夏至



誕生日の夜。
リビングのソファでTVを見ながら、岩城さんのひざ枕。入念に準備してくれた岩城さん手づくりのディナーとワイン、おいしかったよ〜!
今夜はもちろん、岩城さんのこともいただいちゃう予定。エヘヘヘヘヘ、3週間ぶりなんだよね〜。ちょっと気合い入っちゃいそうなんだけど…。
でも…今はもう少し、ここでまったりしてたいかな〜。
「ねぇねぇ、岩城さん」って、寝返りした時だった。

「ワハハハハハハハハ」
俺はぎょっとした。突然、岩城さんが、からだを折り曲げて大笑いを始めたから。
TVを見て目尻の涙を拭うほど、馬鹿受けする岩城さんを見たのは初めてで。
「い、いわきさん!? 何が、そんなに、おかしかったの?」
「ハハハハハ……え……お前、見てなかったのか……」って、岩城さん、笑いが止まらないなんて…。
見てたさ、ちゃんと。
バラエティ番組の「1年のうち、昼がいちばん短いのは冬至。ではいちばん長い日は〜?」って、ベタなクイズ。若手のコメディアンが「ハムスター!」って叫んで。コンビの相方がすかさず、「ハムスターは“げっしるい”で、クイズの答えは“夏至”やからね! って、そんなわかりにくいボケすんな!」って突っ込んだところだった。
でもでも、そんな馬鹿笑いするところじゃなかったよ〜、岩城さん!?
岩城さんが楽しそうに笑ってるのを見るのは、すごくうれしい。でも、なんでそんなに笑ってるのか、わかんないなんて複雑だよ〜。岩城さんのすべてを知っていて、いちばん理解してる俺のはずなのに〜。
なんでそんなに馬鹿受けしたの? まさか、あのコメディアンがお気に入りってことじゃないよね!?
「岩城さん!!!」
「おい、どうしたんだ、いきなり!? 今日はベッドでって……ちょっと待て! 香藤! ああああん」


岩城が馬鹿受けした理由は、誕生日の前日の電話にあった…
「もしもし。岩城さん? ご無沙汰してます、洋子です〜。
お兄ちゃんから“今日の午後は岩城さん、うちにいると思うよ”って教えてもらったのでお電話しちゃいました。
はい…洋介、元気です。今日は遠足で。洋ちゃんと京ちゃんも一緒に行くんだって言いだして大変でした〜(笑)。
そう…ハムスターの洋ちゃんと京ちゃん!
茶色のブチが洋ちゃん、黒白が京ちゃんって、洋介が名前付けちゃって、それだけでも申し訳ないのに、この間は洋介のハムスターの話にずっとつき合ってくださって。
ほんとにありがとうございました〜。
お友達からもらった2匹のハムスターのこと、岩城さんにいろいろ聞いてもらって、洋介、あのあとものすごく喜んでたんですよ〜。私たち親はもう生返事しかしてなかったから、誰かにハムスターの話、聞いてほしかったんでしょうかね〜。
岩城さんに長々ハムスターの報告をして、飼育のこととか質問もしてもらって…。対等に扱ってもらえたのがとってもうれしかったみたいで。また岩城さんにハムスターのこと、報告したいからって、前より一生懸命、世話するようになったんですよ。
そうそう、洋ちゃんハムスターが、なんだかお兄ちゃんに似てきてるのがおかしくて(笑)。京ちゃんハムスターのこと、いっつも追いかけてるんですよね〜。2匹がくっついて眠ってると、決まって洋介がいうんです。
「おんなじだね〜。ふたりのせかいだね〜」って。
そう! 岩城さんも気が付きましたか? そうなんですよ、洋ちゃんハムスター! お兄ちゃんみたいに、ほんと、落ち着きないんですよね〜。まるでそっくり(笑)」

誕生日翌日の夜明け。
「かとっ……ぁはん……もう朝……ああああああっ! ……かとう、もういい加減にしろ!」
岩城さんがなんであんなに大笑いしたのか、わからないまま、夜が明けるまで岩城さんをベッドに入らせなかった俺の頭に、岩城さんのゲンコツが落ちた。
2006.6.2 ゆみ


大受けしてしまう岩城さんが新鮮です
ハムスターの話が楽しくって・・・・v
香藤君に似ているハムスターと岩城さんに似ているハムスター
2匹揃えたくなってしまいました(^.^)

ゆみさん、可愛いお話ありがとうございますv