冬日向
おはよう とか いってきます とか ただいま とか そんなごく普通の挨拶の言葉を交わせる幸せってあるよね? こうやって向かいに座って ふたりでいただきます をして そして俺の作った料理を岩城さんが食べて 美味しいって言ってくれたら それ以上の幸せは望んじゃいけないよねってぐらいの喜びに包まれるんだよ? 以前 そんなことを岩城さんに言ったら あまり意識してない事だったんで深くは考えていなかったみたいだけど (そこが岩城さんらしいんだけど) でも それでもその”幸せ”は”俺も同じだ”って言ってくれたっけ・・・ 少しはにかんでそう言った顔はとても綺麗で・・・あの後すぐ岩城さんを・・・だったよね 翌日は朝から仕事だったのに無理させちゃったな え? ああ 何でもないよ 食べるよ どうした? と声をかけられて俺は慌てて箸を持った いけない いけない つい色々考えちゃって 食事中にどうだろう・・・とかいうことまで 岩城さんの隅々まで思い浮かべちゃって・・・・ こんなこと分かったら また怒られちゃうよね ふと何か思いついて それを話したり 面白いものを見て ふたりで笑いあったり じっくりひとつのことを 真面目に語り合ったり そんなこともとっても大切な幸せだよね 仕事が仕事だからいつも一緒っていうわけにはいかないけれど でも携帯で声は聞くことが出来るし 離れていても愛は送ることが出来るから今は大丈夫 ああ 勿論離れているって言っても少しの間だよ? 長い期間はダメ もう すぐ飢えちゃうもん 俺 岩城さんも・・・・同じだよね? え? 何? 何でそんな顔をしてるの? 顔が緩んでる・・・・? あ あははは・・・・笑って誤魔化す いやだなあ 食事中だよ? 変なことを考える訳ないじゃん? 「・・・・おまえのことだから」 って その一言で片づけるなんて ひどいよ〜岩城さん でも・・・本気で否定出来ないのがちょっと情けないかも・・・ 今年は岩城さんの希望で物のプレゼントはしなかった 俺としてはあれもこれも・・・と思っていたんだけど オフを揃えようということと 俺の料理 それがリクエストだったから だから今 こうやってふたりで食卓を囲んでいる ちょっとだけ値のはった酒と 俺の愛情がたっぷり籠もった料理 そしてふたりで過ごす時間 考えればこれに勝る物はないのかもしれないね 俺としては岩城さんの笑顔があればそれが一番なんだけどね! 先日ある番組を見た 何かのドキュメンタリーだと思うんだけど その中でぽかぽかと暖かい縁側でふたりで茶を飲んでいるお年寄りの風景があった まだ俺たちはそんな年じゃないし 早くから老け込む気は毛頭ないけれど でも でもね なんかいいなあ〜って思ったんだ あんな風にいつの日か時を過ごせればいいなって・・・・何となく思ってしまった こんな事岩城さんに話したら きっと ”そんな先のことを考えているのか” って呆れられてしまいそうだから言わないけどね 今の季節和室の一角にとっても暖かい場所が出来る お天気のいい日だけなんだけどね その場所が最近の岩城さんのお気に入り 時間が出来て それがちょうど陽のあたる頃だったりすると 必ずそこで読書をするんだ 出来るときは俺がそこへお茶とか持っていくんだけど 何も暖房器具のない和室で寒くない?って聞いたとき ほら ここに座ってみろ・・・って言われた ぽすんと岩城さんの隣に腰を下ろした ・・・本当に暖かいんだね 俺知らなかったよ ”冬日向だな” そう言って岩城さんは微笑んで窓の外の風景を見た 視線の先には春を待つ山桜桃 そして俺はそんな岩城さんを見ていた・・・・・とてもとても穏やかな時間 いつだろう・・・ 少し前に夢を見た 何処か離れの様な所・・・中で誰かが同じように本を読んでいる感じで・・・ そして俺がお茶か何かを運んでいて 部屋に入ろうと静かに戸を開けると 俺に気付かないその人は部屋に入ってくる日だまりの中で とても穏やかな顔で文字を追っていたんだ 横顔がとっても綺麗で目が離せなかった・・・ それなのになぜだか俺はそれがとても悲しくて・・・切なくて・・・苦しくて あの瞳が自分に向けられないのは何故だろう・・・とか いつも見せる顔とあまりにもちがうその表情に胸が苦しくなってしまって・・・・ 結局辛い想いを覚えつつも俺はその横顔が好きで いつまでも時間の許す限り眺めていたんだ ・・・・そんな夢を見たことを ふと思い出した 不思議な夢だね 今となってみれば俺が俺なのか 俺が見ている人が岩城さんなのか誰なのか ・・・それは分からないままだけど・・・ でも切ない・・・その気持ちだけは明け方目が覚めたとき残っていて そして腕の中で眠っている岩城さんをあらためて抱きしめたんだ そんな話 岩城さん・・・ お誕生日おめでとう 心こめての言葉 ”ああ ありがとう”と岩城さんが照れくさそうに答える あまりもう嬉しい年じゃないって 岩城さんは言うけど そんなことはないよ 俺はこうやって岩城さんの誕生日を自分の手で祝えることが嬉しいし 一緒に時を重ねていけることが嬉しい 本当に俺たち・・・・出会えて良かったね 岩城さんと出会えた自分に乾杯だよ ごちそうさま とか おやすみ とか ありがとう とか そんな言葉を交わしあえる幸せ これからも大切にしたいよね ねえ・・・・岩城さん? 食事の手を止めて その綺麗な瞳をまっすぐ見つめる 明日・・・・日向ぼっこしようか? あの部屋で ふたりで のんびり時間を忘れて・・・ 岩城さんの綺麗な横顔見ていたいな そして時折俺を見て微笑んでくれれば それが一番の幸せ・・・・ ・・・なんか・・・・色々すみませんって感じで(大汗) 日生 舞 2006/1 |
いや、本当に・・・ごめんなさい(苦笑)
こんな幸せって・・・・良いなとか思ったのでv
でも早いこと老け込む必要はないですよ!ええ!(笑)