想愛(そうあい) 7 |
あの日は、なぜか急に香藤が買い物に行きたいと俺を連れ出し、2人で相手に似合いそうな服を選びあい 香藤の手作りの夕食を食べ俺はアイツのマンションを後にした。 まるで、恋人達の休日の様な事をして夜中に俺のマンションの近くまで車で送り届けて貰った。 降りる際、香藤に不意打ちのキスを奪われ、驚きのあまり香藤の頭を殴りつけてしまった。 痛いと少し涙目になっていた香藤は、それでも嬉しそうに俺を送り出した。 文句も言ってやりたがったが、充実した休日を過ごせた事に免じて許してやろう。 少しずつ香藤に甘くなっているとは解っていたが、それを止める事は出来なかった。 俺自身でさえ、アイツへの気持ちが大きくなっている事に気がついていたが、それを止める手だてを知らないのだから。 そして、またしばらくは香藤と会えない日々が続いていた。 メールのやり取りだけで、ココ数日アイツの声を聞いていなかった。 そんなある日、香藤から変なメールが届いた。 【岩城さん。岩城さんのマンションの住所教えて貰ってもいいかな?】 しばらく考え、自分の住所をメールすると、【ありがとう】とだけ返ってきた。 不思議に思いながらも、すっかりそのメールの事を忘れていると、自宅に宅配が届いた。 送り主は香藤からだった。 変なものが入っていたらと思い、メールをすると自分が送ったとの事だった。 荷物をあけると、真新しい携帯電話の一式が入っていた。 すると、いきなりその携帯が鳴り響いた。 慌てて、着信を見るとそこには香藤の文字が出ていた。 「も…もしもし?」 『もしもし?岩城さん?良かった。無事に届いたんだね』 「一体これはなんだ?」 『それ?携帯電話だけど?』 「それは見ればわかるが、なぜ俺に新しい携帯電話を送って来たのかと言う事を聞いているんだ」 『ああ。だってさ、俺達いっつもメールとかしてるけどそれって、自分のじゃないじゃん?だからさ、プライベート用にって思ってさ』 「確かにな…」 『あっ、でも他の人にこの番号とかメアド教えないでね?』 「なぜだ?」 『これは、俺と岩城さんの二人だけの携帯だから』 「何を言ってるんだ」 まるで、耳元で囁かれた様な感覚に顔が赤くなっていくのを、誰にも見られていないとわかっていながらも 思わず片手で顔を隠してしまった。 『俺の番号とメアドも、その携帯に入れてあるから。もちろん、新しいやつね。 だからこれからはこっちで、メールとか電話するね』 「解った。だが、隠すなら頻繁に返信が出来なくなからな」 『隠す必要ないんじゃない?誰かに聞かれてもプライベート用だって言って断っちゃえば良いんだし』 「だが、そうなると色々と面倒になると思うんだが…」 『面倒って?』 「例えば、女が出来てそれ様なんじゃないかと色々検索されて、挙句に俺自信に内緒で後とか付けられそうだしな…」 過去に、付き合っていた女の素性調査をされたり、後を付けられたのも事実だった。 その事に激怒した俺は、組長に直談判に行った事もあった。 『ん〜…。そっか、じゃぁ気づかれない様に遅くても良いから返信してくれていいよ』 「お前の方はどうなんだ?何も言われなかったのか?」 『俺?別に何も。元々プライベート用って言って携帯持ってたし、マンションだって借りてるしね。その辺は結構みんな理解してるよ』 「そうなのか」 遠くで誰かが、香藤の名前を呼んでいるのがかすかに聞こえた。 『ごめん。岩城さん。俺そろそろ行くから電話切るね』 「ああ。じゃぁな。」 『うん。また電話するね』 フリップを閉じた携帯をじっと眺める。 この小さな重みが、アイツと繋がっていると思うと俺は無性に嬉しくなった。 ああ。もう無理なのかもしれない。 これ以上アイツへの思いを、とどめる事は出来ないかもしれない…。あふれ出す思いが、俺を包み込んだ。 なぁ、香藤。俺はこの思いをお前に告げてもいいのだろうか…。 もうこれ以上、抑えられない…。 お前を想うこの想いを……。 涙が止まらなかった。 それはなぜかは解らない。 次から次へと涙が流れた。 まるで、無理矢理押し込めていた香藤への想いが涙になったかの様に止まらなかった。 香藤… かとう…洋二… …俺は… …お前を… …愛してる…。 |
kreuz
kreuzさんの連載作品、最終回です!
長い間お疲れ様でした<(_ _)>
まだまだおふたりの話は続いていく感じですよねv
またいつか、このおふたりに会えるといいなあと思っています。
kreuzさん、素敵な作品ありがとうございました。