「サクランボ色」



・・・ガチャッ
玄関の扉が開くが早いかリビングから香藤が飛んできて岩城に抱きついた。
「岩城さん。おかえり。予定通りだったね」
「こらっ香藤。いきなり危ないだろ」
何かがふたりの間を邪魔している。
そう思って覗きこむと岩城が小さな箱をかかえていた。
「なにそれ?岩城さん」
「帰ってきたらちょうど宅配の人が来てな。荷物を受け取ったんだ。ほら。小野塚くんからみたいだぞ」
小野塚さんからお荷物ですと言われて渡されたため、岩城はなんの疑いもなく香藤へそれを渡した。
「えっ?小野塚???」
「誕生日プレゼントじゃないのか?」
「んん〜。今までプレゼントなんて送ってきた事なかったけど。なんだろ?これ?」
しげしげと箱を眺めた香藤が突然、大声をあげた。
「あれ?これ。岩城さん宛じゃん」
「えっ?」
「うぅ〜。お〜の〜づ〜かぁ〜。あいつなんなんだよ」


「親愛なるお兄様へ・・・
   桜桃、送ります。あいつにもいくつかやって下さい。弟より」

そんなふざけたメッセージとともに、小野塚から真っ赤なサクランボが岩城の元へ届いた。
折りしも香藤の誕生日を明日に控えたそんな日。もう夕闇もせまるそんな頃だった。
「あいつ俺達が家にいる時間を知ってて送ってきやがったな」
明日は岩城とふたり久しぶりのオフだ。
そして今日も夕刻までには岩城の仕事が終わるという。そして自分も。
確かにうれしくて小野塚に話したような気がする。いっぱい話したかもしれない。
だからって何で俺宛じゃないんだよっそう悪態つきながら携帯をにぎりしめ小野塚の番号を探す。

「よっ」
「よっじゃねぇよ。荷物が届いたんだけど。どういう事だよ。これ」
「おっ届いたか」
「届いたかじゃなくて、なんで俺宛じゃないんだよ」
「え〜。だって岩城さんへの送り物だから」
「お〜の〜づ〜かぁ〜」
「クス。まぁそう怒るなよ。おまえのプレゼントは箱の裏につけといたから。そんじゃっ」
「箱の裏?じゃって。おいっ小野塚。小野塚。もしもし?もしも〜し」
岩城にかわる暇もなく電話はプツリと切れた。しばし呆然と携帯を眺める香藤に心配顔の岩城が問いかける。
「小野塚くん。なんだって?」
「岩城さん宛だってさ。箱の裏がどうとか言ってたんだけど…」
ふたりで箱を下からのぞきこんでみると、箱の底に小さな封筒が四方ぴったりセロテープで貼り付けられていた。
”追伸”と書かれた封筒の中には・・・

その昔、桜桃の字はユスラウメにあてられたんだとか・・・
今夜はあいつのために歌ってやって下さい。俺からのプレゼントって事でよろしく。小野塚

「でかした!小野塚」
「小野塚くん。。。」
ガッツポーズの香藤と頭をかかえる岩城。そしてスタジオの楽屋でニヤリと笑う小野塚。
「歌ってくれるよね。プレゼントだし。エヘヘ」
「・・・・・・・・・」
その夜、ベットの中で小声だけど想いを込めて歌われた「ユスラウメ」
歌いながら岩城はサクランボのように真っ赤に染まった。
「桜色の岩城さんも最高だけど、サクランボ色もいいかも」


〔オマケ〕
香藤の誕生日の朝。本当なら・・・
一緒に迎える事ができる、そんな朝は自分があいつより先に目覚めたい。
そしていつもあいつがしてくれるように「おめでとう」と言ってやりたい。
でも、その願いはまだ叶った事がない。
「あいつがむちゃくちゃするからだ。まったく」
少し赤くなりながら、岩城は足早にリビングへ向かった。
しかし、ふとリビングの扉の前で足を止める。
料理の音とともに鼻歌よりはだいぶ大きい香藤の歌声が聞こえてきたからだ。

若い洋二くんが…ウッフン お色気ありそで…ウッフン
なさそで…ウッフン ありそで…ウッフン
ほらほぉ〜ら 黄色いサクランボ〜♪♪♪


「香藤。おまえはいったいいくつになったんだ。。。」
額に手をあて、そこで少しの間、考え込む岩城だった。



H18.6 千尋(笑える方だけ笑って下さい・笑)



はいはい!♪黄色いサクランボ♪が歌えます!(笑)
いや、そんなことはいいから・・・;
きゃあん、私も聞きたいです・・・岩城さんの生歌!
側で歌って欲しい・・・・ベッドの側でじっと耳を澄ましたいですv
小野塚くん、GJです!

千尋さん、素敵なお話ありがとうございますv