『六花(むつのはな)に思いを寄せて‥‥‥』
夕飯を作り終えホッとした時間帯、テレビ番組で雪の話しているのが目に入った。 今夜はすることが無くなった俺‥‥‥香藤洋二はその番組をボーッとして見ていた。 『北に行くと、寒さにより雪は結晶がハッキリとなる。 それが朝日を受けてキラキラと輝きを放つ‥‥‥ ダイヤモンドダストと言われる現象 その中心にあるのは、六辺の花弁を持つ雪こと‥‥‥ むつのはな その形により名称が付いた‥‥‥雪の姿』 そのようなナレーションを聞きながら、テレビの画面を見つめ、雪を人間に例え ると‥‥‥どうなるだろう?ふと思った。 雪の大本は水 六花の中心にある物は水が凍った氷‥‥‥ それを人間では純粋な心に例えてみる‥‥‥ 同じ水が気体になって、集まった物‥‥‥雲 元は同じでも‥‥‥いろんな姿がある。 人間も生まれた時は、何も知らない無垢なのに 育てられた環境で変わる。 氷の結晶はその雲の中でできると、地上に落ちるまで更にもまれる。 これは、俺達の世界では世間になるだろう‥‥‥ 見たく無い汚い部分‥‥‥ 大人になる為の通過点‥‥‥ それから守るためにつけた鎧が、雪では六つの花弁の形をした結晶となる。 つまり‥‥‥自分を壊さないように心を守るために‥‥‥ 心の周りに、自分に、纏った鎧‥‥‥ やっぱり似ている‥‥‥ あの人に‥‥‥ そう思った。 テレビのナレーションはどこかに消えていた。 あの人に雪を重ね、俺はテレビの画面を見つめていた。 自分に対しては‥‥‥どうだったんだろう? そう思った。 雪の花弁に重ねて、昔を思い起こす。 今では思い出すのも遠い頃のあの人に‥‥‥心を飛ばして見た。 6つの花弁の鎧でガチガチだった‥‥‥よな。 雪の持つ六辺の花びらを自分なりにたとえてみた‥‥‥ 一辺‥‥‥完全なる拒絶 思い起こすものなつかすぎる、こわばった顔だった。 挨拶ぐらいはしたよな‥‥‥会った時は でも、極力避けていたような気がする‥‥‥あの人も‥‥‥俺も‥‥‥ 口から出るのは嫌味の応酬 今思うと苦笑だよな 二辺‥‥‥強がった心 花弁が少し溶けたようだった。 あれは、春抱きの映画のオーディション 岩城さんの表情が少し変わったと思った。 「嘘臭い演技」 俺の言った言葉に反応してだが‥‥‥ あの時、俺も岩城さんの変化に何かを感じたんだろうな 三辺‥‥‥見せ始めた自身 あれはテレビのドラマ『春を抱いていた』の発表後 酔ってだったが素を初めて見た時、俺はあの人の中の純粋さと可愛さに驚いた。 あの仕事をしていたのに‥‥‥こんなに純粋な心を隠し持っていたなんて‥‥‥ きっかけは些細な好奇心だった。 四辺‥‥‥心を許し始めた兆し そう感じたのは、あの人のマンションに押しかけた後 佐和さんの家に行って、佐和さんに俺の気持ちを肯定された。 それがきっかけとなって起こした行動だった。 撮影が終わって会えなくなる‥‥‥これも俺の中では大きな事だった。 あの人の心が揺れているのが解かると‥‥‥俺自身感じた。 でも、不安だったのも事実‥‥‥ 五辺‥‥‥向けられるもの これが好意からかは、まだ解からなかった。 テレビのワイドショーとかに、すっぱ抜かれたのは実は俺の確信犯(笑) そうじゃないと、引越し業者なんて使うはず無いもんね〜〜〜〜〜 噂が噂を呼ぶように‥‥‥俺との関係を否定できないように‥‥‥ 真面目だから公になってしまったらって思っていた、俺の考えにあの人は納まっ てくれた。 世間が好意的に受け止めてくれたから 事務所もしばらくそのままでって言ってくれたから‥‥‥ 一つでもピースが違ったら、俺とあの人の関係は崩れたと思う。 そこにはあの人の‥‥‥向けられた感情があったと俺は思う。 六辺‥‥‥純粋で有るが故の鎧 それはあの人の言葉で、はっきりと確信した日だった。 純粋だったから被った鎧 一つでも壊れると脆い‥‥‥ だからかたくなにあの人は、自分を守っていたんだと確信した。 一つでも壊すと、後はあの人の心は雄弁に語り始めた。 でも、それは俺だけに解かるものだった‥‥‥ そして今では、こう言わせた。 『香藤に愛されて 身体の汚れなんか気にならない位 心は純粋でいられる でもその分‥香藤に裏切られたら俺の心は100%汚れるでしょう‥‥‥ この先に何の希望も持てなくなる』 「俺が言わせたんだ。俺だけが、入っていけたんだ‥‥‥あの人の中に」 感慨深く呟いた。 テレビの画面はいつの間にか違う番組が始まっていた。 その事に気が付き、もうすぐ来るあの人の生まれた日を祝うべく、どんな計画に するかを考え始めた。 一番大事な人が、この地に降り立った日 俺にとっては、一番大事な日 心を込めて、お祝いしたい‥‥‥ 『岩城さん、ハッピーバースディ。貴方をこれからも愛する香藤より』 ―――――了――――― 2006/01/ sasa |
六花・・・その一辺に託される想いが切なくて
でも優しくて・・・素敵ですv
1つとして同じ物がないソレにかの人を重ねる香藤くん・・・いいですねv
sasaさん、素敵なお話ありがとうございますv