クリスマスプレゼントは・・・



「今年のクリスマスは一人・・・か」

寝室に響く自分の声があまりに寂しそうで、思わず笑ってしまった。

お互い忙しくて、すれ違いが増えてゆく・・・。

枕元の携帯からメールの着信音が流れた。

香藤からだ・・・。



『メリークリスマス!岩城さん。こっちは気温が毎日マイナスだよ〜

撮影は順調に進んでるから明後日には戻れるからね。

ちゃんと食べてる?ああ、もぉ〜心配だあ〜。早く帰りたい。

早く岩城さんを抱きしめたいよ』



「・・・・・早く帰ってこい、香藤」

返事を送信して布団にもぐりこみウトウトし始めた頃

またメールの着信音が響いた。

洋介くんからだ。

文字を覚え始めた洋介くんは、洋子さんの携帯を操作して

時々こうしてメールを送ってくる。

『岩城さんこんばんはだいすきだよ 

きょうはさんたさんがくるんだよ』

俺の名前だけは漢字を覚えたらしく、洋子さんが登録した『岩城さん』を使って

あとは全部ひらがなのメールだ。

『こんばんは、ようすけくん。さんたさんになにをおねがいしたんだい?』

返事がきたのは5分ほど後だった。

「お、打つのも早くなってきたな・・・やっぱり子供は覚えるのが早いな」

『ぼくだけの岩城さんをくださいっておねがいしたの』

「・・・・・・はぁっ??」

俺は携帯を握ったまましばらく固まってしまった。



翌日、俺は洋子さんにメールを送った。

心配していた通り、洋介くんは『ぼくだけの岩城さん』が届かなくてがっかりしているらしい。

「香藤が戻るのは明日・・・なんとか行けるか」

その日の夜、仕事が終わってから俺は森口家に向かって車を走らせた。



待ち合わせ場所のコンビニに着くと、洋子さんが先に来て待っていた。

「すみません、岩城さん。お忙しいのに・・・」

「いや、取りあえず車の中で話しませんか?」

洋介くんは駄々をこねたりはしていないらしいが、とにかく元気がないらしい。

「食事もろくに食べなくて・・・でも子供のことですからしばらくすればまた

いつもの洋介に戻りますよ」

「そうだね・・・・・洋子さん、実はちょっと協力してほしいことがあるんだけど」

「はい?」




「岩城さん、OKですよ」

「すまないね、洋子さん」

「いいえ、洋介のためにこんなコトまでしていただいて・・・」

俺の姿を見て洋子さんが微笑む。

「さ、どうぞ」

洋子さんに先導されて、暗い家の中を洋介くんが寝ている部屋までたどり着き

そっと戸を開くとすーすーと可愛い寝息が聞こえる。

薄暗い部屋に入り、ベッドに近づくと洋介くんはくるんと丸くなって眠っていた。

かわいそうかな・・・と思いつつ柔らかなほっぺたをつんつんとつつく。

2度目に洋介くんが目を覚ました。

「・・・サンタ・・・しゃん?・・・・」

「一日遅れたけど、はい、プレゼントだよ」

洋介くんは不思議そうにしながらリボンを外し、大きな箱を開けると「きゃー!」と声を上げた。

「岩城しゃーのお人形!」

そう・・・恥ずかしながらソレは俺そっくりの等身大の人形だった。

あるおもちゃ会社が試作用に作ったもので、少し弾力性のある軽い新素材で出来ている。

大きすぎてもらっても邪魔になるからと受け取りを保留していたんだが

今回はこれが役に立ってよかった。

「サンタしゃんありがとー!」

抱きついてきた洋介くんが顔中にキスをし始めた。

「よ・洋介くん」

ぐりぐりすりすりされているうちに、白いつけ髭が取れてしまった。

「あ・・・」

「いわきしゃーそっくりのサンタしゃんーーー!」

・・・・・・俺はそれからしばらく洋介くんの抱きしめ&ちゅー攻撃を受けて動けなくなった。




「岩城さん・・・大丈夫ですか?」

小声で洋子さんが声を掛けてきた。

「大丈夫、眠ったみたいだよ」

俺は洋介くんをベットに寝かせて部屋を出た。




明日の予定があるからと、早々に森口家を後にして家に向かって車を走らせる。

誰もいない家に帰るのは寂しい・・・。

「香藤・・・早く帰ってこい」



翌日、帰宅した俺はうるうると涙を受かべた香藤に出迎えられた。

「岩城さんっ!何あれっ!!俺も欲しいよ、岩城さんそっくりの人形〜〜〜」

「は?」

どうも洋子さんが写メを送ったらしい・・・しかも洋介くんが人形を抱きしめている写真を・・・。

「・・・お前は俺がいるんだから必要ないだろう」

「岩城さんに関するものは全部欲しいのっ!」

「あのな・・・・」

携帯の画像を見ながらぶつぶつ言い続ける香藤を玄関に置いてリビングに向かった。

「も〜岩城さんってば」

「香藤!」

俺の大きな声に驚いて香藤のブツブツが止んだ。

両手を広げてもう一度名前を呼ぶ。

「コレは・・・・欲しくないのか?」

「・・・・・・欲しいに決まってるじゃん」

久しぶりに感じる香藤のぬくもりが体に沁みこんでくる。

・・・結局その日は朝までリビングで過ごすことになった。





香藤は未だにあの人形を欲しがっている・・・・・まったくどっちが子供なんだか。





おわり


H19年12月22日

らむママ







私も欲しいのですが?(笑)
きっと私だけじゃないはずですが(笑)
でも・・・・香藤くんが手に入れると、洋介くんとは違った使い方をしそうだ・・・
と思った私は腐っています、ええ、腐っていますとも(^o^)
にしても・・・洋介くん可愛すぎ!!将来、大物になりそうvv

らむママさん、素敵なお話ありがとうございます