「サンタorサンタ?」



「岩城さ〜ん!」
香藤が宅配で届いた荷物を抱えて、クリスマスの夜をリビングで寛ぐ岩城に呼び掛けた。
「なんだ…?誰からだ?」
「それがさ〜、ほら」
「ん?」
香藤は岩城の座るソファーのすぐ隣りに腰掛け、送り主の名前を指差して岩城の
顔を覗き込んだ。
「あぁ…」
岩城の目尻が優しげに下がる。
字こそ洋子のものではあるが、名前は甥っ子の『洋介』になっていた。
可愛い甥っ子からの荷物に、二人で心を弾ませながら、早々に梱包を解いた。
そこには、小さなアルバムと可愛いリボンをあしらって丸めた画用紙。
そして、可愛いサンタクロースとトナカイのクリスマスカードが入っていた。
「やあ、嬉しいなあ…可愛いらしいクリスマスプレゼントが届くなんて…」
岩城は丸めた画用紙を手に取り、リボンに指を掛けた。
「香藤、なんて書いてあるんだ?」
香藤のクリスマスカードを持つ手を覗きながら画用紙を広げていく。
「ん?『岩城さん、お兄ちゃん、メリークリスマス。我が息子ながら最高だったので、送ります。
アルバムは親ばかのお裾分けです。
叔父ばかになってくださいねv
このクリスマスカードも洋介が選んだんですよ!
素敵なクリスマスを過ごしてくださいvvv
洋子&洋介』だって」
「へぇ〜、うまいじゃないか」
岩城が画用紙を広げて声を上げた。
香藤も覗き込むと、画用紙一面には、大きく岩城らしき人物がクレヨンで書いてあった。
小さな子供らしさが出ている、とても可愛いらしく元気な絵だ。
「ほら、香藤。ここに『サンタ』って書いてあるぞ」
岩城は嬉しげに香藤に画用紙を渡した。
確かに。
歪ながらもちゃんと『サンタ』と書いてある。
身体も、赤いクレヨンを塗ってあるとこをみると、岩城をサンタに見立てて書いたのだろう。
我が甥っ子ながら、岩城さんをサンタに喩えるとは流石!
でも俺は、サンタの岩城さんよりもプレゼントに岩城さんを欲しいけど…v
などと洋介の絵からあらぬ妄想を走らす叔父、香藤だったが…
「ぶふ―――――っっっ!!」
「はぇっ?!」
香藤が今夜の?妄想から我に返り、岩城を振り返ると、なにやら岩城が堪えきれ
ずに噴出していた。
「なっなに?!岩城さん!どうしちゃったの?何がそんなに笑えるの?」
岩城はもう一枚の画用紙を手に、涙を浮かべて笑っていた。
「すっ…すまっっ、アハハッ、ハハハハッ…これっ…こ、かとっ」
笑いすぎて震える岩城の手から、香藤は問題と思われる画用紙を受け取った。
パターン的に岩城の絵と来たら、これは自分だろう…と画用紙を見て香藤は固まった。
「あ゛あ゛っっっ?!」
そこには。
怖かった…。
なぜ、岩城が笑うのか信じられなかった。
多分…たぶん!自分だ…
髪の毛長めだし。
岩城さんと来たら自分だし…
岩城の絵のように『サンタ』を目指したのだろう…
身体をやはり、赤いクレヨンで塗っている。
塗っているのだが。
なぜか、岩城の時よりも元気よく塗ってあるのだ。
とっても。雑というか……。
それが自分の口までをも巻き込んでいる。
まるで、火がボーボーとばかりに…
しかも髪の毛長めだから、怖い!
こんなん?!俺こんなん?!
ショックを受ける香藤に、更なる追い討ち。
『サタン』………
マジかよ…洋介…!
「俺は悪魔かいっっ!!!!」
ちょっと涙目な香藤。その横で、岩城はまだ笑っていた。
最高のクリスマスプレゼントだと。
香藤はちょびっと傷付いた。
そんな岩城こそ『サタン』ではないかと。
そして、これを最高だと言って送ってくる我が妹…
聖なる夜なのに…
「?」
ひっそりと落ち込んでいた香藤を、岩城がフンワリと抱き寄せた。
「はぁ〜っっ、スマンスマン、香藤。そんなに落ち込むな…?可愛いじゃないか?
俺は好きだぞ。この絵もおまえも…可愛いくて、な?」
いつもの甘い笑顔で囁く。
ずるいな〜…岩城さん。
そんなこと言われたら、許しちゃうじゃん。
この絵を可愛いって言うのは、どうかと思うけど…
ふと顔を上げると、そこには笑いすぎてうっすら桃色に上気した岩城の項があった。
「…………」
香藤はニンマリと顔を緩ませた。
「そうだね…」
やっぱり、どんなにお願いされたって、許してあげない。
俺は『サタン』だから。
俺だけに、紅く染まった肌をさらけ出す『サンタ』を絶対に逃がさないよ。
今夜、覚悟しててね。
俺の『サンタ』さん…


おしまいv



++++++++++++++++++


2007/12/18


失礼致しました;


ミーコ



うわあ、見たい〜その絵!(爆笑)
岩城さんに比べて雑な塗りっていうのが、もうツボでv
洋介くんたら・・・なんて正直な・・・あ、いやいや(笑)
これは将来、大変なライバルになりそうですよ・・・・v

ミーコさん、素敵なお話ありがとうございます