friend
抱き合った後、暑さに不快を感じる事が無くなった季節。 香藤と岩城は2日程、オフが重なり二人はベッドの中で互いの熱を感じていた。 心も身体も満たされた二人は幸せそうだ。 香藤が岩城の髪に触れていると岩城が、 「……香藤、次の休み京都へ紅葉を見に行かないか?」 と言った。 「え?」 岩城からこういったお誘いは滅多に無いので、驚いた香藤は、 「いきなりどうしたのさ」 「いや、別にどうっていう事はないが、ただ、次も重なっていた日があるだろう ? 丁度、京都で見頃になっているからどうかと思っただけだ」 「――誘ってくれたのは嬉しいんだけど、その日はどうしてもダメなんだ」 と申し訳なさそうに香藤は謝ると、岩城は残念そうに呟いた。 「そうか……」 「ごめん。岩城さん」 「別に、そんなに謝らなくてもいい」 あまりに寂しそうに謝る香藤に、岩城は仕方が無いといった感じで香藤の頭を 撫でた。 「ごめんね。俺、その日は行かないといけない所があるんだ」 「ん?」 「岩城さんにはまだ言ってなかったよね」 「……」 岩城は香藤の寂しい笑みに黙って頭を撫でてやる。 「高校の時にさ、凄く気の合うヤツがいて、殆んどそいつと時間を潰してたんだ けど、高3の秋にアイツ羽目外し過ぎてバイクで事故ったんだ。で、知らせ聞い て病院行ったけど、もう死んでて……ショックだった。何言っても返事返ってこ ないし、動かないし、アイツを覚えている感覚だけが返ってくるんだよね」 もう十年以上経つのにあの時の気持が忘れられない。 少し思い起こしたのか、香藤は岩城の手を握り締めた。 「いいヤツだったんだ。俺の芸能界入り、応援してくれててさ……あ、今の親か らは想像出来ないかも知れないけど、反対されてたんだ。ガキだったから、心配 してくれてたんだね。あの時はアイツが応援してくれたてから、今こうして此処 にいるんだけどね。俺さ、約束したんだよ。有名になるって、だからその日…… アイツの命日は絶対アイツの所に行くんだ。だからごめん」 「――そうか。お前のその友人、会ってみたかったな」 「……俺は、ヤダね」 「え?」 「そいつ手が早いって有名だったんだよ。そんなヤツに岩城さんは会わせられな い!」 「バカっ!」 香藤の頭を撫でていた手を拳骨に変えると、岩城は思いっきり殴った。 「痛いってば! 冗談だよ」 こんな、真面目な話を聞かされて、いきなりふざけられると気の抜ける感じだ 。 多分、暗い話で気を使わせたと思ってわざとふざけたんだろう。 「あ、ねぇ。岩城さんも一緒に来てくれる? 俺の大切なヤツに会わせたいし… …京都とは別だけど、そこにも結構な紅葉があるんだよ。凄く、綺麗な色の紅葉 があるんだ」 ――紅い紅葉が揺れて、葬式で別れを告げた。 今も、脳裏にやき付いている。 紅い紅葉が……。 香藤は、不意に岩城の胸に耳を押し当てると、 「心臓の音っていいよね。落ち着く」 「ああ、そうだな」 「ね、岩城さん」 「ん?」 「朝、エッチといかない?」 と言ったと同時に、香藤の悲鳴が迸った。 END 秋篠琴音 2004/09/09 |
友に対する香藤くんへの想いと
それを受け止める岩城さん・・・・
静かな、でも確かな信頼がそこにはあります
シリアスな中にもでもちゃんと普段通りの香藤くんだったりして(笑)v
素敵な空間を感じますねv
秋篠さん、ありがとうございますv