部屋の中のオリオン



すっ裸で眠るにはちょっと寒くなってきたけれど。
抱きあって眠るには丁度いいかもしれない季節。

夕べも互いの体温を与えあって、熱を出しあって。
心地好い体温で抱きあって眠ったのだけれど。

肩に冷えた空気が当たる。
───?

「あれ?」
布団がめくれてんのかな?
岩城さんが風邪をひいたら大変だと、掛け直そうとするんだけれど。
そこにあるはずの岩城さんの体がなくって。
熟睡していた身体は一気に覚醒する。

シーツを擦るとまだほんのりと温かい。
キョロキョロしながらベッドに座り込んでいると
「すまん、起こしたか?」
と、それこそ闇に融けそうに甘い声。

カーテンの隙間から漏れる外灯の明かりに、白い岩城さんの輪郭が浮かび上がる。
びっくりさせないでよ、なんて恨み言のひとつも出やしなかった。
だって、本当に岩城さんは綺麗だったから。

「どしたの?」
「なんだか気分が昂っていたみたいだ。さっきは熟睡していたと思ったんだが」
ちょっと照れたように苦笑する。
もう、そういう顔、反則。
また抱きたくなっちゃうじゃん。

「そっか、あの『ロスト・ハート』の件で、取材が殺到しているんだったね。昨日も、何社か受けてたんでしょ?」
「それに、W受賞の件で・・・な」
闇の中で、目と目で笑いあう。
「ホント、俺たちだってびっくりだってのにね」

眠気は飛んで。
そして俺を誘うように、ちょっとだけ岩城さんがカーテンを捲る。
月は、もう向こう側なのかな?
思っていたほどには明るくなくて。
住宅地の街灯って、本当に申し訳程度だから。

「星が、きれいだぞ?」
さすがに窓を開けるには寒いから、窓ガラスにおでこをくっつけて上目使いに夜空を見上げた。
「冷て」
横で岩城さんが笑う気配。

「ん、もう。子どもみたいだと思ってるんでしょー」
「いや、そんなことないぞ?」
ベッドの近くに放り投げられていた俺のパジャマの上着を、そっと羽織らせてくれる。
うふふ、そんなところはちょっぴりお袋みたいだよね。
母親にしたら色っぽ過ぎるけどさ。

「え?」
空を見ているんだと思っていた岩城さんが、俺の顔をじっと見てる。
「なに?」
「お前、何かやらしいこと考えてたんだろう?」
「はぁ?」
とはいえ、ちょっと否定できないよね。

「ちょっとは違うことに頭を使え。お前あれ分かるか?」
くすりと笑って、空を指差す。
「どれ?あの3つの星?だったら分かるよ、オリオン座」
エッヘン、と胸を張って答えた。

「そうか、目は良いんだったな」
「ぶうぅ〜」
やっぱり岩城さんの掌の上なんだなぁ〜。

でも、へこむ俺に、ちゃーんと岩城さんは手を差し伸べてくれる。
「眠れないからと言って、いつまでもこうしていられないからな。
今は空にさそりがいないことだし。今なら好き勝手できるぞ?」
ギリシャ神話に出てくるどんな女神よりも美しくて妖艶な笑み。

もう・・・
強烈なお誘いだなぁ。
ベッドの上でもうひと暴れしろってこと?
鍛えた体で、岩城さんをベッドまで抱えていくからね?
もしかしたら、朝まで眠れないかもしれないよ?


’07.11.15.
みわ

短くて本当にごめんなさい(>_<)
※一応補足です
このお話は、11月半ばの深夜2:00ごろだと思ってください。
皆さんご存知のとおり、オリオン座は冬の星座。
そしてさそり座は、夏の星座。
大体、さそり座が西の空に沈むと、オリオン座が東の空に上ってくるわけです。
ギリシャ神話では、オリオンが、さそりに刺されて亡くなってしまうので、それが理由でさそりが(空に)いなくなると上ってくる・・・そんな風に言われていますよね。
(大雑把な解説なので、ギリシャ神話等読んでみてくださいね;)




甘い!甘いですわ〜vvvv
誘う岩城さんが素敵です!(^o^)
この後はどれくらい・・・
いやいやきっとふたりで朝日を見たのではないかと(おお!)

みわさん、素敵なお話ありがとうございます


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