梅雨空
天気は自分の心境と一致するかの様な、どんよりとした一面の曇り空。 梅雨という時期的なものだから仕方がないと思いながらも、香藤は溜息を付く。 それでも、やはり気分を切り替えようにも…前向きな思考の自分にしては珍しくも、その転換に失敗したりするから、確実に気分は更に沈んでしまうものとなる。 雨模様の多いこの時期…いっそすっぱり降るなら降ってくれればいいものを、降るのかどうなのか分からない曖昧な雲行き、更に時折晴れ間が覗いたかと思えば、また雲が厚くなったり…と、天候が不安定ゆえに、外でのロケというものにはかなりの支障が出るというのは、別に今に始まったことではないから、その位で気分がへこむというのは、本当に今更ではあるのだけど。 どうせだったら明日辺り、ざっくり降ってくれれば一日オフになるんだけどなー…とか、ちょっとだけ我侭な事まで考えてしまうのは、その明日という日がある意味では特別な日であるからで。 少なくとも、ある年まではそんな事を考えた事も無かった。 それが特別な日だと考えられるようになったのは、岩城とともに過ごすようになってからだ。 そう…それは、単に年を重ねるだけにしか過ぎなかった、自分の誕生日という日。 いくらどう頑張っても、自分と岩城との年齢差が縮む事はないというのは当たり前だという事は、香藤も当然の事ながら認識している。 でも…少なくとも自分の誕生日から、年が明けての月にある岩城の誕生日までの約半年程は、その年齢差が一つだけど縮む訳で。 その事に気が付いたら、何だか自分の誕生日というものが、少しだけ大切な日のように思えてきた。 一緒に並んで…今はずっと同じ年月を過ごしていても、やはり時折、自分より岩城の方が物事を見たりする時の視点が、年上らしく高い位置に感じる事があるのは否めない。 どうしても、追いつきたくても追いつけない…その高さは人として生きてきた時間の積み重ねが築いているもので、だから勿論追いつくとかそういう問題ではないのだけど。 とはいえ、例え雑誌や何かで表示される事かあるだけの年齢表示だとしても、縮まるのがたった一つだけの差だとしても、そのほんの少しの距離が、何となくとても貴重なものに感じてしまう。 …そういう事を思う辺りが、自分もまだまだ子供なんだろうけどな…とか、心の中で呟きつつ、溜息を付いてしまう事も勿論あるけど。 それでも、自分の誕生日はそういう意味でもとっても大事な日。 本当なら、一緒に過ごしたいという気持ちも大きいが、お互い自分の都合だけで休みが取れない仕事に就いているのだから、それはそれで仕方が無い。 確かに少しは融通が利くとはいえ、長期の泊り込みの遠方ロケなどが入ってしまった場合は、本当にどうしようもなく。 そしてそれが、偶然にも今年は自分の誕生日と重なっただけの事。 だからそれは仕方が無い。 でも…少しだけ心が和やかな感じになるのは、自分の荷物の中に入っている一つの包みのお陰。 一緒に誕生日を過ごす事が出来ないと、少し拗ねていた香藤が、自宅から出る際に岩城から渡された、派手ではないがシンプルなリボンの付いた包み。 少し早いが、誕生日おめでとう…との言葉と共に。 その包みは、まだ開封される事なく香藤の鞄の中へと入ったままだ。 それを開けるのは、当然誕生日の当日だと決めていたから。 そう、誕生日の丁度日付が変わった時に。 一体何が入っているんだろうかとどきどきしながらその包みを開けて。 …とか思っていたら、まだ曖昧な雲行きの空とは違い、香藤の心の中の厚い雲が薄れ、青空が広がり始め。 そして…暖かな日差しが差し込んで来たような。 何だかそんな感じを覚える。 やっぱり…いつの時でも、自分の心の中の太陽は……。 そんな事を考えながら、香藤は笑みを浮かべ表情を緩めるのだった。 例え今が長雨の続く梅雨であっても。 香藤の心の中には、長雨の梅雨は存在しない。 いつも太陽を大事に抱え込んでいるから。 H18.6 こげ 何だか甘いんだか全然甘くないんだかな曖昧な話で済みません。 折角の香藤さんのバースデーなんだから、もっとあま〜い…と、どこかのお笑い芸人に言われる位の話が書きたかったんですが…全然甘くならないどころかなんだかなあって感じのモノローグ的な話で終わってしまいました。どうしよう(爆) ともあれ、香藤さんバースデーおめでとう!の心を込めて |
いつもポジティブな香藤くんですけど
けして脳天気ではなく深い人なので・・・
こういう想いを抱えているのもすごく分かるような気がしますv
岩城さんにとって香藤君は太陽かも知れないけれど
香藤くんにとって岩城さんもまた太陽なんだと思わされます・・・
こげさん、素敵なお話ありがとうございますv