを染色してブルーサンストーンと言われるものもあります」
デザイナーはそう言い返し、再びトレーの上に石を置いた。
深い蒼‥‥‥宇宙の蒼の中に星の輝きを思わせるキラキラしたものが浮かんで見える。
岩城と清水は無言でその二つの石を見つめていた。
「香藤さんにですか?」
デザイナーは岩城の様子を見て、静かに声をかけた。
「えっ、あの‥‥‥」
岩城はその言葉にあわてて、頬を染めた。
「前の事を思い出したのですよ。でも、サン・ストーンを出されるとは思いませんでしたわ。最近のブームのせいで再びパワーストーンと呼ばれるものに注目も集まっていますし、名前が名前だけに‥‥‥香藤さんにはお似合いの石だと思います」
デザイナーはニコッと笑い言葉を続けた。
ある意味商魂たくましい人であろうと、思える。
「でも‥‥‥今年もって‥‥‥」
岩城は戸惑うように答える。
「それは、考え方一つだと思います。石によってはそれぞれ意味を持たされている事実、昔の人はそんな石をお守り代わりに持っていましたし、それが今でも続いているんです。身を綺麗に飾るもの、身を守るもの、同じ石なんですよね」
デザイナーは答えると、ニッコリ笑った。
「そう考えると、石を送る意味も広くなりますね」
清水も感心したように答えた。
「ええ、だからお守りとして、大事な人にタイタックやブローチでも良いと、私は思うのですよね」
デザイナーも清水の言葉に同意して続けた。
「サン・ストーンの意味は?」
不意に岩城が口を挟んだ。
「一般に言われることは‥‥‥勝利の石。身心の傷を癒し、持つ人への意欲、想像力を授けてあらゆるものへの勝利者へ導く‥‥‥ですね。後、太陽の神の化身として、昔の人は重鎮していたらいいですよ。」
デザイナーの言葉で、岩城の気持ちは固まったようだ。
「お願いします」
岩城はその言葉で、頭を下げたのだった。
その日、岩城とデザイナーはこの石を何にするかで話を進めた。


新たな活躍の場を与えられる香藤にとっても、挑戦の年になる事は、岩城もうすうす感じ取っていた。
『サン・ストーン』も勝利へと導く意味を持つと言われ、自分の願いも込めたのだった。
石の名前の用に太陽の用に輝いて欲しいと‥‥‥



6月9日 朝
「仕事だよ〜〜〜;;岩城さん」
香藤が起きてすぐに岩城に泣きついた。
「香藤‥‥‥仕方ないだろう?金子さんも夕方7時には終わるって行っていたから、NG出すんじゃないぞ」
岩城はクスクス笑いながら、なだめる様に頭をなでた。
「でも〜〜〜」
香藤は何か未練がある様だったが、
「その代わり、明日はオフだそうだ。玄関で金子さんに聞いた」
ドラマの番宣の関係で、9日の取材、撮影が外せなかったのだ。
「明日〜〜〜本当?じゃ、がんばる」
香藤はその言葉にガバッと起き上がると、笑顔で答える。
「じゃ、がんばって来い。たいした物は作れないけど、何か作って待っている」
岩城の言葉に香藤はさらに目を輝かせた。
「うん、楽しみにしている」
岩城の唇にキスを落とす。
「ばか、金子さんが待っているだろう!!早く行け」
岩城は玄関先にいる金子を気兼ねして、香藤を送り出す。
「行ってくるね。岩城さん」
香藤はそれを受けて、笑顔でリビングを出て行った。

金子の待つ車に香藤は向かった。
「おはようございます。金子さん、今日もよろしく」
車の後ろのドアを開ける。
「おはようございます、香藤さん。誕生日にすいませんが、がんばってください」
金子がハンドルを握って、顔を香藤の方に向けて挨拶を返した。
「岩城さん、何か作って待っているって言ってくれたからさ、NG出さないようにがんばるね」
後部席に座り、ふと横を見ると何かがおいてあった。
「香藤さん、シートベルトお願いします。あと、それは岩城さんから頼まれました」
金子がバックミラーで香藤の様子を伺いながら、言い返した。
「えっ?」
香藤は驚いてその小さな包みを手に取る。
動き始めた車の中で、はやる心を抑え香藤は包みを開けた。
朝の日差しの中で、オレンジのキラキラ輝く石が出てきた。
「これ‥‥‥指輪?」
オレンジの石をゴールドで囲んだ指輪。
同系色で地味になりそうなのだが、石の輝きが物ともしない輝きで、見事なものになっていた。
箱の中に入っていたカード
岩城の字で書かれていたメッセージ
『誕生日おめでとう。
これはサン・ストーンだ
勝利へ導く石だそうだから、今のお前に送りたいと思った。
                 岩城

                PS明日は俺にオフだ』

香藤はその指輪を自分の中指にはめ、キスを落とした。
「待っててね。岩城さん」
誰にも聞こえない声で呟くと、ニッコリ笑った。
帰りを待っている岩城の元に、心をはせながらも、香藤は気持ちを新たに仕事に向かった。


               ―――――了―――――

                          2008・6        sasa






香藤くんの誕生日にフリーで投稿してくださった
sasaさんの作品ですv
岩城さんの香藤くんを思う気持ちがじ〜んと胸に来ます・・・・v
サン・ストーン・・・きっとこれからも香藤くんを守ってくれるのでしょう

sasaさん、素敵なお話ありがとうございましたv