ピクニック





これは岩城さんと6人の香藤たちのある秋の一日のお話です。



岩城さんの一日はいい匂いと4つの視線を感じることから始まります。
鼻腔をくすぐるいい匂いに意識が覚醒し始めるとじっと向けられる4つの視線を感じて目が覚めるのです。

「岩城さん、おはよー。」
岩城さんのベッドには4人の香藤たちが上がっていて声を揃えて元気よく挨拶してきます。
「岩城さん、おはよー。」
一拍遅れて朝食を作っていた二人の香藤たちからも挨拶の声が聞こえます。
「ああ、おはよう。」
ベッドの上で半身を起こした岩城さんに向かって黄香藤が両手を差し出しました。
岩城さんにそっと抱き上げて貰った黄香藤はその頬にキスをしました。
「岩城さん、おはよー。」
「黄香藤、おはよう。」
岩城さんも黄香藤の頬にそっとキスを返します。
黄香藤を下ろすと次は白香藤が両手を広げて待っていました。
香藤たちは毎朝順に岩城さんに抱き上げて貰いおはようのキスをしているのでした。
朝食を作っている香藤たちも食事前にお礼の言葉とともにキスを貰っていました。
当然、キスの順番も食事当番も交代制です。
一緒に暮らし始めた頃、6人全員でベッドに登り息苦しさで目覚めさせてしまったり、半身を起こしたところに先を争って飛びついて壁に頭をぶつけさせてしまったりしたためです。



さて、今日はよいお天気なので皆でピクニックに行くことにしました。
香藤たちは岩城さんをガードしようと周りをくるりと囲むようにして歩きます。
岩城さんは香藤たちにスピードを合わせながら蹴ってしまわないように慎重に歩きます。
そうして暫く歩くと小川がありました。
小川も香藤たちにとっては大きな川で飛び越えられそうにありません。
「俺が3人ずつ抱えて飛ぼう。誰が先に行く?」
岩城さんの言葉に香藤たちは顔を見合わせました。
「よし、ジャンケンだ。」
「最初はグー、ジャンケンポン、相子でしょ、相子でしょ、相子でしょ、相子で・・・・・・・」
香藤たちのジャンケンは相子続きでいつまで経っても終わりそうにありません。
顔も同じなら思考回路も全く同じなのです。
「もう止めろ、お前たちちょっとそこに並べ。」
岩城さんは呆れ果てて香藤たちを横1列に並ばせました。
そしてバンダナを外させるとそれを受け取り後ろ手にまわして混ぜ3枚を選び出しました。
「先に行くのは白香藤と青香藤と緑香藤だ。いいか、しっかり掴まってろよ。」
「うん。」
言われるまでもなく香藤たちはしっかり密着してその香りを嗅ぎ、間近になった綺麗な顔を見上げました。
そんなことには全く気づいていない岩城さんは少し助走を付けてひらりと小川を飛び越えました。
そしてすぐに戻ると残りの3人を抱えて同じように飛び越えました。
それからまた暫く歩くと綺麗な水の湧いている所がありました。
「結構歩いたし、ここで弁当を食べよう。」
「うん。」



わいわいと賑やかにお弁当を食べて一休みした後は森の中の探索です。
「あ、岩城さん栗が落ちてるよ。」
「ホントだ。お前たちイガに触れないように気をつけろよ。」
岩城さんは足でイガを割って実を取り出しました。
「こっちには葡萄がなってるな。おっ、あっちにはアケビもある。」
岩城さんはお城にいる頃から植物が好きで勉強していたので野山で何が食べられるかもよく知っていたのです。
香藤たちもきのこ等を見つけたくさんの食料を手に入れることができました。


湧き水の所まで戻ると岩城さんは葡萄を洗い1粒ずつ取って香藤たちに渡そうとしました。
すると青香藤はそれを受け取ろうとせずに言いました。
「岩城さん、食べさせて。」
そして強請るような視線で岩城さんを見上げ大きく口を開けました。
「あ、俺も、俺も食べさせて。」「俺も。」「俺も」・・・・・・・・
と雛鳥よろしく、岩城さんの前に大きく開けられた口が6つ並びました。
「・・・じゃ、左の青香藤から順番だからな。文句言うなよ。」
香藤たちは口を開けたままこくこくと頷きました。
岩城さんは苦笑しながら順にその口の中に皮から押し出した実を放り込んでやりました。
「美味しーい。」
「岩城さん、ありがとう。」
元々美味しい葡萄が岩城さんに食べさせてもらうと更に何倍も美味しく感じます。
岩城さんはアケビも細かく切って香藤たちに食べさせてやりました。


森の探索で空いた小腹が満たされたところで小屋に帰ることにしました。
秋はあっと言う間に日が暮れてしまうからです。




今日の夕食は取って来たばかりのきのこを入れたスープとサラダです。
香藤たちがそれを作る間に岩城さんは栗を茹で皮を剥きました。
採れたての秋の味覚いっぱいの夕食の出来上がりです。

「いただきます。」
きちんと皆で声を合わせて挨拶してから食事が始まります。
岩城さんはまずスープを飲みました。
「うん、美味い。」
「ホント?俺が味付けしたんだよ。」
「きのこ切ったのは俺だよ。」
「他の具は俺が切ったんだ。」
スープ担当の白香藤、黄香藤、赤香藤が嬉しそうに言いました。
「岩城さんサラダはどう?」
サラダを作った黒香藤、緑香藤、青香藤が身を乗り出すようにして訊きました。
「サラダも美味いよ。お前たちは本当に料理が上手だな。」
「岩城さんの茹ででくれた栗も美味しいよ。」
「そんなの誰でもできるだろ。」
「ううん、この茹で加減絶妙だよ。」
「そうか?ありがとう。」
はにかむように微笑む岩城さんに香藤たちはボーっと見惚れてしまいました。



今日は遠出して疲れたので早く寝ることにしました。
香藤たちはまた順に岩城さんに抱き上げて貰いおやすみのキスをしてベッドに入ります。
岩城さんもベッドに入ると寝物語に遠い異国の話を始めます。
本を読むのが大好きだった岩城さんはたくさんのお話を知っているのです。
それは物語だったり、本当の異国の話だったり様々でした。
穏やかで柔らかい声が香藤たちを眠りの世界に導いていきます。
香藤たちが全員眠ったのを確かめると岩城さんも目を閉じ、間もなく眠りに落ちました。


森の木々の隙間から見える空にはたくさんの星が輝いています。
きっと明日もよいお天気なことでしょう。



おしまい

'06.10.19  グレペン



チビ香藤くん・・・・可愛すぎです!
きゃあ、1人欲しいです!!!(はあはあv)
いいなあ、岩城さんのこんな生活v
まとわりついてくる香藤くんが可愛くてたまらないのでしょうね!

グレペンさん、とっても可愛いお話ありがとうございますv