『おまけ』

                 

「本日のゲストは香藤洋二さんです。どーぞー」
少し間の抜けた様なしゃべり方で、この番組の司会者である今では大御所の一人でもある『◎モリ』の紹介でスタジオに出て行った。
客席から歓声が上がり、戻ってきた実感を受ける。
「こんにちは〜〜〜お世話になります」
香藤は笑いながら出て行った。
「あっ、これお土産です」
と◎モリの前に袋を出す。
「悪いね〜〜〜おお、冬蝉のストラップ!!」
袋から出して、客席に見せびらかす。
「いや〜〜〜冬の蝉すごいね。ロングランだって?」
椅子に勧められ、座ったと同時に映画の話を振られた。
「ええ、見に来ていただいてる皆さんのおかげです」
香藤はそう言い返し、客席に笑顔のサービスをした。
『キャー!!』
『香藤君!!』
客席から声が聞こえてくる。
「もてるね〜〜〜君も」
すかさずに声をかけられ、愛想笑いをした。
話は今後の事とか、CMに入っても尽きない。
「ああ、明日誕生日だよね。香藤君は」
CMから切り替わる瞬間にその話になった・
『おめでとう〜〜』
客席からの声。
「今つけた人は、わかんないよね〜〜香藤君の誕生日が明日って事で、そろそろ次の人に回してらわないといけないんだけど‥‥‥」
『◎モリ』さんの言葉に、
「ええ、実は岩城さん‥‥‥」
香藤が其処まで言い返して、客席から黄色い悲鳴が上がった。
「と思ったんですけどね、俺と一緒にオフなんで(笑)残念ながら別人を〜〜〜」
香藤がすかさず答えた。
「ええ〜〜岩城さんじゃないんだ〜〜残念」
すかさず言い返され、
「ダメです〜〜俺とラブラブな誕生日を過ごしてもらうんですから〜〜」
香藤はにこやかに笑うと言い返した。
「ご馳走様〜〜〜じゃ、誰にする?」



友達として、今出ているドラマの共演者を紹介して仕事を終えた。
岩城の撮影しているスタジオは本番のランプが付いていたので、残念と思って出て行った。
「明日の朝か‥‥‥ご飯作って待っていようかな‥‥‥」
金子に急かされて、次の仕事場に向かうとき香藤は呟いたのだった‥‥‥

                     
               ―――――了―――――
                       
2006・5 sasa