スケジュール
すれ違いの日々が続く中で迎えた俺の誕生日。
金子さんと清水さんは、なんとか俺達のスケジュールを合わせようと調整してくれたみたいだけど
岩城さんには社長としての仕事もあるから、無理だったらしい。
お互い忙しいのは喜ばなきゃいけないコトなんだけどね。
「・・・もう何日岩城さんに会ってないんだろ」
ため息をつきながら、ソファーに座ってテレビをつけると
生放送の特別番組に出演中の岩城さんの姿が映った。
画面の中の岩城さんは少し顔色が悪い。
「だいぶ疲れがたまってるんだろうな〜岩城さん」
帰ったら何か身体にいいもの作って冷凍しておこうかな。
そしたらいつでも食べられるよね。
何がいいかとメニューを考えていると、メールの着信音が聞えてきた。
「ん?・・・なんだ、小野塚か」
メールを開くと『Happy birthday』という題名のファイルが添付されていた。
「あいつ、何送ってきたんだろ」
ファイルを開くと画面いっぱいに岩城さんの姿が映った。
「うわっ!なんだよ、これっ!!」
無防備な素の表情がなんとも可愛い岩城さんの写真。
「・・・どうやって撮ったんだよ、コレ」
ぶつぶつ言いつつ、早速待ちうけ画面に設定する。
返信メールを送ってから、ふと視線を上げると
岩城さんの隣に座っている男の顔がうっすら赤くなってるのが目に入った。
「ん?」
大御所と言われるその俳優は、岩城さんと視線が合う度に俯いて口元を押さえた。
どうも緩んだ表情を戻そうとしてるらしいんだけど
あまりの不自然さに、司会者がつっこんで会場は笑いに包まれた。
ベテランのお笑いタレントと俳優がその場をきれいにまとめた後
こういう雰囲気に慣れてない岩城さんは恥ずかしそうに下を向いちゃったんだけど
目を伏せて頬を染める様子がまた色っぽくて
今度は他の若手お笑い芸人がぽーっとし始めた。
「も〜勘弁してよ、岩城さ〜ん!」
ロケ先のホテルのベッドは何故かダブルサイズだった。
シングルに空きがなかったらしいけど
ここんトコひとり寝が続いてる俺にはちょっと辛いかも。
時計を見ると11時を回っていた。
「・・・明日早いからもう寝よっと」
そういえば、他の出演者が誰なのか
金子さんに聞きそびれたな〜と思いつつ
灯りを落とすと、俺はあっという間に眠りに落ちた。
香藤くんが眠りについてからしばらくすると
ドアのノブが静かに回り、部屋の中に人影が伸びた。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
小さな声で金子さんと挨拶を交わした人影は
足音を立てないように部屋の中に入ってきた。
香藤くんの寝顔をしばらく眺めながら髪を撫でた後
ぱさりと音がして、人影はベッドに滑り込んだ。
「誕生日おめでとう、香藤」
彼がそう囁くと、眠っているはずの香藤くんの瞼がぴくりと動きました。

ホテルのロビーには金子さんと清水さんの姿がありました。
「なんとか今日中に合流できましたね」
「ええ、香藤さんにはなんてお伝えしてあるんですか?」
「旅番組のロケ、とだけ伝えてあります」
「あら?」
「岩城さんと一緒だとはまだ言ってませんよ」
「じゃあ、香藤さん驚かれるでしょうね」
顔を見合わせて、二人は笑い声を上げた。
多忙な二人のスケジュール調整は無理かと諦めたところに
舞い込んできたのが、この旅番組だった。
製作側の希望が『岩城さんと香藤さんで』ということだったので
なんとか調整できたのだ。
「仕事とはいえ、丸一日一緒にいられますからね」
「お二人ともすれ違い続きだったから、いい旅になりそうですね」
おわり
H21.5.7
らむママ
香藤くん誕生日おめでとうございます〜♪
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