揺れて・・・揺れて・・・




「今日は・・・・」
「ん?」
「お前の誕生日なのに・・・」
「くすっ・・・・まだ言ってる」
岩城さんったら・・・と俺は腕の中の身体を少しだけ引き寄せた。

熱を交わしあった後の気怠い時間・・・俺の大好きな・・・そして大事な時間。

「今日は、岩城さん仕事だったんだから仕方ないじゃん。それでも早めに帰ってきてくれたし・・・それだけでも俺はすごく嬉しいよ?」
そう言ったのに、まだ納得のいかない顔でため息なんてついて・・・・ホントに岩城さんって・・・と、心の中がほんわかしてくる。
こうやって誕生日に同じ時間が過ごせる事が何よりなんだよ?



岩城さんだけでなく、清水さんも気にかけてくれていた俺の誕生日。
でもそれだけで全てが済む話でもなく、容赦なく仕事が岩城さんに入ってしまった。
俺がこの日に休みが取れている事が余計悪いと思ったらしく、朝送り出す時も色々慰めて、いつもよりも少しだけ長めのキスをして送り出した。
残念なのは確かだけど、俺だって準備万端で祝って貰わないと拗ねるぞ!という子供でもない。
いつものように家事をこなして、程よく時間が流れていって・・・・
その間に時々岩城さんにメールを打つと、今日はいつもよりも早めに返事が来たりして
「岩城さんったら・・・」と苦笑してみたり・・・。
そんなに気にしなくても良いのに・・・今日のうちに戻れるみたいだから一緒に祝って貰えるし、それだけで充分幸せなんだよ、俺。

そして岩城さんは早めに仕事を切り上げて戻ってきてくれた。
大きな薔薇の花束と清水さんからのスイートピーの花束を持って。
ドアを開けた瞬間、花の中にいるような岩城さんにクラクラして・・・その後抱きしめた岩城さんからも花の香りがして・・・・もうそれだけで夢心地だったんだから。




「あ、そうそう」
岩城さんの髪の感触を指で確かめながら、すっかり忘れていた事を思いだした。
「・・・?」
「この前植えたアレ、実が付いていたよ」
この春、苗木を植えたんだ。
「アレって・・・山桜桃か?」
「うん。気付いたの夕方だったんでメールしようかと思ったんだけど、ちょうど岩城さんが帰ってきて」
「何でその時言わないんだ」
「・・・岩城さん見たら全て飛んじゃった」
えへへっ・・・・と笑うと、ったくおまえは・・・・と苦笑してくれた。
「でね!」
俺は話を続ける。
「その実の付き方がさあ・・・こうなんていうの奥ゆかしいというか、赤い実が葉に隠れて・・・もう可愛いんだよね!まるで見てたら、岩城さんみたいだ・・・・って」
「・・・・・・」
「そしたらちょうど岩城さんが帰ってくるし!もう感動・・・それだけで俺の誕生日ありがとうございます!って感じだよ」
そう言うと、岩城さんはくすくすと笑った。
「安上がりだな、それは」
いえいえ、岩城さん、こういう幸せは望んでもなかなかないものだよ?
そして俺も笑う。

「そう言えば・・・前に歌を歌った時に少し自分でも調べてみたんだが・・・あの”山桜桃”の”ゆすら”というのは実を採るために枝を揺する、揺らすという意味らしいぞ」
「へえ・・・あの魅惑的な実を枝を揺らして・・・・か。なんかますます岩城さんだね!」
「・・・・・」
少し呆れたような顔で俺を見る岩城さん。
明日改めて実をじっくり、いやいや木をじっくり眺めてみよう。

あ、・・・やばい”揺らす”とか思ったら・・・あらぬ所が反応しちゃったかも・・・・
「えっと・・・岩城さん?」
岩城さんが顔を上げる。
「あのさ・・・・・・・岩城さんをまた揺らしてみたいって思っちゃったんだけど・・・」
「香藤・・・・ったく、お前は・・・・」
となんか言いかけたけど(なんとなく・・・・その先は分かるけど)、ふっと笑って俺の首に腕をまわしてきた。
「・・・ああ、揺らして良いぞ」
「い、岩城さん!」
何、何、その顔、反則だよ!
「俺がプレゼントになるのなら好きなだけ揺らせばいい」
少し笑った顔が綺麗だ。
「・・・岩城さん以上のプレゼントなんて俺には存在しないよ、そんなこと分かってるくせに・・・・」
そうささやいてぐっと身体を引き寄せて、口づける。
岩城さんの気持ちが俺の中に流れ込んできた・・・・。


そして
まだ俺の跡が残るそこに・・・・・そっと熱さを押し当てる。


揺れて・・・揺れて・・・揺れて・・・
月の光に照らされた肌に俺は極上の夢を見た。



・・・明日、ふたりでその実を見ようね。
そして摘んで味わおう・・・・甘酸っぱい、美しいその実を。









2007・6    舞




なんか色々すみません・・・・・苦笑
岩城さんが香藤くんの上で揺れている・・・・
そう思うだけで血圧急上昇です(・・・何を言っているんだ)
Happy Birthday 香藤くんv
あなたに逢えて幸せです(^.^)