『たとえば・・・』





・・・岩城さんを『月』に例えるなら・・・俺は『太陽』

  

   (なんてね。ヘヘヘ。)



   静かなに澄んだ夜空に輝く月。岩城さんだよね。



   たくさんの星達の憧れ。



   そう。昨夜の岩城さんも綺麗だったなぁ。



   月明かりに輝く岩城さんの・・・





「ぐふふっ」

「んっ?」



本をめくるパラパラという音が止まる。

怪訝そうに岩城が本の下をのぞきこんだ。

ゆったりとした昼下がりのリビング。

秋風が心地よくて香藤は岩城の膝枕でウトウトしていた。

(どうせまた変な夢でもみてるんだろう)

小さな溜息をつきながら、また本に目を落とす。

やわらかい髪が指に心地いい。

いつまでもこんな時間を過ごしていたい・・・香藤がいればそれで・・・

岩城は更に香藤の髪に指をからませた。





突然、ムクっと香藤が起き上がった。

「どうした?香藤」

やわらかい髪が指から離れる。

びっくりした岩城を見て香藤は微笑んだが、そのままトコトコとキッチンへ行ってしまった。

「寝惚けてるのか?あいつは」

読みかけの本を閉じて岩城も後を追う。





「香藤。どうしたんだ?香藤。」

「ねぇ。岩城さん。『萩の月』食べる?」

「萩の月?」

「思い出した。もらったの。仙台のお土産なんだけど。知らない?」

「寝ながら思い出したのか?変なやつだな。お菓子だよな。甘いのか?」

「すごく甘くはないよ。カスタードだし。俺はどっちかっていうと『かもめの卵』の方が好きなんだけどね」

「かもめの卵??」

「岩手のお菓子。それも知らない?白くて甘くておいしいんだよ。」

「俺は甘いものはあんまり食べないからなぁ」

「じゃあ広島の『もみじまんじゅう』は知ってる?」

「ああ。それなら知ってるぞ」

「チーズとかさ。チョコとか意外とおいしいんよね」

「チーズ?チョコ?・・・アンコじゃなかったか??」

「ああ。アンコっていえばさ。『赤福』とかもいいね」

「赤福・・・」

「あっ八つ橋もまた食べたいな。京都にいた時はさ・・・」





「香藤。なんか・・・おなかいっぱいになってきた。。。」

「クスクスッ。ごめんごめん。今、おいしいお茶いれるからちょっと待ってて」



穏やかな昼下がり。

「食べさせてあげようか?岩城さん。ほらっ」

「バカ言ってるんじゃない。自分で食べれる。」





そしてまた岩城さんの膝の上。

髪にからまる岩城さんの指が気持ちいい。

ゆっくりとゆっくりと時間が流れる。





・・・岩城さんを『月』に例えるなら俺は・・・俺は・・・







「スッポンだ!」

「んっ???」





幸せそうな香藤の寝顔。

岩城は溜息とともに少し頬を赤らめた。





2004.10.5

千尋




まあ、香藤くんったら”スッポン”だなんて!(笑)
でも「離さない」んだものね、そうかもv
穏やかなふたりの時間が過ぎていきますね・・・・
「萩の月」は食した事がないですが、似たものは何度か(笑)・・・
美味しいですよねv

千尋さん、ありがとうございますv