恋歌 鳥のさえずりが聞こえる・・・。 夜明けの淡色がカーテンの隙間から漏れている。 背中に感じるお前の体温。 俺の身体を包みこむ腕の心地よさ。 俺はゆっくり大きく息をはく。 起こさないようにそっと巻きついた腕をはずす。 肘をついて振り返り、お前の寝顔を見る。 ―――今日はお前の34回目の誕生日だな なぜかふと、お前と暮らし始めたころのことを思う。 俺に向かってまっしぐらに走ってきたお前。 わがまま言ってみたり、すねてみたり、笑ったり、怒ったり。 毎日が賑やかで、新鮮で、驚きだった、お前とのあの日々。 一途に、情熱的に、俺にありったけの愛を注いでくれた年下の可愛いお前。 それが。 いつの間になったんだろう。 こんなに頼りがいのあるたくましい男に。 俺を大きく包みこみ、温かで優しい安らぎを与えてくれる大人の男に。 俺はお前の顔を見つめる。 愛しい、俺の香藤。 もう数え切れないほどこんな朝を迎えて、もう幾千回もお前の顔を見つめたはずなのに。 こんなにもお前の髪は柔らかく輝いているのか。 こんなにも長いまつげで、男らしい鼻梁で。 こんなにも、美しく甘やかな唇をしているのか。 まるで今初めて見るみたいに。 ひとつまたひとつ、新しい魅力を見つけて。 心騒がせて。 どうしようもなく惹かれてしまう。 愛おしさで胸が苦しくなる。 俺は絶え間なく香藤に恋をする。 香藤、香藤、香藤。 俺はお前の名前を呼び続ける。 俺の生きている証。 俺の光。 俺の、いのち。 お前が生まれてきたそのことを。 俺が生まれてきたそのことを。 二人が出会ったそのことを。 俺は宇宙のすべてに感謝する。 だから他のどんな日よりも。 お前の生まれたこの日が嬉しい。 誕生日おめでとう。 愛している、香藤。 2009.6 シャバシャバカレー |